花粉の季節が到来。花粉症に悩まされると共に、花粉による肌への影響に悩まされる方もいるでしょう。

そこで今回は、大人女性が「肌免疫」を強くするための対策や、花粉シーズンが本格的にやってくる前に実践したい具体的な対策を、資生堂 グローバルイノベーションセンターの研究員である細井純一さんに教えていただきました。

肌づくりの鍵をにぎる「肌免疫」は何が決め手になる?

肌免疫を高め、異物から肌を守りましょう。

今、肌荒れしにくい、根本の健やかな肌づくりのスキンケアがトレンドになっています。肌にトラブルが起きたらその都度対処する、といった方法は、もはや古いといえるのかもしれません。

その根本の肌づくりの鍵をにぎるのが「肌免疫」。細井さんによると、肌にも免疫があるのだそうです。

「肌免疫とは、細菌やウイルス、アレルギー物質などの異物から肌を守る機能のこと。肌免疫は、加齢と共に衰え、司令塔である『ランゲルハンス細胞』の働きの強さや数によって左右されます」(細井さん)

ランゲルハンス細胞の数を保つには?

ランゲルハンス細胞のことを知った今となっては、ぜひ強化して肌免疫を高めたいものです。ランゲルハンス細胞が弱まり、減る原因はどのようなことにあるのでしょうか。

「ランゲルハンス細胞が弱まり、減る原因は、過度の紫外線や乾燥、精神的なストレス、栄養失調などが挙げられます。これらのトラブルの要因となる刺激を鎮静化した後に力尽き、ランゲルハンス細胞が死んでしまうためです。対策として、生活習慣やスキンケアを見直して、これらのトラブルの要因となる刺激を避けることにより、常に最適な数のランゲルハンス細胞をキープし続けることができます」(細井さん)

肌に刺激のあると思われることは徹底的に避けることで、肌免疫が守られるということですね。

「感覚神経」の最適化も大切

肌トラブルからのすばやい再生には「感覚神経」が必要不可欠。

一方で、「感覚神経」という神経系も大切だと細井さんは話します。

「感覚神経とは、なんらかの肌トラブルが起きたときの感度のことです。感覚神経は、体の内外で起きた刺激を脳に知らせ、脳からの指令を伝えて肌の再生などをコントロールしています。例えば、つるつる、がさがさ、熱い、冷たい、硬い、やわらかいなどの情報は、肌センサーから感覚神経へと伝えられ、神経伝達物質を介して脳に伝えられます」(細井さん)

感覚神経が鈍いとどうなるのでしょうか?

「感覚神経が鈍いと、情報が正しく伝わらず、皮膚の細胞にダメージや炎症があっても『気づけない』=『回復に向けての修復を始めない』ということになります。健康な美しい肌に感覚神経の最適化が必要なのはそのためなのです」(細井さん)

「感覚神経」はどう最適化する?

では、感覚神経を最適化するにはどうすればいいのでしょうか?

「肌免疫の対策と同様に、生活習慣やスキンケアの見直しが大切です。また紫外線、乾燥ケアなどをしっかり行い、刺激を避けることも大切になります。

誰にも備わっている免疫系の『肌免疫』と神経系の『感覚神経』の機能は、全身の情報ネットワークを通じて相互に作用し合い、美肌と健康に関与しています。両方を意識した肌へのアプローチが大切になります」(細井さん)

大人の肌免疫はどうなっている?

加齢と免疫の関係について

ところで、50代以降の大人の肌免疫は、どのような状態なのでしょうか?

「顔の肌の免疫細胞や神経について、鋭意、研究を進め、検討していますが、顔の肌は頬や目の周り、額など、部位によって大きく異なります。また、紫外線の当たり方も個人差が大きいので、なかなか結論を出すことができません。

そのようななか、紫外線の影響を排除した部位の肌の解析で、加齢によるランゲルハンス細胞の減少を確認しています。そして、私たちはさらにその原因を明らかにしています。また、一般的に加齢によって末梢の神経線維の進展が遅くなる、信号の伝達速度が遅くなるということが報告されています」(細井さん)

大人の肌は、加齢によって肌免疫が落ちている可能性があるということ。より一層、ケアを意識する必要がありそうです。

花粉シーズンに実践したい肌対策とは?

目や鼻だけでなく、肌への影響を感じる方は実践してみましょう。

普段、どのように肌免疫や感覚神経を意識したケアを行っていけばいいでしょうか。その実践のヒントとして、花粉が飛散しはじめた今こそ習慣づけたい対策を、細井さんに伺いました。

■1:よい睡眠を取り、生活リズムを整える

「まずは生活リズム。花粉の時期になると昼間に自然に眠くなったり、花粉症の方は抗ヒスタミン薬の影響で眠くなったりして、逆に夜の睡眠が浅くなることも。睡眠不足やリズムの乱れは、免疫機能を低下させます。花粉対策をしたうえで、適度な運動をしたり、日光を浴びたり、夜の入浴やアロマなどをうまく利用して、よい睡眠を取ることが必要です」(細井さん)

■2:肌を丁寧に洗浄、保湿を

「洗浄も大切です。花粉は、花粉に含まれるたんぱく質分解酵素を介して、肌のバリア機能を低下させることが、資生堂の研究で分かっています。花粉症の発症時期には肌が過敏になることも分かりました。また大気汚染物質は肌を酸化させます。肌を丁寧に洗浄し、傷ができて花粉や大気汚染物質が入り込まないように、保湿を中心としたスキンケアを行ってください」(細井さん)

花粉に限らず、あらゆる肌トラブルを未然に防ぐには、そもそも強い肌をつくっておくということ。その強い肌づくりのアプローチとして、肌免疫と感覚神経を意識したケアを行うことがポイントになるというわけです。

よい睡眠を取り、生活リズムを整えること、そして丁寧なスキンケアを実施すること。とてもシンプルで当たり前のことが、強い肌づくりの根本的な対策となりそうです。

細井純一さん
資生堂 グローバルイノベーションセンター研究員
(ほそい じゅんいち)東京大学医科学研究所で学位取得後、米国NIH環境健康科学研究所において3年間、がん抑制遺 伝子の研究を、またハーバード大学のCBRCにおいて4年間、皮膚免疫の研究を行う。その後、資生堂グローバルイノベーションセンターに入所。皮膚と心、全身との関係について研究を続けている。
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石原亜香利