女にとってもそうだが、男にとってもパリはやはり、特別なオーラを放つ都市だ。本来、ダンディであるということは、生活のにおいや、働くための労働などから隔絶した、特権的な振る舞いを許される者のみが持つ審美眼と同義であった。欧州の文化的首都として長きにわたり君臨してきたパリには、そのようなダンディズムの系譜がある。そして、現代のパリにもなお、そのエッセンスを色濃く残すエレガントなブランドが存在する。イタリアやイギリスにはないエレガンスを身につけることで、男のファッションはさらに美しく昇華できることを、12のパリ・ブランドが教えてくれるのだ。

モロウ・パリのバッグ
現代的なトートバッグに、迫力の古典的ディテールを融合!

雑誌『MEN'S Precious』2015年冬号でも紹介した、19世紀初頭創業の老舗ラゲッジブランド「モロウ パリ」。創業時からのアイコンを使ったモノグラム柄トートは、4回にわたってプリントを浸透させた極上のカーフや、レザーを3枚貼り合わせて磨きをかけたハンドルのコバ、極太ステッチなど迫力満点のルックスに心奪われる。洒落たポーチも付属。

バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター ¥280,000(〈モロウ パリ〉
バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター ¥280,000(〈モロウ パリ〉

ルリスのネクタイ
「パリの色彩」を凝縮した芸術的な7つ折りタイ

パリの名店「アルニス」のDNAを受け継ぐ唯一の男、ドミニク・ルリス氏が手がけるブランド「ルリス」。こちらの代表作が、芯地をほぼ使わず7つ折りで仕立てたネクタイだ。そのエレガントな柄ややわらかな生地、そして小剣の配色を変えたエスプリには、1930年代のアーティストを彷彿させる美学が充満している。

ジェネラル バス 各¥23,000〈ルリス〉
ジェネラル バス 各¥23,000〈ルリス〉

アラン ミクリのアイウエア
個性を堂々と主張するパリジャン御用達アイウエア

1978年にパリで創業し、デザイナーズアイウエアという概念を確立した「アラン ミクリ」。抑揚に富んだフォルムや、カラフルなアセテート生地を重ねたフレームは、ただひたすらに美しい。

サングラス 写真上¥50,000・写真下¥40,000(ミクリ ジャポン〈アラン ミクリ〉)
サングラス 写真上¥50,000・写真下¥40,000(ミクリ ジャポン〈アラン ミクリ〉)

カミーユ・フォルネのレザーグッズ
知的な色気漂う素材のコンビネーション

時計ベルトで名高いが、実はレザーグッズ全般に卓越した技術を誇るブランド。プラムのような色味のグレインレザーにアリゲーターを配するセンスは、ほかの国からは決して生まれてこない。

ウォレット・カードケース ¥70,000(カミーユ・フォルネ ジャポン
ウォレット・カードケース ¥70,000(カミーユ・フォルネ ジャポン

コルテのシューズ
トレンドなど超越した、圧倒的な芸術性

ヴァンドーム広場近くに工房を構える注文靴メーカー「コルテ」。その嗜好性の高い作風は、既製靴でも変わらない。トウの中央を突起させたギリー風プレーントウ(左)や、ブルーの色ムラが美しいアッパーとデニム風ファブリックとのコンビ(右)など、官能的なまでのデザインに魂を鷲摑みにされる。それでいてはき心地は抜群だからまた驚きだ。

写真左¥253,500・写真右¥243,500 メゾン コルテ青山
写真左¥253,500・写真右¥243,500 メゾン コルテ青山

ゴヤールのツールボックス
19世紀のトランクを、そのままサイズダウン!
男ならあえてハードに使いたい

モノグラムのトートバッグで名高い「ゴヤール」だが、ルーツは19世紀にサントノレ通りで創業したトランクメーカー。その真骨頂と最高のステイタスは、やはり「箱物」にある。今でもポプラ材のフレームにキャンバスを貼り、鋲や錠前を打ち込むという、19世紀となんら変わらぬ製法でそのトランクはつくられているのだ。写真の鞄は幅29.5×高さ12×奥行き14.5㎝という、コンパクトサイズ。男なら、あえて工具入れにするなど、ハードに使い込んでも面白い。

¥695,000 ゴヤール ジャパン
¥695,000 ゴヤール ジャパン

モワナのトートバッグ
ラグジュアリーメゾンの真打ち、日本に上陸!

