レンジローバーが長きにわたって築いてきた、「悪路もこなすプレミアムカー」という個性に、軽快感を加えたのが、2012年から販売が始まったレンジローバー・イヴォークだ。根強い人気を受けて登場した第二世代は、一見するとあまり変わっていないように思える。その違いをライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏がリポートする。
マイルドハイブリッド仕様も登場!
もっとも個性的なSUVと思っていたランドローバーのレンジローバー・イヴォークがフルモデルチェンジを受けた。試乗会は2019年3月にギリシア・アテネ近郊で開かれた。
イヴォークのよさは多い。コンパクトな車体と、それでいて上級車種のような質の高さと、それにオンロードとオフロード両方で発揮される走りのよさ、といったぐあいだ。
全長は4371ミリと、従来型とほぼ同寸だ。たとえばメルセデス・ベンツAクラス(4420ミリ)よりコンパクトだ。いっぽうで従来型イヴォークの特長だった逆くさび形といえるクーペ的なキャビンのデザインはキャラクターがたっているし、ぜいたくな素材を使う内装は、レンジローバーなみ、といいたくなるほどだ。
エンジンはガソリンとディーゼルともに2リッター4気筒だ。出力でバリエーションがある。日本には180馬力の「P180」、249馬力の「P250」、300馬力の「P300」というガソリンエンジン車と、180馬力の「D180」というディーゼルエンジン車が導入される。
P300はMHEV(マイルドハイブリッド)仕様だ。エンジンが苦手とするごく低回転域でも充分なトルクを出しスムーズな発進をするために、電気モーターがクランクシャフトを回す手伝いをする。
私が乗ったのはMHEV仕様だ。たしかに走り出しからしてスムーズで、けっこうよく回りフィールがよい。ステアリングも足まわりもしっかりしているので、高速での安定性は抜群だ。しかも高速では速度域が高くてもかなり静粛性が高い。
魅力的な内装が揃う
オフロードはじつはあまり期待していなかったが、そういう人が多いせいか、ランドローバーはしっかりオフロードをルートに組み込んでくれた。岩場だったり川のなかの走行だったり、あるいはガードレールもないがれきの山道を登って下るコースだったりというぐあいだ。
イヴォークはどんな道でも平気でこなしてしまう。アプローチアングルもデパーチャーアングルもけっこう深い。SUVカテゴリーの4WDとはあきからに違うかんじだ。私がオーナーになったら、美しい磁器のような張りをもった車体をオフロードに乗り入れる勇気はもてそうにないが、ポテンシャルとして高い走破性を持っているのは嬉しい気分がするだろう。
従来のイヴォークはとにかくスタイリッシュだったが、後席がややきゅうくつな印象があった。新型はあらたにエンジン横置きプラットフォームを採用しつつホイールベースも延ばしたので、室内がかなり広くなった印象だ。後席も(ドアの開口部をのぞけば)広々感が強い。
自分で買うなら、MHEVモデルは髙い回転域まで使えるガソリンエンジンのよさを持っているところが捨てがたい。いっぽうディーゼルエンジン車は、実用域は軽くアクセルペダルを踏むだけで太いトルクがカバーしてくれるので扱いやすく、こちらも魅力大なのだ。
ひとつ決めているのは、内装だ。デンマークの高級家具メーカー、クヴァドラ社によるウール素材のシート地がとても気持よい。いっぽう新採用というユーカリを使った合繊もリネンのような感触で新鮮だ。なにはともあれ、自分で楽しむだけでなく、もてなし感も抜群だと思う。
ベース車種は「Evoque」(461万円〜)。そのうえに、よりスポーティな外観の「R-DYNAMIC」(602万円〜)が設定さている。バーニッシュドカパーと呼ばれる銅色のアクセントがエアダムをはじめボディ各所に飾られた仕様だ。「P300」が設定されているのも「R-DYNAMIC」である。
- TEXT :
- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト