【Lesson 1】パンツのスタイルを見極める


ゆったりとしたラインの「リラックス・パンツ」を見分けるポイントを整理したい。ポイントは4か所だ。前立て左右の「タック」、はき心地に影響する「股上」、ラインを強調する「テーパードシルエット」、そして「すそ幅」に注目!

シルエットは少しゆったりめだがツヤのあるスタイルは健在!

(ブルネロ クチネリ ジャパン)
(ブルネロ クチネリ ジャパン)

 大人のパンツとして定着してきた細身のシルエットは、遡ること2007年頃から始まった。股上が浅く腰回りがフィットし、シャープなシルエットでジャケットとの組み合わせも抜群。そんなパンツを主役にまで押し上げたのは、当時デビューしたばかりのパンツブランド、PT01の影響が大きかった。

PT01が登場する以前まで、クラシックなパンツは、スタンダードなシルエットで、すそ幅は、およそ19〜21㎝。そこから、どんどん細くなり、細身のシルエットが極まった’14年頃には、さらにすそ幅の狭い、くるぶしを見せるクロップドパンツにも火が付いた。

 メンズファッションは、シーズンごとに急激な変化をすることはまれだ。特にクラシックをベースにした、大人のブランドであればなおのこと。では、いつ頃からパンツのシルエットがゆったりとし始めたのか。決定的だったのは、11年にトラサルディのデザイナーに就任したウミット・ベナンが、股上が極端に深い「サルエルパンツ」を主流アイテムに据えたことだ。ピッティに参加するブランドがすぐに影響されたわけではなかったが、それまでのシャープなシルエットのパンツの流れを失速させる〝事件〞であった。

 ほどなくして、ゆったりとしたパンツがピッティ・ウォモでも目につき始める。スマートなノータックから、浅いワンタックやツータックをデザインしたパンツへ。そのディテールに対応して、股上が深く設定され始めた。ここ3年ほどの間に、今季のような、ゆったりとしたシルエットに到達したといえるだろう。

 最新のパンツを、これまで続いてきたシャープなシルエットのパンツと比較すると、随分とゆったりとしたシルエットを描いているのがわかる。腰回りからつま先のシルエットが、〝リラックスした雰囲気〞の漂うラインになっている。いよいよパンツのデザインの潮流が確実に変わってきたのである。

しなやかな薄手のウール素材を使い、2タックをデザインした、品のいいグレーのパンツ。クラシックな表情なものの、ドローコードをデザインすることで、スポーティな雰囲気をかもし出している。

この記事の執筆者
TEXT :
矢部克已 エグゼクティブファッションエディター
BY :
MEN'S Precious2016年春号「靴合わせから、パンツ丈、トップス選びまで詳細解説!主役顔「リラックス・パンツ」登場! 」より
ヴィットリオ矢部のニックネームを持つ本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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クレジット :
撮影/小池紀行(パイルドライバー) スタイリスト/武内雅英(code) 構成・文/矢部克已(UFFIZI MEDIA)
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