ウィンザー公は服飾史におけるレオナルド・ダ・ヴィンチのような人物だ。ウィンザーノットやウィンザーチェックなど、公の名を冠した服飾用語がいくつもあるだけではなく、ダブルモンク靴を考案したり、スエードの靴をスーツに合わせたりと、公によって世に広まったスタンダードは数知れない。
なかでも、今日のスーツスタイルに最も影響を与えたのがパンツのすそをダブルにすることだろう。そのルーツを辿ると、ウィンザー公が雨の日、パンツが汚れるのを避けるためにすそを折り返して姿を現したことが民衆の目に留まり、流行したといわれている。それが現在に定着したのはなにゆえか。日本を代表するビスポーク・トラウザーズ職人の尾作隼人さんに意見を求めたところ、このような答えが返ってきた。
ダブルの裾はなぜ、クラシックのスタンダードになった?
「当初は型破りだったダブルがここまで一般化した理由は、そこにスーツを美しく見せる実利があったからでしょう。ダブル仕上げにすると、すその重さが増して生地がきれいに落ちるため、シルエットが美しく出ることに加え、厚みがあるため、ペラペラせずに安定感が増します。また、パンツの先端であるすそにエッジが効いた印象になり、全体のバランスがよく見えるのです。実際に私も、ハウススタイルとしてほぼすべてのパンツをダブルにしています」
スーツスタイルを一段と美しく見せる大発明、はたして公本人はこれを計算で生み出したのであろうか?
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- MEN'S Precious編集部
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