今年で7年目を迎える「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」。Van Cleef & Arpels(ヴァン クリーフ&アーペル)の支援のもと運営されるこのジュエリーの学校が、2013年に続き、2度目となる来日を果たしました。
2019年2月23日(土)〜3月8日(金)の14日間限定で開校中の特別講座のオープニングには、学長のマリー・ヴァラネ=デロムさんも登場。Precious.jpでは、「なぜ希少な職人技術を一般人の生徒に教えるのか?」、マリーさんのジュエリー教育に対する想いを、特別にインタビューさせていただきました。
「老舗ジュエラーが職人技術を一般人に伝承」その意義とは?
Q. 「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」を始めたきっかけを教えてください。
A. 私は長年ジュエリーの仕事に携わっておりますが、ジュエリーの世界はとてもクローズドで、秘密めいているなと、常々感じていました。ちょうど8年前にヴァン クリーフ&アーペル プレジデント兼CEOのニコラ・ボスとお話しする機会があり、そのときに互いに同じ想いを抱えていたことに気がつき意気投合したんです。
まずは一般の方々にもジュエリーのことをより知っていただく活動をすべきでは、そのためには学校をつくることが最善策ではないか、という考えにたどり着きました。
私はもともと教育ということに興味をもっていたので、このプロジェクトの一員に加えてくださったこと自体がありがたく、ニコラに「私に任せてほしい」と自ら志願しました。
幸運にも、それから1年後に実現することができました。もちろん努力もしましたが、幸運の元に企画が出発すると、物事が進むのも早いですよね(笑)。
Q. 実際に始めてみて、感触はいかがですか?
A. レコールは今年でちょうど7年目を迎えたばかりでして、満足とまではいきませんが、とても誇りに思っています。これまで、素晴らしい道のりを歩んできたなと感じております。授業やワークショップ、イベント、そして子供達へ向けたクラスも充実していますし、パリだけでなく、世界中を旅しながらこの活動を行えているということにも、意義があります。
海外への活動は、2013年の東京校からスタートしました。今では、香港やN.Y.、ドバイなど、世界中を巡っています。もちろん、新たにやりたいと考えていることは無限にありますので、まだまだ長い道のりですね。
Q. 海外での活動場所として、まず東京を選ばれた、その理由を教えてください。
A. 日本人はもともと、芸術の世界と特別な関係にあります。もちろん文化とも…。そういった意味で、レコールを通してジュエリーの学びの場を与えるというのは、私たちの夢でもありましたが、実際には日本のチームの協力のおかげだと思っています。
彼らは文化を継承するという教育面において関心が高く、レコールを始める準備がすでに整っていたのです。開校後わずか1年で来日できたのは、そういった側面が後押ししてくれたように思います。
Q.これまでに44か国から生徒を迎えたとのことですが、国によって生徒の反応の違いなどは、ありましたか?
A. 実は、そんなに変わらないんです。逆に、共通した反応があるということに驚いています。やはり、人類が始まって以来、ジュエリーは誰にとっても関心の高いものだったのでしょうね。遺跡の中にすでにジュエリーがあり、歴史の中で普遍的な存在として息づいてきた、そして、それを伝承してきたという事実が、ジュエリーの魅力なんだと改めて実感させられます。だからこそ、国によって反応が違うことではなく、逆に全世界どこでも同じ気持ちを共有できるのだと体感しています。
Q. 生徒の感想で、最も印象的なコメントなどあれば、教えてください。
A. いちばんうれしいのは、受講後に「これからは同じ視点でジュエリーを見ることはできません」と言ってもらえる瞬間です。ジュエリーがどれだけ丁寧に時間をかけてつくられているのか、それを肌で感じてもらいたい、というのが私たちの考えなので、「やったぁ!」という気持ちになります。
Q. ジュエリーの価値は、どんなところにあると思いますか?
A. それは、職人達の巧みな技にあります。ジュエリーというのは、素材の価値で見られがちな面もありますが、素材も技術によって加工されるものですので、どれだけ精巧な職人技術を駆使されているか、そこで価値が変わってきます。
日本人の歴史の中にも、立ち居振る舞いの美しさを価値と捉える文化がありますよね? それと同じような感覚だと思います。
Q. そもそも、マリーさんがジュエリーの世界に進んだきっかけは?
A. 実は、私のキャリアのスタートはジュエリーとは縁もない教育の世界でした。私は好奇心旺盛な性格のため、他のことにもチャレンジしてみたいと思い、たまたま足を踏み込んだのがジュエリーの世界だったのです。
ですから、はじめは専門的な知識もありませんでした。この世界に入ってから、エキスパートである職人の皆さんが私に教えてくださったのです。彼らが私に継承してくださったから、今の私があります。思い起こせば、そういった経緯も、このレコールを始めたきっかけなのかなと思います。
Q. 最後に、今後の目標を教えてください。
A. 未来は開けていると思っています。もっと多くの国で開校していきたいですし、知識面でも、ジュエリーの歴史は長いので内容は底を尽きませんし、継承していきたいことが山ほどあります。
今年末には、常設のレコールを香港に開校予定ですし、もう少ししたらこちらの詳細もお届けできると思います。ご希望があれば日本語の通訳をつけるサービスも行っていますので、日本人の生徒さんもウエルカムですよ! パリより近いので、ぜひ参加していただけるとうれしいです。
今回は、「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」の学長を務めるマリー・ヴァラネ=デロムさんに、希少な職人技術を一般人に継承していくことの意義を教えていただきました。今回のスケジュールはあと僅かで終了となりますが、香港校もオープン予定とのことですので、少しでも興味をもたれた方は、今後の動向に注目していってください!
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- EDIT&WRITING :
- 石原あや乃