千葉県君津市に店を構えるクリーニング店「ナチュラルクリーン」。そのクリーニングの技術には目を見張るものがある。全国から持ち込まれるクリーニング品は、高級ダウンであったり、1点ものの服であったりと、実にさまざまな服が持ち込まれている。その中でも仕立てのよいテーラードスーツやジャケットが目立つ印象だった。

よく見かける街のクリーニングでも同じではないのか?と思うだろうが、ここでは状況が少し違う。よくテーラードスーツやジャケットは、洗わないことが原則であると言われているが、それはなぜか?理由は簡単で「服を壊すから」である。理由は簡単で、服の構造をよく理解していない。またプレス(仕上げ)の際に、服に合わて最適なプレス仕上げを行っていないから「服を壊す」という事が起こるそうだ。

「ナチュラルクリーン」に依頼が殺到する理由

手入れが行き届いた店の入り口は、植木職人による細やかな気配りがあるからこそ。お客様をお迎えする場所だからこそ手入れは欠かせない。

クリーニングとは何か?水洗いって?ドライクリーニングって?

よく耳にするドライクリーニングとは、有機溶剤を使い洗うことであり、スーツやコートなどを洗う際によく用いられている一般的な手法だ。油性の汚れに対して効果を発揮する。一方水洗いは家庭の洗濯機で洗うことであり、シャツや靴下などの、消耗が激しいアイテムを洗うことがそれに該当する。水性の汚れに対して有効な洗い方だ。

絶大な効果があるのがウォータークリーニング

ウォータークリーニングとは、環境・人体・衣類に優しいシリコーンドライで皮脂汚れなどの油汚れを落とすとともに、シリコーン溶剤で衣類の光沢感やうるおいを蘇らせた後で、「クラスタルウォーター」と「マイクロバブル」で汗などの水溶性の汚れを洗浄する画期的な、水洗いシステムを核としたシステムである。シリコーンとは化粧品由来の素材であり人体に無害であることに加えて、ドライクリーニングの有機溶剤として認可されている中で最も優れている。購入時の手触りや光沢感はシリコーンが施されているため、シリコーンで洗浄することで、風合いや艶が蘇る。

秘密はクラスタルウォーター

じゃぶじゃぶ洗っているように見えるが、洗いにかける時間は30秒程度。汚れがひどいものでも5分程度だそう。それだけ水の質が違うのだ。

「ナチュラルクリーン」では、クリーニングに必要不可欠な水を地下400メートルという深さから採取し利用しているそう。つまり天然水で服を洗っているのだ。また、クリーニングの朝は早く午前4時に作業を始めるそうで、朝イチの地下水はよく引き締まっていて気持ちが良く、汚れの落ち方が違うそうだ。地下からくみ上げた水を、そのまま利用するのではなく、水をナノレベルまでに分解、超微細な粒子へ変換し、服やレザーに最適な特殊な水「クラスウォーター」で洗っているそう。

これによって洗うことで生じる服へのダメージが軽減されることをはじめ、汚れは、漂白剤などの洗剤を使用しなくてもきれいに落ちるそうだ。また、カシミヤやビキューナなどのコートやジャケットは色味と光沢が蘇る。実際に高級服やカシミヤ、着物など他店では断られてしまう物であってもこの特殊な水であれば、どんなものでも洗うことができるため、全国から持ち込まれている理由のひとつでもある。また、千葉県は名水の産地として有名で、名水で洗われる服はなんともいえない贅沢さがある。

洗う手間を惜しまない「ナチュラルクリーン」はここが違う!

「ナチュラルクリーン」では、持ち込まれた服それぞれに対し、検品、採寸、などを行いカルテを作成するのだが、スーツを例にすると、袖口や裏地、スレや破れ、ボタンの有無を確認する。全体の汗変、ポケットの状態やホコリなど、テカリや毛羽立ち、サイドスリット、首回り、襟、前・後身頃、ポケット、皮脂汚れ、変色度合いなど項目は多岐にわたる。それこそ持ち主ですら気が付かない部分もチェックしているため、戻ってきたカルテには驚かされるはずだ。修理箇所は事前修理を行う。服によっては、洗う前に仕付け糸を縫い付け、洗った時に型崩れをしないよう最新の注意を払っている。

また前処理工程でスポッターで各部位の染み抜き、を行い、染みは洗って落とすのではなく、洗う前に落とすそう。乾燥の際は、高温で一気にではなく、生地が痛まないよう注意を払いながら、体温と同じぐらいの温度で乾燥させるそうだ。

細かい仕上げが高いクオリティを生む!仕上げこそ洋服の顔である!

