年齢や経験を問わず、誰もが楽しむことができるボールルームダンス。日本では「社交ダンス」と呼ばれ、たくさんの方々に親しまれています。

欧米圏ではセレブリティなパーティーや格式高いパーティーになるほど、ボールルームダンスを踊る「ダンスタイム」の時間が設けられ、多くの人たちがダンスを楽しむのが常。

豪華な大型客船、きらびやかなインテリア、生演奏を聴きながらいただく料理…。そんなクルーズ旅でのダンスタイムのときにも、淑女のたしなみとして、ある程度は社交ダンスを踊れるようになっていたいものですよね。少なくとも、合わせる簡単なステップだけでも…!

社交ダンスを始めたいと考えている方のために、Precious.jpでは、その道のプロ・ダンスマガジン「AUDREY」の編集長・小鳥翔太さんにお話を伺いました。自身も社交ダンスを日々楽しんでいるという小鳥さんに、「社交ダンスの魅力」「レッスン教室の選び方やお値段の相場」「そろえるべきアイテム」「基本的なステップ」「かかる期間や始める時期」など、基礎中の基礎を教えていただきました。

■国際社会では、ボールルームダンスは「マナー」

欧米圏のパーティーによく出席される方からは、せっかくパーティーに出席して「一緒に踊りましょう」と誘われても、踊れないのは日本人だけ…という話をよく耳にします。

ヨーロッパやアメリカの方は、プロムやパーティーの場で男女がペアになってダンスを踊る機会が多いので、ボールルームダンスの経験がなくても、「なんとなく」踊れてしまうそうなのです。しかし、日本では男女が組んで踊るという機会そのものが、なかなかないですよね。

海外だけでなく、日本のクルーズやフォーマルなパーティーに出席しても、せっかくのダンスタイムに踊れないのはとてももったいない。正確に踊れる必要はなくて、男性のリードを受けてついていけるだけで、十分ダンスタイムを楽しむことができますよ。

「何か踊りを踊ってみたかったから」が始めたきっかけ

僕が最初に社交ダンスを始めたきっかけは、何か身体を動かすことがしたい、それならダンスかなと思ったときに、たまたま近所に社交ダンス教室があって。体験レッスンで踊ってみたらとても楽しかったので、そこから教室に通うようになりました。ダンスを踊るということ自体初めてでしたし、ほかに何か運動をしていたわけでもないのですが、ふとした思いつきがきっかけで、今までずっと社交ダンスを楽しめています。

■社交ダンスならではの3つの魅力

社交ダンスには、ほかのダンスとは違う、こんな魅力的な点があります。

■1:男女がペアになって、お互いを感じて、呼吸を合わせながら踊るたのしさ

社交ダンスの最大の魅力は、男女がペアになって「2名」で踊ること。最初は慣れるまで時間がかかるかもしれませんが、男性が女性をエスコートし、女性はそれに答える。互いにサポートし合って踊っていくことが、社交ダンスの最大の魅力でもあります。また、日々それを意識して踊ることで、自然と異性への上品なマナーも身につきます。

■2:ダンス種目が多様

社交ダンスと一言でいっても、10種類以上の踊りの種目があるのですが、種目によってそれぞれ特徴があるので、見ていても、踊っていても飽きがきません。曲調も違えば、踊り方もステップも違うので多様性があり、それが社交ダンスを長く続けていても飽きない、ひとつの大きな理由かもしれませんね。そのときの気分で好きなダンスの種目も違いますし、その日の気分に合わせて踊る種目を変えられるのも楽しいですよ。

■3:クローゼットに眠っている、美麗なドレスたちの見せ場に

イブニングドレスなど、煌びやかなお洋服は持っているけれど、着ていく場所がない、見せる場所がない、いいと思う服を集めていったら、溜まっていってしまった…。そういう方たちにとって、ダンスパーティーはまたとないドレスの見せ場です。ドレスを着てパーティーに出ていくことで、若さを保つモチベーションにもつながります。また、社交ダンス=専用の服装、といったものはないので、ご自身の持っているパーティドレスで自信をもって臨んでほしいですね。

クルーズパーティーでのダンスタイムを目標にステップをマスターしたい、旦那さまとの趣味にしたい、交友関係を広げたい…。何かをきっかけに社交ダンスに興味を持った方に、ぜひ社交ダンスを体験していただきたいです。

■レッスン教室の探し方は?

