よくできたスポーツカーは、ゆっくり走っても楽しい。といいつ、本領を発揮するのは、やはりアクセルペダルを深く踏んだとき。ランボルギーニ ウラカン エヴォは、特にその傾向が強い。その理由は主にエンジンにある。自動車ライターの佐藤篤司氏によるリポートをお読みいただこう。

大幅改良で、さらにすごいクルマになっていた

フロントガラスを支えるAピラーからボンネットの先端まで、ほぼ同じ角度を描くスタイリングは、往年の名車カウンタック以来の伝統だ。
フロントガラスを支えるAピラーからボンネットの先端まで、ほぼ同じ角度を描くスタイリングは、往年の名車カウンタック以来の伝統だ。
すべての写真を見る >>
普通のクルマよりも明らかに背は低いが、マフラーの位置は高め。
普通のクルマよりも明らかに背は低いが、マフラーの位置は高め。

ランボルギーニ最大のヒット作と言われ2013年に生産を終了したガヤルドの後継車種が、2014年のジュネーブショーで登場したウラカン。以来、先代のガヤルドをはるかに凌ぐ勢いで売れ、いまではランボルギーニの主力車種となっている。そして今回試乗した「EVO」はウラカンにとって初の大幅改良モデルとして昨年登場。もっとも大きな改良点は、空力性能を高めることであり、フロントバンパーと一体となったウィングを装備し、アンダーボディの空力性能を最適化することによって、路面に押しつけるダウンフォースが7倍、空力効率も6倍、エンジン冷却性能が16%アップなど、空力性能の向上を実現している。

こうした進化を、ウラカン本来のフォルムを大きく変えることなく達成できている点は、さすがスーパーカー作りに手慣れたランボルギーニの技である。さらに外見上の特徴として、ランボルギーニの高性能モデルにはお約束の、リアセンターの高い位置にあるハイポジションエグゾースト、そして新デザインの20インチホイールなどを装備し、ウラカンの個性的な外観を演出している。

自然吸気エンジンならではの別世界の加速を満喫!

自然吸気エンジンの突き抜けるような快感は、言葉で説明しきれない感動だ。
自然吸気エンジンの突き抜ける快感は、言葉で説明しきれない感動だ。
屋根が低いので、運転姿勢は自ずと背もたれを倒した角度になる。ハンドル調整で手前に引き出し、ベストなポジションをとると、さながらレーシングカーを運転しているかのよう。
屋根が低いので、運転姿勢は自ずと背もたれを倒した角度になる。ハンドル調整で手前に引き出し、ベストなポジションをとると、さながらレーシングカーを運転しているかのよう。
すべての写真を見る >>

ウラカン本来の魅力は、やはり走らせてこそ輝きを増す。まずはランボルギーニのV型10気筒エンジンとして“史上最強”といわれる、最高出力640馬力の自然吸気エンジンの存在だ。ターボチャージャーやスーパーチャージャーなどの過給器を持たない、ノーマルアスピレーション(NA)エンジンの魅力を徹底して味わえるのである。

アクセルを踏み込むと徐々に盛り上がってくるトルク、そして背後から聞こえてくる官能的なエンジン音の高まり。どんどんアクセルを踏み込んでいくと3,500回転辺りから、もう一段強力なトルクゾーンが顔を見せ、まったく別世界の加速を見せてくれる。0~100km/hの加速は2.9秒。スタートから高速域までの、強烈だが実に自然で滑らかな加速感は、過給器やモーターアシストといったパワーユニットではまず味わえない快感だ。

この魅力的なエンジンに4輪駆動、4輪操舵のドライブトレインが加わり、走りは実に安定している。高速道路での直進安定性の高さはもちろんだが、やはりコーナーでの切れ味の良さは極上ものだ。ステアリングをスパッと切り込むと、狙ったラインにスッとノーズが向く。しっかりと制御された4輪は路面を確実に捉えているから、少しくらいのことでは姿勢を乱さない。640馬力とはいえ、なんとも安全にワインディングを心地よく駆け抜けることができるのだ。環境問題などを考えれば、こうしたNAエンジンを搭載したクルマの将来は短いのかもしれないが、一方で、その少しばかりの背徳感もスーパーカーの魅力なのではないだろうか。

【ランボルギーニ ウラカン エヴォ クーペ】
全長×全幅×全高:4,520×1,933×1,165㎜
車重:1,422kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:7速AT
エンジン:V型10気筒DOHC 5,204cc
最高出力:470kw(640PS/8,000rpm)
最大トルク:600Nm/6,500rpm
¥29,843,274(税抜)

問い合わせ先

ランボルギーニ

TEL:0120-988-889

この記事の執筆者
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで「いかに乗り物のある生活を楽しむか」をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
PHOTO :
尾形和美