優れたデザインが世界中から集まる「ミラノ・デザインウィーク2019」が2019年4月8日から14日にかけて開催された。注目されたのはレクサスのインスタレーション(一時的な展示)である。

 レクサスではミラノの運河ちかくのトルトーナ地区で「レクサス・デザインアワード」の展示とグランプリを発表した。それにPerfumeのステージで知られるライゾマティクスとのパフォーマンスを組み合わせたのが、2019年のインスタレーションである。

いろいろなファクターを有機的に結びつける

コラボレーションデザイナーにアーティスト集団Rhizomatiksを迎えたインスタレーション「LEADING WITH LIGHT」。
コラボレーションデザイナーにアーティスト集団Rhizomatiksを迎えたインスタレーション「LEADING WITH LIGHT」。
グランプリのリサ・マークス氏を中央に、レクサス・インターナショナルの澤良宏プレジデント(左)をはじめ4人の審査員と、5人のファイナリスト(1名欠席)と、建築家の重松象平氏(上段右から2人め)やハイメ・アジョン氏(上段・左から2人め)ら4人のメンターがミラノに集合。
グランプリのリサ・マークス氏を中央に、レクサス・インターナショナルの澤良宏プレジデント(左)をはじめ4人の審査員と、5人のファイナリスト(1名欠席)と、建築家の重松象平氏(上段右から2人め)やハイメ・アジョン氏(上段・左から2人め)ら4人のメンターがミラノに集合。

「レクサス・デザインアワード」は、若手デザイナーの育成を目的にして毎年開催されてきた。デザインと銘打っているだけに対象となる分野は幅広い。2019年度は65カ国から1548にのぼる応募作品があったそうだ。そこからファイナリスト(優勝候補作)は6つに絞られた。

 2019年度の基準は、社会や個人のニーズを「予見」し、「革新的」なソリューションで、観衆や審査員の心を「魅了」するアイディアを募集した、とレクサスでは説明した。はたして、洪水に強い家屋、コンピューターを使った重油回収装置、離陸する飛行機の噴射力でファンを回す風力発電と、着眼点ゆたかな作品がファイナリストとして並んだ。

 グランプリは米国のリサ・マークス氏に贈られた。作品は「Algorithmic Lace アルゴリズミック・レース」と名づけられたレース編みのブラジャーだ。「乳房切除手術を受けたあとを念頭においてデザインしたものです」とマークス氏は言う。

 目的じしんも社会性を帯びているうえ、デザイン手法のユニークさが注目された。本来の身体の美しさを尊重しながら、からだに合った快適な下着としての機能を果たすべく、マークス氏は3Dモデリングを採用。製作は伝統的な手工芸のレースで編み上げる。組み合わせの妙も評価されたポイントだった。

「2019年はレクサスデザインがカンパニーになって初のミラノ・デザインウィークとなりました。それによって、展示がすべて有機的に結びつくようになったと自負しています。デザインとは、いろいろなファクターを有機的に結びつけること、という私のたちの考えが反映された内容だと思います」

 レクサス・インターナショナルの澤良宏プレジデントは会場でのインタビューに応えて上記のように語った。

「テクノロジーを創造的に活用しながらも人に寄り添う人間中心的なプロダクト」と評価されレクサス・デザインアワードのグランプリを受賞した米リサ・マークス氏の「Algorithmic Lace」。
「テクノロジーを創造的に活用しながらも人に寄り添う人間中心的なプロダクト」と評価されレクサス・デザインアワードのグランプリを受賞した米リサ・マークス氏の「Algorithmic Lace」。

LEDライトのショーは市販車にも通じる制御技術を駆使

個人の体型に合った形状を3Dモデリングしたあと、欧州で伝統的なレース編みを使って製作されるブラジャー。
個人の体型に合った形状を3Dモデリングしたあと、欧州で伝統的なレース編みを使って製作されるブラジャー。
来場者が手にするボールを光線が追いかけるのもRhizomatiksのインスタレーションの一部。
来場者が手にするボールを光線が追いかけるのもRhizomatiksのインスタレーションの一部。

 

 トルトーナ地区の同じ会場で、レクサスが用意したもうひとつのインスタレーションは、ライゾマティクスと組んだ「LEADING WITH LIGHT」だ。真っ暗な空間の中で光線とダンサーが、複雑な動きで楽しませてくれる。

 LEDのライトのショーは、レクサス車に採用予定というブレードスキャン方式採用のハイビーム可変ヘッドランプ技術につながる。LEDのセグメント数によらずより細かい遮光制御を可能とするものだ。

 対向車のライトを感知すると、その部分への配光をカットする。歩行者を含めてハイビームで幻惑しないようにする技術だ。会場では来場者はペンライトを渡された。ハイビームの光の中に立ちながら、その光をヘッドランプに向けると、瞬時に上半身への配光が遮断される。

 ライトをコントロールする技術が安全性を高め、他者への思いやりとなる。ライゾマティクスのアーティストである真鍋大度氏も会場を訪れ、「ヒューマンセンタード、人間中心をというレクサスの考えかたに賛同しながら、ダンサーを中心に置いたインスタレーションを考えました」と語った。

ブレードスキャン方式採用のハイビーム可変ヘッドランプの機能を遊び感覚で体験できた。
ブレードスキャン方式採用のハイビーム可変ヘッドランプの機能を遊び感覚で体験できた。
トルトーナ地区の会場には朝から来場者が多く並んだ。
トルトーナ地区の会場には朝から来場者が多く並んだ。
この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。