【目次】
- ■1:「本当はそうは思わない」のに褒める
- ■2:「外見ばかり」を褒める
- ■3:「相手のペース」にお構いなく褒める
- ■4:上から目線で褒める
- ■5:「過剰」な褒め方をする
- ■6:褒めながら暗に「自分への賞讃」も要求する
- ■7:何かと比較して褒める
- 目の前で他人を褒めるときの「注意点」まとめ
コミュニケーションや人間関係を円滑にするうえで、相手を“褒める”というスキルは非常に重要。褒め上手な人は、社内外を問わず周囲から好かれやすく、仕事をスムーズに有利に進めることができますよね。とはいえ、「とにかく褒めればいい」とばかりに、闇雲にリップサービスを連発するのは考えもの。あなたも「よかれ」と思って褒めたつもりが、相手の反応が芳しくなかったり、あまつさえ、相手を不機嫌にさせてしまったりした経験はないでしょうか? 実はそれ、褒め方に問題があったのかもしれません!今回は、『「一流の存在感」がある女性の振る舞いのルール』の著者、プレゼンスコンサルタント®の丸山ゆ利絵さんから、相手に嫌われてしまうNGな褒め方について教えていただきました。
■1:「本当はそうは思わない」のに褒める
相手との関係をよくしたい、気に入られたいという一心で、うわべだけのお世辞を使ってしまうことはありませんか? あなたに女優並の演技力があるか、相手がよほど鈍感でない限り、そのアプローチは逆効果になりかねません。「人の本音は、本人が思う以上に透けて見えるものです。うわべだけのお世辞では、目の表情や声色に“本当はそう思っていない”というのが、にじみ出てしまいます。無理やり褒めようとするのではなく、まずは素直に相手の美点にフォーカスするべきです」(丸山さん)
「本当はそう思っていない」という本心が透けて見えると、相手は自分が馬鹿にされたように感じてしまうかもしれませんよね。褒め上手になるためには、大前提として、相手の長所を見つけるスキルを磨く必要がありそうです。軽々しくお世辞を口にするよりも、まずは目の前の相手を「ポジティブな視点でよく観察する」ことを、習慣化しましょう。
■2:「外見ばかり」を褒める
人を褒めるときに、外見と内面のどちらに着目するほうがよいのでしょうか? 丸山さんによれば、初対面などお互いの気心が知れないうちは、まず見た目から長所を探すのは有効であるものの、ずっと外見ばかりでは、相手との関係をなかなか深められないとのことです。
「初対面などでは、“素敵なお洋服”や“おきれいですね”など、表面的なところから褒めるのがむしろ自然ですし、会話の糸口にもなります。しかし、いつも容姿や身につけているもの、持っているものなど、表面的なことにしか目がいっていないと、相手にはどこか空々しく聞こえてしまい、かえって不快に感じる場合があります。
また、“そのバッグ、○○(ブランド)でしょう。素敵ですね”というのは一見、相手を褒めているようで、実はそのブランドを褒めているだけだったりします。ひと目で相手のよいところを探しあて、それを言葉にするのはよいのですが、“ちょっと表面的すぎたかな”と気づいたら、あとでもう少し相手の本質的なところに関わる面を褒めるようなフォローを。たとえば、“あなたという素敵な人が持つから、○○もこれだけ引き立つのよね”などはいかがでしょうか?
人間は賞讃されるとき、その対象が自分の本質により近いほうが心を動かされます。順番で言うと、“外見や環境→行動→能力→信念や価値観→存在”です。 ですから、表面的なところから始め、徐々に本質に近いところに言及していくと、相手の“自分のことを認められたい!”という、人間として自然な気持ちを満たすことができるでしょう」(丸山さん)。初対面の相手との会話においては、ぱっと見た目で「素敵だな」と思う点を褒めることが、コミュニケーションの潤滑油になります。ただし、そこから関係を深めていくには、視覚情報ばかりに頼らず、相手の内面や価値観をしっかり見極めたうえで、褒めることが大切です。
■3:「相手のペース」にお構いなく褒める
褒めることの目的は、相手に喜んでもらうこと。なのに、褒めること自体が目的化し、相手がどう感じているかをないがしろにすると、褒め言葉の押し売りになりかねません。「人は自分が褒められると嬉しいものですが、あまりダイレクトに褒められると照れもあり、困惑を覚えることもあります。そうした相手の困惑に気づかないまま褒めちぎって、かえって相手の気持ちが離れたり、心を閉ざされたりすることは意外と多いのです。実際に、こんなシーンを見かけたことがあります。とある女性が、初対面の女性から“すごーい”、“美人ですよね”、“お洋服も素敵!”と賛辞を浴びせられて、明らかに苦笑いを浮かべていたのです。後からその褒められた女性は、“ああいうのって、悪いけど疲れる……”とこぼしていました。
心理学では“ペーシング”といって、相手の声の大きさや話すスピード、呼吸や表情などの調子を合わせることによって親和性が高まり、信頼関係を築きやすくなるといわれています。“褒めることは、いいこと”という思い込みから、相手のペースをお構いなしに褒め続けると、かえって相手から敬遠されてしまうおそれもあるでしょう」(丸山さん)。
特に、謙譲を美徳とする日本人では、褒められるのはうれしい反面、どうリアクションすればいいのかわからない、という人も少なくありません。一方的に褒めるのではなく、相手の表情や声色から、「まんざらでもない」のか「ノー・サンキュー」なのか読み取るように、心がけましょう。
■4:上から目線で褒める
褒めるというのは、本来は相手を立てる行為のはずですが、実は、褒め方によっては、相手から上から目線のように感じられてしまうこともあるようです。「たとえば、相手の仕事ぶりに対する“よくできましたね”や“いいと思います”というフレーズ。自分がその人について“いい”と思うことについて言及しているので、形式的には褒め言葉に当たりそうなのですが、言い方によっては“自分が合格点をつけてあげる”、“評価してあげる”というニュアンスになり、相手に不快感を与える可能性があります。
