メルセデス・ベンツから初めてBクラスが登場したとき、そのネーミングに格の差(プロ野球・ペナントレースの「Bクラス」みたいな)を感じ取った人は少なくなかった。だが、そんな思いとは裏腹に、優れた実用性とメルセデスらしい味でBクラスは人気を呼ぶ。新型はさらにスタイリッシュになり、プレミアムな乗り味も高められている。

他社が真似しようとしても出来ない、独特の感覚

全長4430ミリ、全幅1795ミリ、全高1550ミリ。
全長4430ミリ、全幅1795ミリ、全高1550ミリ。
フロントマスクまわりはAクラスとの関連性を感じさせる。
フロントマスクまわりはAクラスとの関連性を感じさせる。
キャラクターラインに頼らず面の表情で個性を演出。
キャラクターラインに頼らず面の表情で個性を演出。

 50年前の1969年が「カウンターカルチャー」の年だとしたら、クルマのカウンターカルチャーはハッチバックだった。セダンやステーションワゴンというオーソドクスなクルマが「大人」の象徴なら、精神を含めて「若いひと」はハッチバックを選んだ。

 1974年にフォルクスワーゲンがゴルフを発表したとき、トランクをもたない車型、作りの品質の高さ、走りのよさなど、あらゆるところが新鮮だった。2019年6月に日本発売されたメルセデス・ベンツの新型Bクラスは、ハッチバック文化の正統な後継車といえるかもしれない。

 4代目になる新型Bクラスとして、まず発売されたのは「B180」だ。1.4リッター4気筒ガソリンエンジン搭載の前輪駆動と、これだけ書くと、ハッチバックの文法を守った、まっとうなモデルである。

 ただしドライブフィールのよさは体験しないとわからない。100kW(136ps)の最高出力と、200Nmの最大トルクを持つエンジンには、7段ツインクラッチ変速機が組み合わされている。なにも知らずに乗れば、エンジン排気量を当てるのは難しいだろう。それほど力がある。

 とりわけ「ダイナミックセレクト」というドライブモードセレクターで「スポーツ」モードを選択すると、やや高めのエンジン回転が維持されるなど、きびきびと走る、このクルマの持ち味をよりよく味わうことが出来ると思った。

 ステアリングホイールを切ったときのフィールは、まるで後輪駆動のメルセデス・ベンツのセダンのような、ゆっくりと車体が傾いていく、とてもいいものだ。他社が真似しようとしても出来ない、独特の感覚が前輪駆動車でも味わえる。

増えすぎたSUVへのカウンターカルチャーのよう

写真のモデルは、オプションの「AMGライン」に加えて「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」を装着。
写真のモデルは、オプションの「AMGライン」に加えて「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」を装着。
後席もおとな2人に充分なスペースが確保されている(「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」装着車)。
後席もおとな2人に充分なスペースが確保されている(「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」装着車)。
こちらは「レザーエクスクルーシブパッケージ」装着の後席。
こちらは「レザーエクスクルーシブパッケージ」装着の後席。

 4430ミリの全長は基本プラットフォームを共用するAクラスより10ミリ長いだけで、2730ミリのホイールベースは同一だ。全高は、Aクラスより130ミリ高い1550ミリなので、少しSUV的なイメージがある。

 でもSUVより車高は低く、市街地に多いタワー式駐車場も使える。Aクラスよりしっかりした乗り味を持つように感じられたB180に乗っていると、増えすぎた感のあるSUVに対するカウンターカルチャーのようにも感じられた。

 いまもハートが若いひとなら、SUVに流れずに、Bクラスという選択は大いにアリではないだろうか。ハッチバックでこれだけクオリティの高いモデルが作れるメルセデス・ベンツの技術力に感心させられる。

 価格は「B180」が355万5556円(税抜き)で、8パーセントの税込みだと384万円だ。2019年秋に導入される予定の2リッターディーゼル車「B200d」は383万6364円(同)で、消費税が10パーセントに上がった場合、422万円となる。

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この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。
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