美しい地球を守るマインドなくしては、おしゃれを語れない、といっても過言ではない今シーズン。だからこそ、長く愛用できる服こそがエコロジーである、という考えが広まっています。
この時代にふさわしいファッションへの向き合い方や、大人が選ぶべきスタイルを、ファッションジャーナリスト・藤岡篤子さんに教えていただきました。
「シンプル&エッセンシャルズ」なワードローブが春の大本命!
今季、上質なリアルクローズの真の美しさが浮かび上がる
時代はサステナブルへと大きく舵を切った。2020年春夏コレクションを見終わった後、ファッションは、持続可能な未来へと、新たな一歩を踏み出したなと実感した。
今ここにある地球環境が抱える危機に、できることに可能な限りチャレンジし、実績を積み重ねている若いデザイナー、潤沢な資金力でCO2削減を工夫した大企業まで、今季は「サステナブル」のキーワードがコレクションすべてのモチベーションになっている。
「仕立てのいい上質なジャケットやコートこそが、サステナブルにつながります」(藤岡さん)
その潮流のなかで、注目すべきは、ファッションから発信する「サステナブルとは?」の問いかけだ。インスタ映えを狙った奇抜な装いや、ファッションの使い捨てなどへの反動もあり、長く愛用できるタイムレスな服こそ、エシカルなのではないか?
答えは、デザイナーたちからの「汎用性が高く、上質なリアルクローズ」という提案であった。仕立てがよく、程よい構築フォルムで、ミニマルだが、女らしいシルエットを見せるジャケットやコート。ハリのあるシャツは、一枚で着られる完璧なデザイン性をもち、シンプルなのにスペシャル感が漂う。
トレンチや、チュニック、テーラードジャケットなどオーセンティックなアイテムが、それぞれの基本やルーツを大切にしながら、より質の高いコットンや、ウールなどの自然素材を選択し、アイテムの本質を捉えながら、2020年春夏の顔に変化している。
「奥行きを秘めたミニマルかつタイムレスな装いが大人の美を引き出す」(藤岡さん)
特にカラーは重要だ。クリーンなテキスタイルからツイーディに変化するニュアンスに富んだ「ホワイト」の豊かな表情、「サーモンオレンジ」や「ラベンダーピンク」など洗練されたトレンドカラーをまとう、まさに珠玉のベーシックアイテムの数々。凛とした佇(たたずま)いのなかに漂うリラックスしたムードも魅力的だ。
穏やかなエレガンスを漂わせながら、この凝縮されたミニマルのなかにいったいどれほどの奥行きが秘められているのか。内包された美の蓄積は、タイムレスの意味を静かに語りかける。
この春のサステナブルを象徴する「エッセンシャルズ(凝縮)」こそ、優れたデザイン物を着こなしてきたおしゃれなキャリアが最後に選び取る卓越したシンプルさではないだろうか。
- TEXT :
- 藤岡篤子さん ファッションジャーナリスト
- BY :
- 『Precious3月号』小学館、2020年
- EDIT&WRITING :
- 川口夏希、中村絵里子(Precious)