2015年に登場した6代目のシボレー・カマロが、昨年の11月にマイナーチェンジモデルとして我々の前に登場した。フェイスや内外装に変更を加えると共にパフォーマンスも見直すという順当なマイナーチェンジである。ラインアップは伝統的な453馬力の6.2ℓV型8気筒エンジンを積んだ「SS」をトップグレードに置き、275馬力の2.0ℓ直列4気筒ターボエンジンを搭載した「LT RS」と「コンバーチブル」の3車種構成。試乗車のローンチエディションは、このマイナーチェンジモデルのデビューを記念して限定販売されたモデルである。

 

さらに引き締まったモダン・カマロ

いわゆるフェイスリフトを受けたカマロのスタイリングは、なかなかの迫力。
いわゆるフェイスリフトを受けたカマロのスタイリングは、なかなかの迫力。
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カマロ伝統のデザインを用いるテールランプは、LED化でくっきりと点灯。
カマロ伝統のデザインを用いるテールランプは、LED化でくっきりと点灯。

 さて、新たなフロントフェイスをチェックしてみると上下のエアインテークが一体化されたように見える大きなブラックグリルと、その両側にデイタイム・ランニングランプを備えた新デザインのLEDヘッドランプとLEDのシグネチャー/ターンシグナルを置くというデザイン。これまでのようにバンパー部分がボディ色だったことを考えると、引き締まったうえに睨みがきいた印象だ。

 ここで興味深いのはそのブラックのフロントグリルの中央にあるシボレーのマーク、通称「ボウタイ」が、中空式の新デザインを採用していることである。シボレーはこれを新たに「フロータイ」と名付けているのだが、輪郭だけを残した構造で走行風の通り道にしている。「だからどうした」と思うかもしれないが、実は開発時のテストによると、この穴を開けただけで空気の流れを1分間に約3㎥増加させることができたという。結果的にフード内部の温度を下げ、冷却水/エンジンオイル温度も1.2℃低減させる効果が実証されたというのだ。

 そんなことに感心しながら、これまたリファインされたリアを眺める。LEDテールランプはなどカマロ伝統のデュアルエレメントデザインを採用しながらも、周囲をブラックアウトしたレンズなどのデザインによって、旧型以上に立体的で都会的な印象が強くなった。こうした細かな変更によって、鮮度を向上させている。

 もちろんこうした変更はキャビンにも及んでいる。ドライバーのインフォメーションは設定可能な8インチのカラークラスターディスプレイで、解像度を高めた次世代型となっているために最新スマートフォンのような直感的な操作が可能だ。BOSEが専用開発したオーディオシステムも標準だし(LT RS、SS)、なかなかの充実ぶりである。その他にもキャビン内を華やかに演出するための新たなライティングを設定するなど、細かな変更が散りばめられている。そうした細かな変更点を確認しながら、相変わらず適度なホールド性を持っているレザーシートに体を収めた。スポーツタイプのシートのホールド性にも不満を感じることはない。

時代にフィットしたエンジンが気持ちいい

GMもダウンサイジングエンジンに力を入れている。こちらのユニットはターボの力で275馬力のハイパワーを絞り出す。
GMもダウンサイジングエンジンに力を入れている。こちらのユニットはターボの力で275馬力のハイパワーを絞り出す。
コクピットまわりのデザインは割とオーソドックス。使いやすく、視認性も良好だ。
コクピットまわりのデザインは割とオーソドックス。使いやすく、視認性も良好だ。
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 エンジンをスタートさせる。アメリカン・スポーツらしい、SS搭載のV8のドロドロとしたエンジン音や地の底から盛り上がってくるようなトルクフルな走りも試してみたいと思う。が、だからといってそれが現代風かというと、趣味性に過ぎる感も。その点、こちらの2ℓ直4直噴ターボエンジンは、扱いやすさもエミッションも時代にフィットしている。そんな風に自分を納得させながらアクセルと開けた。

 275馬力のエンジンは実に大人しく、ごくごく良識的な振る舞いで一般路を走ってくれた。そして高速への乗り込みでアクセルをググッと踏み込んでみると、エンジンパフォーマンスに見合うだけの加速を見せてくれる。ばかッ速い類いではないが、決して遅れを取るわけでもなく、実に扱いやすいエンジンである。

 組み合わせられる8速ATのシフトがかなり上手くセッティングされていて、アクセルの踏み加減で加速も減速も気持ちいい。その素早いギアチェンジで、まさに胸のすく加速を生み出してくれる。もちろんその走りを制御するためにブレンボ製のハイパフォーマンスブレーキシステム(フロント)が装備されている。このセッティングも上手く料理してあって、ハードブレーキングの場面でも危機に不安を抱いて、大きく破綻を見せることはなかった。V8エンジンのSSを、アメリカンに特別なこだわりを持っている人向けとすれば、この直4エンジンのLT RSはアメリカン・スポーツの「今」を味わいたい人にぴったりの存在といえる。

<シボレー・カマロLT RS>
全長×全幅×全高:4,785×1,900×1,345mm
車重:1,560kg
駆動方式:FR
エンジン:1,998cc 直列4気筒 DOHCターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:202kW(275PS)/5,500rpm
最大トルク:400Nm/3,000~4,000rpm
¥5,616,000(LT RSローンチエディション/限定20台、税抜)

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この記事の執筆者
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで「いかに乗り物のある生活を楽しむか」をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
PHOTO :
篠原晃一
MOVIE :
永田忠彦(Quarter Photography)