和のエッセンスを残した落ち着いた店内
2009年、大船にオープンした『シェ・ケンタロウ』。当時はフレンチビストロとして営業していたが、お客様により良い空間で料理を提供したい、レストランとして次のステージにチャレンジしたいという鈴木謙太郎オーナーシェフの思いが高じ、2017年12月に北鎌倉に移転。和の情緒を感じるフレンチレストランとしてリニューアルオープンした。
JR北鎌倉駅徒歩2分の至便な場所に立地する『シェ・ケンタロウ』の建物はもともと料亭。内装も料亭時代のものを生かし、和モダンな空間に仕上がっている。
「大船時代もお客様に愛され、店としては安定していました。でも40歳を迎え、もっとお客様とじっくり向き合いたいと考えるようになりました。ガヤガヤしていない雰囲気が好きな北鎌倉で見つけたのがこの店舗。パーテーションで仕切れ、半個室のようにも利用できます」(鈴木シェフ)。
フレンチの基本を踏襲した、日本人の舌に合う料理
内装と同じく、食材も日本のものを生かし、また味付けも和を感じるあっさりとしたものになっている。
「今は素材の質も上がっていますから、濃い味付けをする必要はありません。ただしフレンチの命はソース。最近はソースを簡略化する店もありますが、そこは崩してはいけない部分。うちではソースをはじめ、じっくりと時間をかけた料理を提供しています」(鈴木シェフ)。
そのこだわりは、ランチコース(税別4,800円)の『オードブル バリエ』からも感じられる
お重を思わせる器に6種類もの前菜が並ぶ。どれも奇をてらっていない料理であるが、短角牛のモツ煮は日本のそれに近く、野菜の出汁が効いている。キャロットラペもまた酸味が抑えられ、素材の旨味を最大限に引き出されている。日本人になじみやすい味付けだ。
続くスープは、新玉ねぎの甘みがしっかりと出ている。
メインは魚料理と肉料理の両方が楽しめる。魚料理は『金目鯛のヴァプールと炙ったイカとイカスミのソース』。
蒸して、ふわっとした食感に仕上げた金目鯛に添えられているのが、鈴木シェフの真骨頂であるソース。ブイヤベースを凝縮したソースは魚介と野菜の出汁から出たコクが金目鯛の淡白さを濃厚に包み込む。さらにドライのブラックオリーブを散らし、香ばしさがアクセントになっている。
その隣にある、イカスミのソースにのったむっちりとしたイカは、盛り付けにどこか水墨画のような風情も感じさせる。
北海道産のスノーホワイトチェリバリーと呼ばれる品種の鴨で、脂のコクが感じられ、ヨーロッパの鴨にも負けない旨味がある。それを分厚くカットし、赤ワインのソースとグリンピースやそら豆のピューレで味わう。
デザートの『イチゴのマリネ』からも、ほのかに和が香る。
クランブルにイチゴと黒糖のアイスをのせたほか、求肥と竹炭のメレンゲといった日本らしい食材を使用する。イチゴの甘酸っぱさを、黒糖のアイスなどがビターさを加える。
食後のお飲み物では、鈴木シェフ自らが点てた抹茶と鈴木シェフが修行時代を共にしたパティシエのチョコレートと焼き菓子を堪能できる。
「今は写真映えする料理がもてはやされていますが、一番大事なのは味。ゴテゴテと飾り立てず、食欲を引き出す盛り付けを心がけています」(鈴木シェフ)。
ワイン代わりに高級茶とペアリング
料理に合わせて各コース3種類を用意するドリンクペアリング(税別3,500円)も、同店独特なものだ。ワインペアリングは3種類のワインを楽しめるほか、ノンアルコールペアリングでは『ロイヤルブルーティー』という高級茶3種のペアリングを楽しめる。
さらにワインと高級茶を同時に楽しめるミックスペアリングもある。
「アルコールが飲めない人にも、料理とドリンクのペアリングを楽しんでほしいとの思いから始めました。今ではワインが飲めるのにお茶をオーダーされる方もいるほど、人気を博しています」(鈴木シェフ)。
さらにこれまではコース料理を注文したカスタマーだけ利用できたバーカウンターが、今年よりここだけでの利用も可能となった。
バーカウンターは事前予約なしでアルコールやアラカルトメニューが味わえる。
同店には数多くのレストランを経験した常連が多いという。それだけでもこの店のクオリティの高さがうかがえるだろう。都会の喧騒を離れ、ゆっくりと上質なフレンチを味わいたい時に足を運びたい名店だ。
【シェ・ケンタロウ】
問い合わせ先
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シェ・ケンタロウ TEL:0467-33-5020
住所:神奈川県鎌倉市山ノ内407 北鎌倉門前1階
営業時間:11:30~13:30、18:00~20:30※予約優先、バーカウンター17:00〜22:00
定休日:火曜、第3水曜
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- TEXT :
- 津島千佳 ライター・エディター