近頃のトレンドである「クーペSUV」は実用的なじゃない、という声は確かにある。だが、そもそもクロスカントリー4WDの時代から、本当に道なき道を走る人は少数派だったではないか。クルマはファッションであり、乗る人のスタイルを映し出す。存在感のある巨体に、優雅さが加わったのは決して悪いことではないし、むしろアヴァンギャルド。だからドレッシーで反逆的にありたい紳士にはこれ、「アウディ Q8」である。

フルサイズだから絵になるクーペスタイル

『アウディ・Q8』屋根の前方から後方にかけて傾斜したデザインで、キャビンを小さく見せている。曲線主体の古典的なクーペとは異なる、力強さと洗練さが同居したスタイリングだ。
屋根の前方から後方にかけて傾斜したデザインで、キャビンを小さく見せている。曲線主体の古典的なクーペとは異なる、力強さと洗練さが同居したスタイリングだ。

SUVの堂々とした存在感はそのままに、流麗なラインのクーペボディをもつモデルが増えている。コンパクトSUVにも「クーペSUV」を名乗るモデルはあるが、セダンの派生であるクーペがそうであるように、大柄なボディでこそ伸びやかなデザインは生きる。「アウディ Q8」は、その筆頭。3列シートのQ7がベースのクーペルックは、全長4,995㎜、全幅1,995㎜。八角形のモダンなシングルフレームグリルを備え、とても洗練された印象だ。 

『アウディ・Q8』アウディのSUV系「Q」モデルに共通する、スポーティなフロントグリル。ボディサイズが大きいだけに、周囲に与えるインパクトも大きい。
アウディのSUV系「Q」モデルに共通する、スポーティなフロントグリル。ボディサイズが大きいだけに、周囲に与えるインパクトも大きい。

なだらかなリアスタイルの効果で背が低く見えるとはいえ、全高は約1.7mあり、SUVらしい開放感のある室内は損なわれていない。むしろ、進化したSUVとはこういうものだという説得力にあふれている。

クワトロシステムはデンターデフ式

『アウディ・Q8』リアフェンダーの盛り上がりが、このクルマをダイナミックに印象付ける。リアゲートの傾斜は強く、荷物を高く積んだときに不安を感じさせるが、そもそもクルマが大きいので横にぎっしり積めば問題なし。
リアフェンダーの盛り上がりが、このクルマをダイナミックに印象付ける。リアゲートの傾斜は強く、荷物を高く積んだときに不安を感じさせるが、そもそもクルマが大きいので横にぎっしり積めば問題なし。

これで大きな岩が転がる場所に行く人は少ないだろうが、駆動方式はおなじみのクワトロ、それもセンターデフ式の本格4WDだ。見た目は街っぽくてもタフな魂を秘めている。たとえるなら、雨の侵入を防ぐストームウェルトにグリップ力の高いラバーソールを装着したドレスシューズだろうか。

『アウディ・Q8』荷室はご覧の通りの広さ。奥行きも十分だ。
荷室はご覧の通りの広さ。奥行きも十分だ。

履いている本人以外はそうとわからないほどドレッシーで、スーツにも合う洒脱ぶりは、男のスタイルを格上げするだけでなく、行動範囲をも広げる。Q8は、そんなクルマだ。もし貴方が週末しかクルマに乗ることがなく、しかもカジュアルな装いで土の匂いのするところに行くのが好きなら、3列のQ7で足りるだろう。だがオンスタイル中心であることが望ましいと言うのなら、Q8はとても魅力的な候補に挙げられると思う。

物理スイッチを減らし、直感的な操作を促すタッチディスプレイ式のインフォテイメントシステム「MMIタッチレスポンス」を核とした、モダンなコクピットもQ8を含む最新型アウディの特徴。視覚的にも体感的にもスマートなドライブの時間を、心ゆくまで楽しもう。

『アウディ・Q8』テスト車両はエアサスペンション仕様。アタリの柔らかい乗り心地は、まさにラバーソールの名品靴のよう。
テスト車両はオプションのエアサスペンション仕様。アタリの柔らかい乗り心地は、まさにラバーソールの名品靴のよう。
『アウディ・Q8』V6ガソリンターボを搭載。マイルドハイブリッドシステムも採用されている。
V6ガソリンターボを搭載。マイルドハイブリッドシステムも採用されている。

【アウディ Q8 55 TFSI Quattro debut package S line】
ボディサイズ:全長4,995×全幅1,995×全高1,690㎜
駆動方式:4WD
トランスミッション:8速AT
エンジン:2,994cc V型6気筒DOHCターボ
最高出力:250kW(340PS)/5,200~6,400rpm
最大トルク:500Nm/1,370~4,500rpm
価格:¥10,200,000(税抜)

問い合わせ先

アウディ

TEL:0120-598106

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この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。