ビスポークテーラー ディトーズの水落卓宏さんによる実演指導の様子。水落氏を講師に招いて定期的に行われる勉強会。アイロンのかけ方やその注意点、服の特徴などの説明をしている。常に勉強する姿勢が質の良いサービスにつながっている。

仕上げに関して現在あるクリーニング店の中で、特に抜きん出ているのが「ナチュラルクリーン」である。スーツの仕上げの工程であれば【1】袖口・袖裏のハンドプレス【2】内袖・外袖のマシーンプレ【3】前身頃の立体マシーンプレス【4】アームホールのマシーンプレス【5】上衿のマシーンプレス【6】後身頃のハンドプレス【7】細腹のハンドプレス【8】全体の調整と最終プレスとなり、これがビスポークになると衿、肩、袖、胸、肩甲骨、腰回りなどの細かいクセ取りを行っているそうだが、すでにお分かりいただけていると思うが、本場のビスポーク並みのプレスを当たり前に行っているから驚きだ。それもそのはずで、講師としてビスポークテーラー ディトーズの水落卓宏さんに監修をしてもらっているからこそできるクオリティだ。

見てて実に気持ちい!服がマッサージされているような仕上げ

多くの工程をふむ仕上げの様子。自動車メーカーの生産ラインのように各部位ごとにプレスしていく。

多くのクリーニングでは洗浄・脱水で生じたシワを伸ばすという作業が行われているが、ワイシャツなどの仕上げのように、伸ばして仕上げてしまうと違った形になってしまう。逆に縮めながらプレス仕上げすることで、現状を復元する整形仕上げが必要になるそう。どんな服であっても同じやり方をしてしまっては不自然な形になったりして、仕上げにムラが出てしまう。洗いを完璧にしても仕上げ(プレス)によってクリーニングの仕上がりが大きく左右してしまう。本当に緻密な作業であり経験が大きくモノを言う世界であるが、ここではいとも簡単に行なっているように見えたが、日々行われる勉強会で技術の向上を図っているからであり、真似しようと思って簡単にできるものではない。

きちんとプレスされた服に初めて袖を通す時の優越感は、何とも言えないものがある。「ナチュラルクリーン」の仕上げの技術は、本場ビスポークに勝る一級品のクオリティであるといえよう。

人間と同じようにエステを受けてマッサージされて戻ってきた服に袖を通せば、その違いに驚かされるはずだ。洗いのプロと、仕立てのプロが組み合わさった唯一無二のクオリティを知ったら、他のクリーニングには戻れなくなるだろう。

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レザージャケットを実際にクリーニングしてもらったらここまで蘇った

とある編集の先輩が2〜30年ほど前にセレクトショップで購入したというブルーのホースレザージャケットを譲り受け長らく愛用してきたが、全体的に色褪せてきたためクリーニングを依頼することに。今回はクリーニングだけではなく、補色とシミ抜きも同時に依頼。まずはその違いを確認していただきたい。

※左がクリーニング前の写真で、右がクリーニング後の写真となります。個人の感想になります。

ホースレザーのジャケット

全体的に色褪せてしまったが元の色に合わせて補色。丁寧にブラッシクングをしてヤスリで表面をなめらかにすることで、見違えるように綺麗になった。
袖裏についてしまった赤いインクのシミも写真右のように綺麗に落とすことができた。長年放置してきたため諦めていたが、出して正解であった。袖口特有の変色も綺麗になった。
シミ抜きの様子。洗いにかける前に落とすことがコツだそう。
秘密基地のような空間は、補色を行うためのスペース。どんなレザーでも対応できるようにあらゆるアイテムが揃えられている。

仕上がった現物を手にした時にまず驚かされたのが、革が本来持つであろうハリだった。長く使い込むが故にどうしても失われてしまっていたが、これによってまた長く愛用できるようになった。補色に関しても十分すぎるほどであり、残すところはきちんと残し、補色すべき箇所をきちんと見極めているのは職人が成せる業である。

また、レザー以外にもウールなどのジャケットを依頼したのだが、着心地がとにかく軽いことに驚かされた。まるで空気を1枚纏っているかのように軽く、肌触りが実になめらかであった。素材が本来持つ質感を最大限に引き出しているのだろう。袖を通せば誰もが感動する。ただ綺麗にするのではなく、服が本来持つ魅力を十二分に引き出してくれるのが「ナチュラルクリーン」のクリーニング技術であると感じた。お気に入りの一張羅があるようであれば、是非とも依頼してみることを強くおすすめする。 

この記事の執筆者
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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