外でちくっと呑んで帰宅。
ぼくは酒が入ると仕事ができないタイプだから、歯だけ磨いてベッドに直行する。
以前だったら読みかけの本を何冊か抱えてとなるが、昨今はストリーミングで映画ばかりになってしまった。DVDすら観ないです(DVDは、ほんとに資料的なものになってしまったな。映画会社から送ってくる資料映像とかね。自分の映画コレクションもほとんどすべて外付けHDにいれてしまったし。第一、あの円盤を挿入するのがメンドクサイではないか)。Netflix、Hulu、Amazon Primeなど、ど・れ・に・し・よ・う・か・な?とやっているとけっこう掘り出し物があったりする。かわいそうに本たちのほとんどは、跋(後書きのことである)だけ読まれて、本棚で無聊を託つことになる。いや、ほんとに読書量減ったなあ。これでいいのだろうか(笑)。
で、ぼくのナイトムービーセレクションだが、ウン十年の間に自然に選考基準のようなものができあがっている。以下6つの「ない」がそれだ。
一、夜なんだから、うるさくない→ 戦闘シーンが売りの映画、ネイビーシールズ的なもの。破裂音ばかり聞かされたんじゃあレム睡眠に入れないじゃないか。
二、当然、こわくない→血ものは絶対イヤね。でもね、猟奇殺人系はいかにも現代的なテーマ。まあ、昼に観るから許してください。オカルト、ゾンビものもだめだ。昨今のアメリカ映画は、ほんとにゾンビもの、吸血鬼ものが多く、その大半は、くだらなくて腹が立つ。こんなもの観てたんじゃロクな大人にならないぞ、アメリカの若者よ!などと夜中に腹を立てるのも、もったいないのでNGだ。
三、とろくない→時代もの、恋愛もの、社会派系などまったく問題なく愉しめる男なのだが、導入部が悠長なのはいかん。夜中ってリラックスしているようなんですが、意外にイラついたりしますよ。10分でつかんでくれなきゃ寝ちゃうよ!
四、が、展開が早すぎない→かつての「24」のよう心臓音ドッキンコドッキンコで場面展開が早けりゃいいってもんじゃない。「Taken」なんか最高によくできた映画だが、スピードについていけない。休み前ならともかく、ヘトヘトに疲れた仕事帰りで、翌日もヘビーに仕事が待っている夜に好んで消耗したくないじゃありませんか。
五、頭をつかわない→推理もの、法廷もの、SF、どれも大好きなのだが、作品を選ばないと。たとえば「ユージュアル・サスペクツ」(最高傑作)「メメント」(これまた最高傑作)など、そりゃもうけっこうな作品なんですが、ちょいと物語がフクザツなんですね。そうすると、しょっぱなの場面に伏線はないか?なんて巻き戻して(なんてもう言わないんだが)、チェックしなきゃなんない。これはね、うざいですよ。ヴォイスコマンドで「10分巻き戻す!」なんてできりゃあいいんだけれど。
六、 エロくない→あなたね、ぼくはもう若かない。夜中にコーフンなんざして無駄疲れしたくないんですよ。万が一、唯一の家族である22歳の娘でも入ってきて「父さん何観てんの」なんて訊かれた日にゃあ、立つ瀬ないでしょ?
その意味で、このブログシリーズの第1回でとりあげたNetflixの「ザ・クラウン」など、ストリーミングサービスのTVシリーズは、ほんとによくできている。その多くはこれらのサービスプロバイダーが制作しているオリジナルである。
1回分が小1時間、余裕があれば2、3エピソード観てもよし。休日など「大人のひきこもり」タイムには1シーズン観もよし。ただ観てオモシロイだけではなく、徹底的なリサーチを基にした脚本だから物語の背景になる世界のことも学べて一挙両得。林が夢中になった「今観られる大人の男のテレビシリーズBest 5」。順不同ですが、どれからご覧になっても素敵な夜が過ごせることは請け合います。
「ホームランド」→アメリカと中東の諜報戦の実態がリアル。主人公のキャリー(クレア・デインズ)の「キレぶり」が見物。
「マッドメン」→60年代アメリカの広告マンたちが、実にカッコイイですな。酒、煙草、不倫。仕事もがんばるが、悪いこともがんばる。
「ザ・クラウン」→英国王室の近代史がすべてわかる。そしてドラマ性たっぷり。映画の「英国王のスピーチ」と「クイーン」もセットに観れば完璧。
「刑事ジョン・ルーサー」→BBCの刑事ドラマは黒人刑事の声と肉体がおそろしくかっこいい。屈折した犯罪者の心理がわかるのも本人が超屈折してるから、という設定もおもしろいんだな。
「ハウス・オブ・カード 野望の階段」→大統領を頂点にするアメリカ政治が実によくわかる。主人公を演じるケビン・スペーシーの「手段を問わぬ」上昇志向はむしろ爽快。奥さん役のロビン・ライトのファッションはモダンでシンプルで、余分な話であるが、超ぼく好みなんです。
- TEXT :
- 林 信朗 服飾評論家