アウディというブランドを象徴するひとつが、フルタイム4WDの「クワトロ」。より遠くへ行くことを可能にするクルマづくりは、欧州の人々の間に流れる「征服への渇望」も関係しているのかもしれない……。そう論じるのは、ライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏。アウディの良さを凝縮したQ8のリポートをお読みいただこう。

リムジン並みの広さをもつドライバーズカー

全長4995ミリ、全幅1995ミリ、全高1705ミリ。
全長4995ミリ、全幅1995ミリ、全高1705ミリ。
縦バーのグリルが新しいアウディのアイデンティティ。
縦バーのグリルが新しいアウディのアイデンティティ。

欧州人は“征服”という概念を好むようだ。自動車でいえば、耐久レースやラリーが好まれるのも、困難な土地を走るぬくことを、そこを征服したという満足感に変えられる価値観ゆえかもしれない。

SUVは、遠くへ、高くへ、など、クルマの可能性を追究する欧州人の志向性を強く反映している。アウディは好例で、フルタイム4WDの「クワトロ」とともに、数かずのSUVを送り出してきた。

2019年7月に日本発売が開始された「アウディ Q8」は、そんなアウディのクルマづくりの最新の成果である。

Q8の特徴をひとことで表現すると、パーソナル性の強さにある。Q7と比較すると、全長で少し短く、全高が低い。ボディもリアウィンドウの傾斜角が強めで、アウディが主張する「クーペ的」スタイルが理解できる。

短いとはいえ、ホイールベースは2995ミリもあり、全長だって4995ミリもある。スタイル的にはドライバーズカーを強調していても、室内は広く、後席空間もリムジンなみといってよい。

後席シートは前後に100ミリもスライドするので、荷室の容量は大きい。パーソナル性という概念を、自分の好きなことが出来る、と解釈してみると、Q8でなら、ゴルフからキャンプまで、出来ることはとても多いので、その意味でも、使い勝手が高いといえる。

重さを感じさせないダッシュ力

写真はS-lineモデル。
写真はS-lineモデル。
S-lineには 285/40R22タイヤが装着される(標準は275/50R20)。
S-lineには 285/40R22タイヤが装着される(標準は275/50R20)。

搭載されるエンジンは250kW(340ps)の最高出力と500Nmの最大トルクを発生する3リッターV型6気筒。これに4WDのセンターディファレンシャルギアが機械式となる(本格的な)クワトロシステムが組み合わされている。

車重は2.1トンだけれど、静止から時速100キロに達するまでに要する時間は5.9秒というだけあって、アクセルペダルを踏み込んだときのダッシュ力は印象的だ。大きな車体を意識させないほど。

かつ、高めの速度でのコーナリングのよさも特筆ものだ。車体は安定していて、そして速い。

乗ったクルマが電子制御ダンパー(オプション)を備え、かつコーナリング中にブレーキコントロールで高いライントレース性を実現するトルクベクタリングシステムを備えているせいもあるだろう。スポーツセダンのような速度感が堪能できる。

インテリアもアウディ渾身の作りだ。計器盤にひとつ、あとふたつの液晶モニターがダッシュボード中央に据え付けられ、インフォテイメントやエアコンなど、ほぼすべての操作が指先で行える。

スイッチ類をダッシュボードからなくしたぶん、レザー、ウッド、メタルといった素材による品質感が強調され、上質な雰囲気が演出されているのだ。各部の手触りも考えぬかれていて、アウディのよさが凝縮されていると感じた。

昨今はクーペライクなスタイルがトレンドだ。SUVでも都会的な雰囲気を重視するひとには、いい選択になりうるモデルである。

リアシートは左右べつべつに前後100ミリのスライドが可能。
リアシートは左右べつべつに前後100ミリのスライドが可能。

【アウディ Q8 55 TFSI Quattro debut package S line】
ボディサイズ:全長4,995×全幅1,995×全高1,690㎜
駆動方式:4WD
トランスミッション:8速AT
エンジン:2,994cc V型6気筒DOHCターボ
最高出力:250kW(340PS)/5,200~6,400rpm
最大トルク:500Nm/1,370~4,500rpm
価格:¥10,200,000(税抜)

問い合わせ先

アウディ

TEL:0120-598106

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この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。