このごろ、なんだか周囲と話がかみ合わない……。もしかしたら、知らず知らずのうちに不必要なプライドが邪魔をして、“スムーズなコミュニケーションが取れない人”になっているかもしれません。ビジネスマインドに詳しい3人のビジネス書作家のみなさんに、プライドが高すぎて厄介な人にならないための良習慣をお聞きしました。
「異なる価値観を認められない人」にならないための良習慣
“人”に注目して職場を変える――そんなアイデアのつまった「働く人改革 イヤイヤが減って、職場が輝く!ほんとうの『働き方改革』」(インプレス)の著者で、業務改善・オフィスコミュニケーション改善士の沢渡あまねさんに、自分の価値観にがんじがらめにされないための習慣を伺いました。
■1:「わからない」「知らない」をはっきり伝える
「組織で活躍し続けられる方は、これができていると思うんです」と、多数の企業でコミュニケーションの問題改善にも取り組む沢渡さんはいいます。勝てる分野では勝つ、勝てないところは積極的に周囲に任せていく。歳を重ねれば重ねるほど、その姿勢が重要になってくる、と沢渡さん。
「それができるのは、とにかく外へ出ていろんな人と会って、新しい情報を吸収している人。その上で、年齢に囚われず『彼にはすごいところがある。自分にはないものを持っている』と、相手を謙虚に見ることができています」(沢渡さん)
■2:相手の発言は復唱するor書き留める
話をまずしっかり聞き、それを復唱したり、ホワイトボードやメモに書き留めることで、相手に「受け止めてもらえた」という安心感が生まれる、と沢渡さんはアドバイスします。
「この安心感が大事。いったん受け止めてあげると、議論が建設的になります。『この人は聞いてくれたから、もっといい意見をしよう』『自分は間違っていたかもしれない』と、お互い素直に受け止められるようになるんです」(沢渡さん)
■3:相手の尊敬できるところを見つけ、積極的に仕事を任せる
「年下の部下や若手を尊敬できる、これはとても価値のあること。部下のモチベーションも上がりますし、年長者自身もいい影響を受けることができます」(沢渡さん)
これを、沢渡さんは“リスペクトのスパイラル”と呼びます。リスペクトできる相手に積極的に仕事を任せると、自分自身にもよい影響が。
「能力が高くても“やらされ感・義務感”で仕事する人より、多少能力が低くても“自分ごと感”をもって動く人のほうが成長スピードが速く、ともに働くこちらのモチベーションも上がります」(沢渡さん)
「自慢話ばかりする人」にならないための良習慣
“成功”に関する世界の名著60冊のエッセンスをギュッと凝縮した「成功法則大全」(WAVE出版)。その著者で成功データ研究所・代表の高田晋一さんに、自慢ばかりする人にならないための習慣を教えていただきました。
■4:相手の長所を見つける
「良好なコミュニケーションを築くコツとして、よく言われるのが『相手の話をよく聞く』こと」と高田さん。
ただ、まったく関心のない相手の話をただ聞くのも、かなり根気がいる作業です。そこで高田さんは「まずは相手に関心をもつために、相手の長所を探すことから始めてみましょう。そして、どうやってその長所を身につけたのか、聞いてみましょう」と提案します。
興味がなければ、興味がもてる部分を見つければいいのです。さらに、それを自分の長所にできれば一石二鳥!
■5:感謝したことを書き留める
誰しも、「あの人って自慢話ばかり。ちょっと傲慢だよね」なんて評価されたくないもの。
「相手の行動や言葉ひとつひとつに感謝の気持ちを持つことができたら、傲慢な人間にはなり得ないでしょう」と高田さん。
感謝の気持ちを実感するために実践したいのが、“感謝したできごとを書き留める”こと。
「ある実験によると、毎週『感謝したこと』を5つ書いた被験者は、9週間後に幸福度が著しく向上していたそうです。『感謝すること』は、自分自身も幸せに導いてくれるのです」(高田さん)
■6:相手に対して積極的に親切な行動を取る
「こちらから相手に親切な行動をとって感謝されると、親切をした側も言葉では言い表せない喜びに包まれるものです」と高田さん。
「これも実験で、『誰かに親切にしてそれを記録する』ということを1か月やってもらったところ、1か月後には被験者の幸福度が顕著に高まった、という結果が報告されています。
また、親切を受けた側に“返報性の法則”が働くため、親切にした側が次に何か頼みごとをするときに、聞いてもらいやすくなります。『親切』もまた、相手を喜ばせながら自分も幸福にすることができるのです」(高田さん)
■7:異業種の友達を持つ
「ずっと同じ業界にいたり、同じ仲間とばかり一緒にいると、『井の中の蛙』状態になって回りが見えなくなりがちです」と高田さん。自慢話ばかりするのは、周囲が見えていないからでもあります。「ほかの世界を知り、自分がいる世界は無数にある世界のただひとつに過ぎない、と実感できれば自然と謙虚な気持ちになれるでしょう」(高田さん)
「他者を見下す人」にならないための良習慣
『キングダム 最強のチームと自分をつくる』(かんき出版)で「仕事力の鍛え方」にまつわる力強いメッセージを発信するのは、ヤフー株式会社の社内大学「Yahoo!アカデミア」学長も務める同社コーポレートエバンジェリスト・伊藤羊一さん。企業のリーダー育成に携わる伊藤さんに、「他人を見下す人」にならないための良習慣を伺いました。
■8:「みんな違ってみんないい」を認める
「人はみな、自分の人生を一生懸命生きています。幸せか不幸せかとか周りにどう見られようが、その人が生きてきた人生の結果、今のその人があるのです。その人生はすべて、尊いもの。結果として、仕事ができる、できないとか、出世した、しないとか、ある尺度で計ると差は出るのだが、それだけがその人の人生の価値ではない」と伊藤さん。
「みんな、オンリーワンの存在。みんな違ってみんないい。これを認め、リスペクトすることが全ての始まりです」
■9:「上司・部下」と呼ばない
「僕は、上司、部下という言葉を使いません」と伊藤さん。マネージャーとメンバー、リーダーとフォロワー、などと言い換えているのだそう。
「理由は簡単で、『上』『下』というと、マネージャーがえらくて、メンバーは言うことを聞かなければならない従属関係にあるように勘違いしてしまうからです。肩書きは機能に過ぎない。そこをまず理解することが大事だし、周囲にもそう言っています」(伊藤さん)
■10:「孫正義さんも新人も、学生も同じ」
孫正義さん(ソフトバンクグループ代表)にプレゼンテーションする機会が何回かあったという伊藤さん。
「もちろん最大限の敬意を持って接するのですが、僕はほかの人に対してもまったく同じ態度をとることにしています。ヤフーにも新卒の新入社員がたくさん入ってくる。そして時には大学や高校に行って講演をすることもある。そういうときにも、ひとりひとりを尊重し、孫さんと話をするときと同じ態度を取るように、かなり意識しています。意識していれば、そうなれる。それが最終的には、信頼を得ることにもつながるのです」(伊藤さん)
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3人のビジネスマインドの専門家に「プライドが高すぎる人」にならないための10の習慣をお聞きしました。
もしコミュニケーションに難しさを感じているようなら、普段の行動を振り返ってみることも必要かもしれません。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 酒寄美智子