社交ダンスの教室、日本にどのくらいあると思いますか? 答えは「数えられないくらいたくさん」。たとえば東京都の23区内なら、各駅にひとつはダンス教室があるほどです。そこでは個人レッスン・ペアレッスン・団体レッスン・サークルなど、さまざまな形式のレッスンが行われています。各教室ごとに、趣向を凝らしたレッスンが行われていますので、まずは自分が通いやすい、沿線の教室を探してみてください。

それぞれのレッスンの大まかな特徴としては、以下のとおりです。

■1:個人レッスン、ペアレッスン

個々のペースに合わせてレッスンを進めていくので、初心者の方も安心して通うことができます。

■2:団体レッスン、サークル

個人レッスンよりも安価にダンスを楽しむことができます。多くの場合、複数の生徒が参加するレッスンであるため、ダンス仲間を増やしたい場合は、団体レッスンやサークルがよいかもしれませんね。

家から教室までの近さや値段も大切ですが、もし長く続けていきたいのであれば、自分に合った教室をきちんと選ぶこと。また、社交ダンスは2名で踊るものなので、担当する先生の性格や雰囲気は、とても大切。一度通ってみて「ちょっと違うかも」と思ったら、教室を変えてみる勇気も必要です。

社交ダンスを楽しめるかどうかは、踊る相手によって大きく変わると言っても過言ではありません。せっかく習うなら、自分がカッコいい、素敵と思える先生がよいのではないでしょうか。もちろん外見だけでなく、その先生の「雰囲気や踊り方」を見て判断していただくとよいと思います。

あとは優しいとか気配りが細やかとか、気持ちよく踊れる環境づくりをしてくださる先生だと、うれしいですよね。逆に性格的に気に入らない部分が多いと、教室に通う事すらおっくうになってしまうので、気をつけていただきたいです。当たり前ですが、千差万別、本当にさまざまな性格の先生がいます。幸いほとんどの教室で無料体験レッスンを行っているため、複数参加をしてみて、自分に合っていると思う先生を見つけるのが最良です。

■レッスンに通う頻度はどれくらい?

レッスンに通う頻度は、週に1~2回が理想的だと思います。なかには毎日何時間もレッスンに通っているという方もいらっしゃいますが、正直、時間的にも金銭的にも大変だと思います。逆に月1回くらいのペースだと、ステップを思い出すだけでレッスン時間が終わってしまいます。習い初めは週1~2回で通うことができればよいのではないでしょうか。そのくらいのペースであれば、わりと前回の内容を忘れずに、レッスンに臨むことができると思います。また、最初は単純に身体を動かすことが楽しいので、今何も運動や習い事をしていない方でも、きっと週2回程度なら、苦にならないと思います。

■レッスンのお値段の目安は?

先生や教室ごとにレッスンの値段は違いますが、個人レッスンだと2レッスンで4,000円~15,000円程度になると思います(2レッスンは約50分。1レッスンだと時間・料金共に半分ですが、団体レッスンと値段を比較するため、時間を合わせています)。

このように記載すると値段の幅に驚くと思いますが、この値段は先生のダンスのクラスやレベルによって、変わってくる場合が多いです。プロになりたてのダンサーは安いですし、全日本チャンピオンなどトップの選手はそれなりに、という傾向があります。もちろんチャンピオンクラスのダンサーたちのレッスンは、高額な値段に見合う格別なものであると保証できますので、本物を求めるのであれば値段の多少に捉われず、検討したほうがよいと思います。

また、団体レッスンではぐっと値段が下がって、1回のレッスンで1,000円や1,500円くらいが相場だと思います。これも各教室によってさまざまですが、月謝制のところだと月に5,000円~10,000円くらいのところが多いですね。

■社交ダンスに必要なアイテムと、その価格は?

社交ダンスを始めるときの服装は、もちろん社交ダンス専用のウェアやスカートが望ましいですが、最初はTシャツやズボンなどの動きやすい服装で構いません。なかには、ご自分がお持ちの素敵なワンピースやイブニングドレスを着てレッスンされる方もいらっしゃいます。

どんな服装でも構わないのですが、男性と組んで踊るダンスのため、「素敵な服装でお洒落をしていきたい」という気持ちの女性は多いですね。

■ドレスやシューズはどこで?

