MTとご無沙汰でも心配無用!
円熟を極めたフェアレディZの魅力

1990年代半ばから2000年代前半にかけて、国産メーカーから伝統ある車名が次々と消えていった。車台の共有化、あるいは単なる車種整理で消えていったクルマもあれば、モデルチェンジを機にイメージを一新する意味で車名を変更するケースもあるが、そうした傾向が高まるにつれて、むしろ馴染深い車名に愛着を感じてしまう。たとえば、今年生誕60周年を迎えた「スカイライン」。

国産スポーツカーの金字塔

初代(S30型)は1969~78年に販売された。写真のモデルは2.4リッターエンジンを積む「240Z」。
2代目(S130型)は1978~83年に販売。国産車で初めてTバールーフ付きを揃えた。

スポーツモデルの「GT-R」は独立したモデルとなり、13代目となる現行モデル(V37型)のスタイリングを見ても、歴代モデルとの共通点は丸型のテールランプくらいだ。それでも「スカイライン」であると納得できるのは、4ドアでありながらスポーティ感を強調した躍動感あふれるデザイン、そして先進的かつ走る楽しみを追求したパフォーマンスのおかげである。そして日産には、「スカイライン」に匹敵する“伝統銘柄”がもうひとつある。スポーツカーの「フェアレディZ」だ。

80年代らしい直線的な意匠も盛り込んだ3代目Z(Z31型・1983~89年)。大柄になり、エンジンもよりパワフルに。
デザインがロングノーズ&ショートデッキ路線からワイド&ローへと変貌した4代目(Z32型・1989~2000年)は、初代と並ぶ名デザイン。写真は優雅なコンバーチブル。

今も色褪せぬ美しいスタイリング

現行モデルは6代目に当たる。後ろ斜めから眺めたときの美しさは格別! 写真のモデルはバージョンST(以下同)。

1960年、オープンスポーツカー「ダットサン・スポーツ」の進化形として初めて「フェアレディ」の名が付けられ(当時の表記は「フェアレデー」)、1969年に初代「フェアレディZ」(S30型)が誕生。優美な流線形のフォルムに実用的なスポーツエンジンを搭載した初代Zは日本のみならず北米で大ヒット。以降、2座モデルと2+2モデルという“伝統”は4代にわたって継承された。現行モデル(Z34型)は2008年に登場し、2座のみの設定。先代よりもホイールベースを10㎝短縮したフォルムは力感にあふれ、リアエンドに向かって傾斜するファストバックスタイルが実に美しい。登場から9年を迎え、さすがにインテリアのデザインに古さを感じるものの、街を行けば注目を浴びるだけの魅力は十分に備わっていて、その点は欧米のスポーツカーにも決して負けてはいない。

エンジンは排気量が3.7リッターあるため低速トルクが太く、MTでも乗りやすい。

紳士が優雅に乗るための装備が満載!

ダッシュボードに並ぶサブメーター(ひとつは時計)が往年のZを思わせる。質感に欠けるのはやむなしか。

スポーティな乗り味も健在だ。過給器なしで336PSを絞り出す3.7リッターのV6エンジンは低速トルクもたっぷりで、6MTを駆使してワインディングロードを駆けるのがなんとも楽しい。ちなみにトランスミッションはATも選べるが(一部グレードを除く)、MTの場合、シフトダウン時にエンジン回転数を一瞬高めてギアと同期させて、クラッチをつないだときにショックが出ないよう制御する「シンクロレブコントロール」が装備されているので、MTが苦手なドライバーでも上手に走れてしまう。そのうえ、アクセル操作やエンジン回転数に応じて力強いエンジンサウンドを聞かせる「アクティブ・サウンド・コントロール」もオプション設定され、五感を刺激するスポーツドライビングが満喫できる。スポーツ性能を重視するのなら、とびきり硬派な「フェアレディZ NISMO」を選ぶ手もあるが、普段使いと高速クルージングが中心で、気分転換するときだけ攻めたいという紳士には、快適性とパフォーマンスがバランスよく味わえる「バージョンST」がベストだ。そろそろ後継モデルの情報が出てきそうな気配もあり、次世代を待つのも悪くないが、クルマは今も昔も「乗りたいときが買いどき」である。日産が大切に育てきた名車の、円熟の極みをご堪能あれ!

バージョンSTのシートはスエード調ファブリック。黒もあるが、写真のような華やかなカラーを選ぶとラグジュアリーな雰囲気が高まる。

〈日産・フェアレディZ バージョンST〉
全長×全幅×全高:4260×1845×1315㎜
車両重量:1540kg
排気量:3696cc
エンジン:V型6気筒DOHC
最高出力:336PS/7000rpm
最大トルク:365Nm/5200rpm
駆動方式:2WD
トランスミッション:6MT/7AT
価格:499万6080~510万4080円(税込)
問い合せ 日産自動車  TEL:0120-315-232

この記事の執筆者
TEXT :
櫻井 香 記者
2017.7.12 更新
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。