1960年代のイギリスからは魅力的なモノが多く生まれた。彼らは古典を敬愛する一方で、新しい発想にも好奇心旺盛な国柄ゆえ、貴族階級が伝統を重んじる傍らで、ビートルズやストーンズやミニスカートが生まれ、ロンドンでは巨大な“ロールス・ロイス”の横を小さな『ミニ』が走り抜けていた。

「小さな高級車」をどう乗りこなすか考えるだけでも楽しくなる

ヴァンデン・プラ『プリンセス』

全長わずか3.7mのボディに、贅沢な装備を盛り込んだ小型車の逸品。インテリアはウォールナットと手縫いのレザーシートで仕立てられている。写真のモデルは’71年式の4MT車で、後部座席用のピクニックテーブルも備える。オーナーは若い女性で、あまりにかわいい姿に一目惚れして購入したとか。中古車相場は150万円から300万円。
インテリアはウォールナットと手縫いのレザーシートで仕立てられている。写真のモデルは’71年式の4MT車で、後部座席用のピクニックテーブルも備える。オーナーは若い女性で、あまりにかわいい姿に一目惚れして購入したとか。中古車相場は150万円から300万円。

そんな時代のイギリスから出現したクルマのひとつが、“ヴァンデン・プラ”『プリンセス』である。当時イギリス最大の自動車メーカーだった“BMC”の小型車、先進的な油圧サスペンションを備える『ADO16』に、コーチビルダー、“ヴァンデン・プラ”が内外装を施したモデルで、ウォールナットとリアルレザーをふんだんに使ったインテリアが魅力だ。

ふだんロールスの後席などで過ごす階級が、週末に「フォートナム&メイソン」で買い物などというとき、自分で運転していくための「小さな高級車」である。

それに今、どう乗るか。英国紳士風にサヴィル・ロウ仕立てのダブルブレストジャケットなどで決めるのがひとつ。一方、かつてロックスターがロールスやアストンでそうしていたように、スキニーなデニムなんぞで乗り倒すのも粋かも。(文・吉田匠/モータージャーナリスト)

※2019年秋号掲載時の情報です。

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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2019年秋号より
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戸田嘉昭(パイルドライバー)
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