食については徹底経験論者である

コハダの握り
コハダの握り

以前寿司屋で若い男性客ふたりが「江戸前」の寿司ネタについて論争をしていたが、聞かされる身にもなってほしい。なまさかな知識の開陳ぐらい寿司が不味くなるものはない。

ネットでどんな情報でも手に入る今の時代、このテの「ネット半可通」が増殖するのはしかたない。だが、積み重ねてきた経験的知見を前にすればそんな付け焼刃は地金が出てしまう。穴子なら穴子、小肌なら小肌、「1000カンは食べてきましたかね」という男のつぶやきならだれもが耳をそばだてる。

大正12年創業、現在の当主は3代目の油井(ゆい)隆一さん。自家製の塩でしめるなど、江戸前寿司流の手間がかかった小肌の握りは絶品だ。
大正12年創業、現在の当主は3代目の油井(ゆい)隆一さん。自家製の塩でしめるなど、江戸前寿司流の手間がかかった小肌の握りは絶品だ。

■人形町「㐂寿司」
住所/東京都中央区日本橋人形町2-7-13
TEL:03-3666-1682
営業/11時45分~14時30分、17時~21時30分(土曜11時45分~21時)
定休日/日曜、祝日

この記事の執筆者
TEXT :
林 信朗 服飾評論家
BY :
MEN'S Precious2016年春号『東京ジェントルマン50の極意』より
『MEN'S CLUB』『Gentry』『DORSO』など、数々のファッション誌の編集長を歴任し、フリーの服飾評論家に。ダンディズムを地で行くセンスと、博覧強記ぶりは業界でも随一。
クレジット :
撮影/篠原宏明