どの会社にもいる「夜の宴会部長」も、場がパーティとなると、まるで借りてきた猫のようになってしまう。だが、それもやむなしだ。長い時間をかけて社交文化を築いてきたヨーロッパと違い、日本にはそうした伝統がないのだから……。案内状が届いてもあたふたしなくて済むように、パーティで紳士らしく振る舞うためのヒントを掴んでおこう。

パーティと宴会の違いを知っている

20世紀初頭にヨーロッパまたは英国の都市で撮影された、バンケット(晩餐)で談笑する紳士淑女。フォーマルに装いながらも、リラックスして動き、会話を楽しめるのがパーティのマナーである。
20世紀初頭にヨーロッパまたは英国の都市で撮影された、バンケット(晩餐)で談笑する紳士淑女。フォーマルに装いながらも、リラックスして動き、会話を楽しめるのがパーティのマナーである。

 簡単に言うと、宴会とは知ったどうしの飲み食いである、パーティは知らない人と知り合う場所である。

 ところがぼくたちは後者の習慣が一切ない。学校、会社と、4月以外知らない人と知り合いになる必要がない環境で時を重ねていくからである。

 パーティでの「壁の花」状態から脱するのに秘策はない。まず他人が話しかけたくなるような、清潔で上品な服装を整えること。そして1回のパーティで3人に声をかけるノルマを自分に課す。3打席でどれだけの打率を残せるか。

 きれいごとと幸運だけで紳士になった男はいない

 

 いかがだろうか。やはり人と会い、親睦を深めるうえで、ファッションはとても大事な要素なのだ。それも自分本意の装いではなく、周りの人が自然と好感をもてるようでなくてはならない。間違っても、いきなり名刺を配りまくるような真似は避けるべし。会社のブランドに頼ることなく、自己の力で人を惹きつけてこそ、真のジェントルマンだ。

この記事の執筆者
TEXT :
林 信朗 服飾評論家
BY :
MEN'S Precious2016年春号『東京ジェントルマン50の極意』より
『MEN'S CLUB』『Gentry』『DORSO』など、数々のファッション誌の編集長を歴任し、フリーの服飾評論家に。ダンディズムを地で行くセンスと、博覧強記ぶりは業界でも随一。