ショップのあるサントノレ通り付近に小さなアトリエを構える、フランス最古のトランクメゾン「モワナ」。今春日本初となる待望の常設ブティックを開店し、わが国でも入手しやすくなった。こちらは定番のキャンバストートで、裏地にパリ店のアーカイブフォトがプリントされている。

¥193,000 ステップ インク〈モワナ〉
¥193,000 ステップ インク〈モワナ〉

ギベールの乗馬アイテム
新たなる名門ブランド、誕生の予感!

凱旋門近くのビクトル・ユーゴー通りに本店がある、新進気鋭の馬具ブランド「ギベール」。レザーの調達からなめし、縫製にいたるまですべてフランスでつくられたその馬具は、やわらかな飴色のカーフといい、緻密な縫製といい、すでに一生モノの風格を漂わせている。本国ではバッグや革小物にも力を入れているらしいので、その動向には注目していきたい。

鞍¥700,000~※オーダー価格・長鞭¥38,000(日本橋三越本店〈ギベール〉)
鞍¥700,000~※オーダー価格・長鞭¥38,000(日本橋三越本店〈ギベール〉)

シャルべのシャツ&タイ
パリの美的センスを、その素肌にまとって

ヴァンドーム広場にある1838年創業のシャツ店「シャルべ」。支店を一切持たず、パリが認めたパートナーだけが販売を許されるという、誇り高きビジネスを長年貫いている。その中間色を多用した可憐な色彩哲学は、美術工芸品としての鑑賞に堪えうるほどである。

シャツ・タイ・ボウタイすべて日本橋三越本店〈シャルベ〉。上/シャツ¥50,000・タイ19,000 左/シャツ¥53,000・ボウタイ¥21,000 右/シャツ¥53,000・タイ¥24,000(日本橋三越本店〈シャルベ〉)
シャツ・タイ・ボウタイすべて日本橋三越本店〈シャルベ〉。上/シャツ¥50,000・タイ19,000 左/シャツ¥53,000・ボウタイ¥21,000 右/シャツ¥53,000・タイ¥24,000(日本橋三越本店〈シャルベ〉)

ケンジロウ スズキのスーツ
現代最高のフレンチスーツは日本人によって仕立てられる!

パリ8区にアトリエを構える、フランスのテーラリング業界で最高峰の技術を誇るテーラー、鈴木健次郎氏。体と服の間に空気の層を入れるという哲学によって仕立てられる彼のジャケットは、一見シャープなのにゆとりを感じさせ、実にエレガントだ。

¥900,000~※オーダー価格 和光〈ケンジロウ スズキ シュールムジュール パリ〉
¥900,000~※オーダー価格 和光〈ケンジロウ スズキ シュールムジュール パリ〉

フォレル パージュのレザーグッズ
王族御用達の鉄砲工をルーツに持つ、新しき老舗に注目せよ

1717年創業の鉄砲工として、ルイ16世やナポレオン1世にも贔屓にされた「フォレル パージュ」。その後狩猟用バッグやケースの生産を経て、近年ラグジュアリーブランドとしてリニューアル。エカイユ(うろこ)をモチーフとしたアイコン入りのバッグが、早くもパリジャンの間で話題となっている。ピストル型のポシェットは、キーケースとして使いたい。

クラッチバッグ¥71,000・ポシェット¥35,000(キャンディ〈フォレル パージュ〉)
クラッチバッグ¥71,000・ポシェット¥35,000(キャンディ〈フォレル パージュ〉)

コーランクールのシューズ
パリジャン御用達シューズは普段着のラグジュアリー!

貴族の血を引くディレクター、アレクシー・ラフォン氏が2006年に創業した、パリの靴店にしてブランド「コーランクール」。地元客に愛されるその靴は、美しいパティーヌが施されてはいるが、どこかカジュアルで親しみやすい雰囲気だ。

右¥87,000・下¥113,000(ジェネ ラル バス〈コーランクール〉)ジェネラルバス〈コーランクール〉
右¥87,000・下¥113,000(ジェネ ラル バス〈コーランクール〉)ジェネラルバス〈コーランクール〉

※価格はすべて税抜です。※価格はすべて2016年夏号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
TEXT :
山下英介 MEN'S Preciousファッションディレクター
BY :
MEN'S Precious2016年夏号「この力強さを見よ!新しきパリのダンディズム」より
MEN'S Preciousファッションディレクター。幼少期からの洋服好き、雑誌好きが高じてファッション編集者の道へ。男性ファッション誌編集部員、フリーエディターを経て、現在は『MEN'S Precious』にてファッションディレクターを務める。趣味は買い物と昭和な喫茶店めぐり。
クレジット :
撮影/小野祐次、宮本敏明 構成・文/安田薫子 構成/山下英介(本誌)