数字で車種を分けるBMWでは、いま1から8まで埋まっていて、ボディ形状もさまざま。一番小さいのは1となるが、日本車にありがちな車格のヒエラルキーから解放された完成度の高さで、従来から人気は高かった。モデルチェンジした新型は、駆動方式から一新。その出来栄えを、ライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏がリポートする。

しびれそうなほどキモチいい

全長4335ミリ(従来型−5ミリ)、全幅1800ミリ(同プラス35ミリ)、全高1465ミリ(同プラス25ミリ)。
全長4335ミリ(従来型−5ミリ)、全幅1800ミリ(同プラス35ミリ)、全高1465ミリ(同プラス25ミリ)。

ファッションとクルマの共通点とは。選びしだいで若返った気分になれるところではないだろうか。クルマの場合、強くお勧めできるのが、新型になったBMW1シリーズだ。

1シリーズはちょっと軽く見られてきたフシがあるけれど、じつはBMWファンがずっと注目してきたモデルだ。すこしコンパクトな車体と、ドライブを楽しませてくれる運転性能を持ち、スタイリングにも軽快感がある。

新型は2019年8月に日本発売された。全長はほぼ同じで、幅が少し広く、車高がすこし高くなった。最大の特徴は、駆動方式の変更。後輪駆動から前輪駆動になった。 

ウィンドウグラフィクスはBMWと一目でわかる(電動パノラマガラスサンルーフ)は15万円のオプション。
ウィンドウグラフィクスはBMWとひと目でわかる(電動パノラマガラスサンルーフ)は15万円のオプション。

ところが、前輪駆動になったから、1シリーズの特長だったスポーツ性が薄くなったわけではなかった。自動車ジャーナリズムの世界ではいまだに“スポーティさ=後輪駆動”なる思い込みがあるけれど、これは迷信だと、新しい1シリーズを体験すると言い切れる。

BMW 118iは、1499ccの3気筒エンジンに7段ツインクラッチの組合せだ。最高出力は103kw(140ps)、最大トルクは220Nm。ルーフラインを後ろにいくにしたがって下げるいっぽう、サイドウィンドウ下端のベルトラインは逆に持ち上げている。

それによって、後席を少し小さく見せ、いわゆるクーペライクな雰囲気を演出しているのがスタイリングの特徴だ。実際には後席もちゃんとおとなが乗れるし、荷室容量も従来より20リッター増しの380リッターが確保されている。

前輪駆動化でパッケージングが見直されて、スペース効率がよくなっているのだが、それでいて、ドライブ感覚は、はっきりいって、しびれそうなほどキモチいいのだ。

少し重めの設定のステアリングホイールに当初は違和感があるかもしれないが、飛び出すような加速性と、車体のロールも少なく、オンザレールのコーナリング特性には、この重さが合っている、とすぐに思い直した。

ドライブ中に困ったときの便利機能も!

橫基調のリアコンビネーションランプがボディ幅を強調。
橫基調のリアコンビネーションランプがボディ幅を強調。

1.5リッターの排気量は、1390キロの車体に充分な力をだす。回転をあげていくときに、ぐんぐんとトルクが積み重なっていくかんじというのか、アクセルペダルの踏みこみに反応して、どこまでも加速が続いていく感覚は期待以上の楽しさだった。

しかも、単に速さを追究しているのでなく、全体のバランスがいい。サスペンションの設定はやや硬めだが、乗員は不快に思わないだろう。足まわりで感心したのは、車体の振動がきちんと抑えられていることだ。

速度があがっても、乗員の頭が大きく動くことはない。びしっとしているのだ。スポーツモデルにとってこれはとても大事なことで、シャシーのバランスがきれいにとれているので、鋭さを感じさせる走りが堪能できるのである。 

BMW 118i Playのデジタル「ライブコクピット」は「iDriveナビゲーションパッケージ」はオプション(24万円)。
デジタルの「ライブコクピット」はオプションの「iDriveナビゲーションパッケージ」(24万円)。

大人にこそ乗ってもらいたい。と、118iを体験すると、心から思った。クルマなんて何乗っても同じだよ、なんて言っていた人がいたら、考えを改めてもらうのに絶好のサンプルがこのクルマなのだ。

オプションも豊富だ。なかでも、今回乗った「Play」というオモシロいサブネームのグレードには、「リバースアシスト」も標準装備されている。後退を車両が自動で行ってくれるのだ。

時速35キロ以下で走行してきた際、停車したあと、同じルートを後退する必要に迫られた場合に役立つ。スイッチを押してリバースギアに入れると、車両が自動でステアリング操作をして50メートル後退してくれるのだ。

2018年登場の8シリーズで初採用され、新型3シリーズでも注目された技術が、1シリーズにも搭載されたのである。ちなみに、10.25インチのモニターを、計器盤とインフォテイメントシステム用に用いた「iDriveナビゲーションパッケージ」はオプションで選べる。

「オーケイ、BMW」という呼びかけで起動するAIのアシスタントでエアコンや電話やナビゲーションのコマンドが行える「インテリジェントパーソナルアシスト」も上記のパッケージに含まれる。じつは対話型音声認識コマンドの分野では、BMWがパイオニアなのだ。

グレードは3つ。「スタンダード」(334万円)、「Play」(375万円)それに「Mスポーツ」(413万円)だ。パワートレインとタイヤサイズは、スタンダードとPlayで共通。Mスポーツはホイールリム径が2インチ上がって18インチとなる。

BMW 118i Play レザーシートはPlayに標準装備。
レザーシートはPlayに標準装備。

【BMW 118i Play】
ボディサイズ:全長4,335×全幅1,800×全高1,465㎜
駆動方式:2WD
トランスミッション:7速AT(DCT)
エンジン:1,499cc直列3気筒DOHC
最高出力:103kW(140PS)/4,600~6,500rpm
最大トルク:220Nm/1,480~4,200rpm
価格:¥3,750,000(税込)

問い合わせ先

 BMW

TEL:0120-269-437

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。
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