目上の人から目下の人に言うときはまだいいのですが、それでも直接指導的立場にあったことがないなら、こうした上から目線には気をつけるべきです。特に、相手の能力や実績を褒めるときには、注意が必要でしょう。褒める態度の基本は、“尊敬・感動”です。相手の様子や行動、存在を見て心を動かされ、“自分よりすぐれている”、“見習いたい”という気持ちを伝えたい、という動機が根底にあるかどうかが、大事なことだと思います」(丸山さん)。
上から目線の褒め方は、知らず知らずのうちにやってしまっている人が多いかもしれませんね。褒めるという行為は、相手を評価することではなく、自分の尊敬・感動を伝えるものだという基本を、改めて押さえておきましょう。
■5:「過剰」な褒め方をする
お世辞ではなく、本当に心から尊敬・感動したときには、ありきたりな言葉ではなく、気の利いたフレーズで相手を讃えたいと思いませんか? ただ、そうした自分の感情が空回りして、かえって気持ちが伝わりにくくなることもあるようです。「心を動かされれば、言葉が多少大げさになるのは致し方がありません。しかし、ただただ、自分の気持ちをストレートにぶつけるだけでは、やはり相手を困惑させるもとです。どのように表現すれば相手に伝わりやすく、喜んでもらえるかをきちんと考えて言葉を選ぶ、という行動選択は、大人として慎重にあたるべきだろうと思います。たとえば、“あなたの瞳はダイヤモンドみたい!”と言われたら、たとえそれが嘘偽りのない心からの言葉であっても、ちょっとびっくりするか、うさん臭く感じてしまう人がほとんどではないでしょうか」(丸山さん)。
実は、筆者自身、ある目上の方からいただいたパンが、感激するほどおいしかったので、その気持ちを伝えたいあまり、「食感が……小麦の香りが……」と言葉を尽くしたところ、「そこまで言わなくても、一言“おいしかった”でいいのに」と、渋い顔をされた経験があります。褒めたいエネルギーが強すぎて、独りよがりにならないようにしましょう。自分の言葉が相手にどう聞こえるか配慮するという、大人のコミュニケーションのルールを忘れずに!
■6:褒めながら暗に「自分への賞讃」も要求する
前述のように、褒めることの動機は、相手に対して「自分よりすぐれている」、「見習いたい」という気持ちを伝えたいというもの。ところが、マウンティング癖のある人の場合、相手へのリスペクトよりも「自分が褒められたい」欲が上回って、奇妙な褒め言葉を発してしまうこともあるようです。「これはちょっと意地悪な見方ですが、人を褒めていると見せて、自分への称賛を要求するような言い方を、時々耳にします。たとえば“○○されて、すごいですよね。……あ、私も○○は前にしたことがあるのですけど”といった話し方です。言われたほうは、何か言葉を返さないと、とプレッシャーを受けてしまいます。自分のことを話題にしようと狙って言っているなら、それはそれでひとつの戦略としてアリかもしれませんが、無意識であれば注意が必要です」(丸山さん)。
はっきりと口には出さなくても、内心「私のほうがあなたより同等か、もっと上」という意識があれば、いくら「すごいですねー」と口先で褒めても、本心が見え透いて相手を嫌な気分にさせるだけです。人を褒めるときには、その根底に「自分が褒められたい」という不純な動機がないか意識しましょう。
■7:何かと比較して褒める
「〇〇に引き換え、あなたはすごい!」と、何かを貶めながら持ち上げるのも、相手がリアクションに困ってしまう褒め方です。「“うちの娘はだめなのに、○○ちゃんはすごいですね”とか、“私は全然できないのに、そういうことがちゃんとできててすごいわ”など、相手を持ち上げようとするあまり、自分や自分の身内を貶めた言い方にしてしまうのは、気持ちとしてはわかります。ただ、相手は素直に“ありがとう”と言うと、貶めたことまで認めてしまうようで、返答に困ります。また、そう返答されると、自分だっていい気持ちはしないはずです。
また、もしも相手が“そんなことないですよ、お宅のお嬢さんだって”とか“えー、そんなことないですよ。あなたのほうがずっとできています”などの言葉を返してくれるのを期待しているなら、それはそれで問題。前項の“暗に自分への賞讃も要求する”のと同様、純粋に褒める行為とはいえません」(丸山さん)。
人を褒めるために、わざわざ誰かを貶める必要はありません。「〇〇ちゃんはすごいですね」「あなたのそういうところ私も見習いたいわ」など、リスペクトの念をシンプルに伝えるほうが、相手は素直に喜べますよね。
目の前で他人を褒めるときの「注意点」まとめ
以上、好かれる人はやらない、「相手を不快にさせる」NGな褒め方を7例、ご紹介しました。
注意してほしいポイントは、
・思ってもいないことや、外見ばかりを褒めない
・相手のペースに構わず、過剰に褒めない
・相手を評価するような褒め方をしない
・褒めることに見返りを求めない
・何かと比較して褒めない
です。
褒める態度の基本は、“尊敬・感動”です。尊敬がなければ、褒めは自分勝手なものになったり、相手を評価してしまいます。また、感動がなければ、上辺だけの褒めになったり、見返りを求めてしまうのです。「よかれ」と思って褒めたのに、相手との溝が深まってしまった……なんて事態にならないよう、今回ご紹介したNGに心当たりのある人は、ぜひこの機会に改善しましょう。
『「一流の存在感」がある女性の振る舞いのルール』丸山ゆ利絵・著 日本実業出版社刊
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美