東京駅から電車で揺られること約1時間30分。目的地である千葉県君津市へ。車であればアクアラインを経由しドライブの目的も兼ねることができるし、車がなくても東京駅や羽田空港から高速バスが出ていて公共交通機関の利便性が非常に良いことに驚かされる。東京を基準にして位置情報を確認すると、遠く感じるかもしないが、意外にもアクセスは良いと感じた。

普通のクリーニング店とは訳が違う!全国から殺到する秘密

わざわざ君津まで足を運ぶ理由は何か?近場のクリーニングでも十分に事足りるのでは?と思うが、その考えはすべて払拭されることになる。今までが何だったのだろうと、知らなかったことをきっと後悔することになるはずだ。

まず目を奪われたのが店内入口だ。お客様をお迎えするお店の顔ともいうべき場所、やはりひと際洗練されている印象だった。隅々まで清掃が行き届いていて、植木の手入れや綺麗な店内が実に気持ちいい。

この日は特別に取材ということで、実際に作業を行う洗い場を隅々まで見学させてもらったのだが、アットホームな雰囲気に加えて、新築のような綺麗さまで感じた。蒸気が立ち込み、薄暗くイメージを持っていたクリーニングだったが、真逆であった。

今回お話を伺ったのは、「ナチュラルクリーン」の代表を務める中田さん。気難しい職人気質の方と思いきや、実に話しやすく人当たりの良い人物だ。商売気質な部分を見せつつも、洗うことが大好きで、本当におせっかいが好きな人だと印象を受けた。いわゆる近所にいる人のいい近所のおじさんである。自分の腕に絶対的な自信はあるが、その技術をひけらかす感じではなく「まずは安心して任せてくれ。どんなものでもきれいに洗ってみせるから」と中田さんは話す。

なぜそんなにも自信満々に言えるのか?預ける側からするとなんとも頼もしい限りではあるが、中田さんいわく「服が好きであるがゆえに、その不安な気持ちはよくわかる。だからこそ安心して任せてほしい、そのためにも一度、来店して服に対する思いを語ってほしい」と話す。

来店いただいて話を聞くことで、この服をどう洗うことが最適なのか?落として良い汚れ、ダメな汚れなど判断できる。単に事務的に洗うのではなく、個々の服の特徴に合わせた、最適なアプローチをするためにも必要なことであり、思い入れのある服、特別な服など、面倒ではあるが、まずは一度お店まで足を運んでいただきたいそうだ。

後日談ではあるが、電話で「1万円のスーツでも100万円のスーツでも同じに扱うか?」と尋ねてみたところ、「そんなの当たり前だ」と分かり切った答えが返ってきた。「素材の違いや作りの違いによって洗い方の違い方はあるものの、本質的には同等に扱うのがサービスでありクリーニングの基本である」と中田さんは話す。

例え1万円のスーツと100万円のスーツの違いを語ることはできたとしても、持ち主の大切にした思い出だけは本人にしか語ることができない。その中の見え隠れするストーリーを知ることで、洗うモチベーションにもつながるそう。今回、話を伺ってみて洗うことが本当に楽しくて仕方がないのだと感じた。

なぜそこまでするのか?理由は簡単で「楽しいから」

趣味が楽しいように、仕事が趣味である中田さんにとって「クリーニングは本当に生きがい、人生そのものである」とクリーニングに対する愛を、嬉しそうに話す。

お客様からお預かりした大切な服に対し、これでもか。というぐらい真剣に向き合っているが、それは仕上がりのときに同封されている、伝票を見ていただければわかる。持ち主しか知らない傷や汚れ、それこそ、持ち主が知らない部分のホツレや汚れなど、実によく観察している。

どうしてここまでするの?と思われるのが不思議なようで、利益を出すことよりも大切なのがあり、それはやって当然という考えがあるのだそう。単に好きなだけではなく、真摯に服と向き合い、個々の特性を理解することが、結果に結びつく。それこそ一流の技術を持っていても、個々の意識の高さが品質につながっている。

お客様にお戻しする際、完璧な状態で戻すことがクリーニングの使命であり、それこそ一流ホテルや質の良いクリーニング店がオプションとして掲げている仕上げのサービスも、ここでは全く別次元であった。

水落さんの指導による勉強会。定期的に開催することで技術のレベルアップを図っている。まるで職人街のようであり、ベテランであっても常に学ぶ姿勢には感心させられる。だからこそ、自信を持ってサービスを提供できるのである。

雑誌「メンズプレシャス」で紹介しているビスポークテーラー ディトーズの水落氏による服の監修に加えて、定期的に行われる勉強会により、アイロンのかけ方や服の特徴などを細かく学んでいる。難しい服などは洗いに入る前に相談をしているため、どんな服でも最善の方法をとることができるそうだ。

取材当日は、運よくその現場に立ち会うことができたで、様子をのぞかせてもらったが、クリーニング店のレベルを超えているのでは?と感じたほど。従業員のみなさんが水落さんに向ける視線は真剣そのもの。本場のビスポーク研修のように、ラペルの形、アームの取り方など本当に細かく学んでいる姿勢に、思わず見とれてしまった。

自動車工場のように並べられたプレスマシーン。各部位ごとによって細かく分かれている。

「他店には絶対真似することのできない洗いの技術は持っていても、服に対する知識は持ち合わせていない。服の良し悪しは判断できても本質までは見抜けない。だからこそ知ること、勉強することが必要であり、クリーニング店としての新たなる高みを目指すために、必要なことをしているに過ぎない」と、中田さんは話す。

本当の職人とは常に勉強する姿勢を崩さないこと、今ある技術に満足しないことが大切なのだと、感じさせられた瞬間でもあった。それと同時に「安心して任せてくれ」と言えるのだと。上質なクリーニングは経験がものをいう職業だとよく聞くが、今回取材をして感じたのが中田さんをはじめ、携わっているすべての従業員の皆さんの勉強熱心な姿勢や意識の高さ、おせっかいが質の高いサービスにつながっているのだと。

「洗えないものはない」と断言する代表の言葉通り、この日も他店では扱うことができない特別な服が持ち込まれていた。持ち主のストーリーに感動していたようで「正直に話すと断りたい!本当に難しいし、大変だけど、うちなら間違いなくできるから、なんとかしてあげたいじゃん!」と、子供のように無邪気に話していた。

カシミヤコートや洗うのが難しい服など、それこそ思い出がたくさん詰まったぬいぐるみなど、洗いたくて困っているものがあるのであれば、一度お店に持ち込んで、思いの丈をぶつけてみるといい。すべてを安心してゆだねることができる唯一無二のサービス、質の高さを実感できるはずだ。持ち主の思いを紡ぐクリーニング店が起こす奇跡を体験していただきたい。

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