以前、モト・グッツィを友人から借りて少しばかり走ったことがある。国産車は当然、BMW、さらにはドゥカティというイタリアンにも跨がり、走ったことがある。どれも独特のライディングフィールを感じたが、乗りにくい感覚を抱いたことがなかった。だがモト・グッツィだけは違った。やや癖が強く、乗りにくいというか、ちょいとコツがいる印象だった。
それが1年ほど前、雑誌の企画で久し振りに乗る機会を得た。赤く塗装されたフレームにゼッケンカウルやメッキタンク、そしてバックステップなどが与えられた、V7 IIIレーサーというカフェレーサーモデルだった。過去の印象から乗りにくさを覚悟して走り出したのだが、それは杞憂に終わった。
ごくごく普通に乗りこなせるし、癖もあまり感じることなく、混み合った都内の道をヒラリヒラリ。郊外に出ると、これがまた好ましい人馬一体感を得ることが出来たのだ。それ以降、モト・グッツィを敬遠することはなくなり、機会さえあれば積極的に跨がるようになった。
ぎらぎらしない上質をまとう
そして今回のV7 IIIシリーズの特別仕様、「ミラノ」である。上質感溢れるクロームやアルミパーツ、そして渋い輝きの燃料タンクを与えたカスタムモデルだ。よく「大人の仕上げ」とか「高級」などというが、それを端的に表現したのが、このモデルだ。
縦置きV型2気筒エンジンはブラックアウトされているが、そこから連なるエキゾーストパイプ、そしてサイレンサーまでが煌びやかなクローム仕上げ。さらに前後のタイヤをカバーするフェンダーもアルミ化されている。一方で、カラーリングはあくまでも渋めを貫いている。クロームパーツとの絶妙なバランスは、さすがイタリアンと感心させられるばかりである。
それだけではない。シートをよく見ると、白いステッチがアクセントとして効いていることがわかるはず。側面に合皮を、座面にはアルカンターラを用いるなど、素材の使い方もうまい。
おまけにシート後方の、「MOTO GUZZI」のロゴは刺繍という贅沢さだ。全体に漂う大人っぽさ、上質さは、写真からも感じ取ってもらえるはず。これならカジュアルな装いのみならず、ドレスアップして乗っても似合いそうだ。
扱いやすい750ccエンジン
外観ばかりに話は及んでしまったが、乗りやすさはベースモデルのV7 IIIと共通。750ccという、今となっては扱いやすい排気量のエンジンは、4,000回転辺りまで使いながら走れば、ほとんどの交通の流れに乗って軽快に走ることが出来る。近頃のビッグバイクに慣れた方には、38kwという最高出力が少々物足りなく思うかもしれないが、実際にはそれがかえって扱いやすさにつながり、どんなシーンでもストレスを感じることなく走れるのだ。
エンジンヘッドが横から出ているが、ボディはスリムで足つき性も良く、街乗りからツーリングまで楽しめる。チェーンではなく、シャフトドライブにつき、スロットルを急に開けると回転するシャフトの反力で車体が少し右へ傾く特性はあるが(トルクリアクション)、ごくごく普通に走っている限り、ライディングの快適さをスポイルするようなレベルのものではない。乗りにくさや扱いにくさはどこにもなく、ごく普通に乗れるバイクとして、リターンライダーにもおすすめできる。お乗りの際はぜひ着こなしも工夫して、モト・グッツィの洒脱な魅力を引き出していただきたい。
<モト・グッツィV7 IIIミラノ>
全長×全幅×全高:2,185×800×1,110㎜
車両重量:213kg
シート高:770㎜
トランスミッション:6速リターン
エンジン:空冷V型2気筒OHV 2バルブ744cc
最高出力:38kw(52PS)/6,200rpm
最大トルク:60Nm/4,900rpm
価格:¥1,148,000(税込)
問い合わせ先
- モト・グッツィ TEL:03-3453-3903(ピアッジオコール)
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- TEXT :
- 佐藤篤司 自動車ライター