予算やスタイルとは合わないクルマがあっても、「自分には縁がないから」とそっぽを向くのはもったいない。出会いはいつやってくるかわからないからだ。人生のモチベーションとして、夢のあるクルマに興味を抱くのは、男として忘れてはならないと思う。MEN'S Preciousのエグゼクティブファッションエディターである矢部克已も、読者のみなさんと立ち位置は同じだ。輸入車の最新モデルが集まり、試乗するメデイア向けイベントで矢部氏が目を付けたのは、イタリアの老舗、アルファロメオのスポーツカーだった。
その美しい肢体は、モニカ・ベルッチの如し
私にとってアルファロメオ(以下アルファ)は、イタ車のなかで最も近い存在である。というのも、1990年代中頃、「アルファロメオ145」を購入の一歩手前までいったからだ。アルファの象徴的なボディカラーのロッソ(赤)と、ネロ(黒)のバイカラーにやられ、知り合いの「145」を借りて、ドライビングの感覚も体に沁み込ませたものの、手に入れることはなかった。当時は、縁がなかったのである。
あれから随分年月が経ったが、今回、2台のアルファ試乗の機会を得た。
まずはじめは、「4Cスパイダー」。クルマを見た瞬間に感じたのは、艶めかしく官能的なフォルム。あくまでも私感だが、曲線の連なりは横になったグラマラスな俳優、モニカ・ベルッチを彷彿とさせる。
カーボンファイバー製モノコックボディの低い車高や、メタルむき出しのブレーキとアクセルペダルは、レーシングカーそのものの気分。ゆっくり走り出すと、路面の凹凸が身体に伝わり、小石をはねる音も響く。重いステアリングは、力づくでクルマをねじ伏せる満足感があった。
このクルマでイタリアを走ってみたい
公道に出てアクセルを踏み込むと、爆音と共に背中から身体が押し込まれるような重圧がかかり、低い目線の車高は、路面を滑っているようである。ルーフを外してオープンで走ると、車内に吹き込む強い風に野性味を感じ、速度を落とすと心地よいそよ風となる。
イタリアで走るならどこがいいだろう。海の幸が最高のシチリア島か。パレルモを皮切りに、小さな港町によって新鮮な魚介のパスタを堪能する。おっといけない、シチリアの道は、かなりの悪路なので「4Cスパイダー」は不向きであろう。ミラノのモンテナポレオーネ通りのブランド街を、オープンにしてゆっくりと抜けて注目を集めようか。
クルマは、単にA地点からB地点に移動するだけのものではない。時には、掌に汗して、真剣にクルマを操るのもいい。「4Cスパイダー」は、けっして暴れ馬ではないが、ちょっと目を離すとどこかに行ってしまうような、じゃじゃ馬感も潜む、魅力的なクルマである。
【アルファロメオ4Cスパイダー イタリア】(販売終了)
全長×全幅×全高:3,990×1,870×1,190㎜
車重:1,190kg
駆動方式:MR
トランスミッション:Alfa TCT(6速AT)
エンジン:直列4気筒DOHCターボ 1,742cc
最高出力:177kw(240PS)/6,000rpm
最大トルク:350Nm/2,100〜4,000rpm
価格:¥10,277,778(税抜)
問い合わせ先
- TEXT :
- 矢部克已 エグゼクティブファッションエディター
Twitter へのリンク
- PHOTO :
- 尾形和美