最近はインターネットで安価な衣装を販売しているショップも多いのですが、あまり安いと物がよくないので、届いたときにガッカリしたり、すぐに使えなくなってしまう事が多いので注意が必要です。

できれば実店舗を持つ「チャコット」や「タカダンスファッション」、「ジャンティ」、「チョイスロンドンジャパン」など、社交ダンスの専門店で実際に商品を見て、試着することをお薦めします。

上記のようなダンス専門店は、トップスで1~2万円、スカートで2~4万円、ワンピースドレスが8~12万円といった価格帯のアイテムが多いです。少しお値段が高いものもありますが、踊りやすさやラインの美しさを求めるのであればぜひ専門店のウェアを着用していただきたいと思います。社交ダンスは動いたときの美しさがとても重要な要素となりますから。

また、ご自身の好きなブランドのドレスを着ている方もいらっしゃいます。ラグジュアリーブランドのドレスは、シルクなどのしなやかな素材でできているものが多いので、ダンスをしたときにも動きやすそうです。

最後にシューズですが、社交ダンスは「スタンダード」と「ラテン」というふたつのジャンルに分かれていて(次回詳しく説明します)、ダンスシューズも「スタンダードシューズ」と「ラテンシューズ」があります。踊ってみたい種目が決まっているのであれば、どちらか専用シューズを購入されるとよいと思います。もしどちらのジャンルが良いかわからない場合は、「スタンダード&ラテン兼用」というシューズもありますので、そちらから始めてみてもいいですね。シューズの値段は、いずれのシューズも1~2万円位が相場です。

シューズも安価なものがネットで販売されていますが、ウェアと一緒で、あまり安いものだとすぐにダメになってしまいます。シューズは本当に大事なので、必ずお店で何足か履いてみて、自分の足に合ったものを選んでください。

■知っておきたい! 社交ダンスの種目

社交ダンスは大きくふたつの種類に分かれています。

■1:スタンダードダンス

洗練されたエレガントで優雅な踊りで、ワルツ、タンゴ、スローフォックストロット、クイックステップ、ウィンナワルツの5種目です。

■2:ラテンダンス

キューバやブラジルなどの、ラテンアメリカと呼ばれる国々から生まれた情熱的なダンスで、ルンバ、チャチャチャ、サンバ、パソドブレ、ジャイヴの5種目が挙げられます。

スタンダードの5種目、ラテンダンスの5種目を合わせた10種目が、競技会の公式種目として競われます。また、競技以外で踊られる「パーティーダンス」と呼ばれる、初心者の方向けの簡単なダンスもあります。

スタンダードとラテンの大きな違いをひと言でいうと、男女が向き合って組んだまま踊るのがスタンダード向かい合ってホールドするだけでなく、ときには離れたりと変化があるのがラテンです。

競技会での衣装も異なる点のひとつです。スタンダードのときには、男性は燕尾服、女性はロングドレスを着用します。ラテンの服装は自由なので、比較的露出度が高い服を着ている方も多いですね。

紳士淑女の方は、スタンダードの中でも「ワルツ」など、優雅な音楽に合わせてゆったりと踊れるダンスを好む方が多い印象があります。

■年末のクルージングでのパーティー、何を踊れるようになっておけばいい?

最初はステップを覚えることよりも、「男女がペアで踊ること」「組みながらふたりで動くこと」を体感して、それに慣れるということがとても大切です。「リード&フォロー」というのですが、男性のリードに対して女性がフォローをできるようになると、ステップがわからなくても男性に合わせて踊ることができますよ。

パーティーでは、ワルツ、タンゴ、ルンバなど、さまざまな種目の音楽が順々にかかります。何のステップをどこまで覚えておけば…という決まりごとは特にないのですが、最低限の「ベーシックステップ」を覚えておけば安心です。これは、教室の初期の授業で習うことができます。

■パーティーのどれくらい前から始めたらいい?

クルーズ旅行に行くのであれば、半年くらい前から始めることをオススメします。もちろん、習っている期間が長ければ長いほど慣れるので、この7月から始めれば、年末のパーティーまでには十分踊れるようになっていると思いますよ!

目標を持ってしっかり半年間、習う事ができるのであれば、ワルツ、タンゴ、ルンバ、チャチャチャに加えて、パーティーダンスであるジルバ、ブルースの6種目くらいは音楽に合わせて踊れるようになっていると思います。この6種目の基本的なステップを覚えておけば、パーティーでどんな曲がかかっても、大体は踊ることができると思います。

■どんな服装でパーティーに行ったらいい?

せっかくのパーティーに出席するのですから、ドレスもアクセサリーもヘア&メイクも整えて、思う存分お洒落して向かいましょう! 普段とは違う、煌びやかな世界に思い切り飛び込む気持ちで出かけましょう。パートナーとなる男性は、とびきりのスーツにネクタイでビシッと、正式な場所ではタキシードと蝶ネクタイを着用していることも多いです。

ダンスタイムのときには、普段レッスンで履いているダンスシューズを持って行き、その場で履き替えることをおすすめします。普通の靴だと踊りづらいですし、ダンスシューズはどんなドレスにも合うようにつくられている、ファッション性の高いデザインが多いからです。

■社交ダンスは、健康や若さにもつながる!?

社交ダンスは優雅な見た目ですが、それ以上にとても運動量が多いダンスです。手足だけでなくお腹や背中も目いっぱい動かし、普段の生活では使わない筋肉をたくさん使うので、筋力アップやシェイプアップにもつながります。また、身体を伸ばして踊るので、ストレッチ効果もありますね。自分の体力の無理のない範囲で行うことができるスポーツとして継続していくことで、確実に健康につながっていくと思います。

そして何より、社交ダンスは姿勢を整えることができます。最近はデスクワークのお仕事や、スマートフォンの使用で肩が内側に入り込んでしまっている方が多いのですが、気づかないうちにずいぶん姿勢が悪くなっていらっしゃいますね。姿勢が良くすっきりと立っているだけで若々しく見えるし、身体にもいいことは間違いありません。

もうひとつは、異性のパートナーと意思疎通を図って踊ったり、周りの人にも「見られている」という意識のなかで踊るので、社交ダンスをやられている女性は、自分磨きや美容にも気を使う方が非常に多い印象です。内面的な気のもちようから始まり、結果的に外見も磨かれるという、好循環の「アンチエイジング効果」もあるのだと思います。

そして、複数の種目やステップを覚えるために頭も使うので、ぼけ防止にもつながります。

社交ダンスをやってる女性の方は、実年齢よりも確実に5~10歳は若く見えて、実際の年齢を聞いて驚くことが多いです。筋力&シェイプアップ、ストレッチ効果、アンチエイジング、ボケ防止…社交ダンスをやられている方が心身共に若くいられる秘訣は、これらの要素が立体的に絡み合った結果にあると思います。

生涯楽しむことができる趣味としても、ぜひ社交ダンスを一度、踊っていただきたいです。

以上、ダンスマガジン「AUDREY」の編集長・小鳥さんに社交ダンスの基礎知識について、教わりました。

パートナーとふたりで踊ることの楽しさはもちろん、普段クローゼットに眠ってしまってるドレスを着て「美しさ」を追求しながら踊ることで、より華やかな自分に出会うことができます。また、レッスンやパーティーのなかで出会う人との交友関係が広がっていくのひとつの魅力。レッスンの日以外にも、日々の生活がより生き生きと、輝かしくなっていくことと思います。クルーズなどのパーティーで踊りたい、趣味を増やしたい、健康のために始めたい…。あなたの目標が頭に浮かんだら、さあ、社交ダンスを始めてみましょう。

監修者PROFILE
小鳥 翔太(おどり・しょうた)さん
新潟県上越市出身。Webサイト「ダンスマガジンAudrey」編集長、ダンスイベントプロデューサー。週刊少年ジャンプにて掲載されていた社交ダンス漫画「背すじをピン!と~鹿高競技ダンス部へようこそ~」や、宝塚歌劇×社交ダンスの舞台「FOCUS」をはじめ、数々の企画にてディレクターを務める。また、プロバスケットボールチームとコラボしたイベント「Shall we ダンク?」や社交ダンス未経験者へ向けた体験型ダンスイベント「ダンスパーティーAudrey」の開催、社交ダンサーをモデルとしたカレンダー「社交男子」&「社交女子」の出版など、ダンス界の外へ向けた企画を次々とプロデュースし、社交ダンスの普及活動に尽力を続ける。
ダンスマガジンAudrey
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
クレジット :
構成/サワダユキコ