お釈迦様の誕生日を祝う行事を「花まつり(灌仏会/かんぶつえ)」と呼びますが、2020年の花まつりはいつになるでしょうか? また、花まつりで甘茶が使われる理由とは何なのでしょうか? 甘茶と甜茶の違いや、甘茶をおいしくする作り方と飲み方、おすすめの甘茶もご紹介します。
■2020年の「花祭り(灌仏会:かんぶつえ)」はいつ?

温かくなって木々の緑色が濃くなり、花々が咲く頃になると開かれる行事に、「花まつり(灌仏会:かんぶつえ)」があります。これはもともと仏教のイベントで、宗派に関係なく、毎年4月になると全国の寺院や公園などで花まつりが行われます。花まつりは毎年4月8日に開催され、2020年の花まつりの日程も4月8日です。
■「花祭り(灌仏会:かんぶつえ)」は、お釈迦様の誕生日
花まつりという名前は聞いたことがあっても、その意味や詳しい内容までは、知らない方が多いかもしれません。花まつりは、仏教の開祖であるお釈迦様の誕生日に開かれる行事で、お釈迦様の誕生を祝います。クリスマスはイエス・キリストの誕生をお祝いする日ですが、それと同じような意味合いと考えられているようです。
花まつりは「灌仏会(かんぶつえ)」、「仏生会(ぶっしょうえ)」「降誕会(ごうたんえ)」「浴仏会(よくぶつえ)」「龍華会(りゅうげえ)」「花会式(はなえしき)」という別名もあります。
お釈迦様の誕生秘話
お釈迦様が誕生したとき、生まれてすぐに立ち上がって7歩歩き、右手で天を指し「天上天下唯我独尊(てんじょうてんがゆいがどくそん)」と言ったという伝説が言い伝えられています。
「天上天下唯我独尊」には、「すべての人は平等で、尊い使命を持って生まれたきた」という意味があります。
また、7歩歩いたという「7」にも理由があるといわれています。仏教では、天道(てんどう)、人間道(にんげんどう)、修羅道(しゅらどう)、畜生道(ちくしょうどう)、餓鬼道(がきどう)、地獄道(じごくどう)の6つの世界があり、一切の生きとし生けるものは、それらの「六道」を輪廻転生すると教えられます。つまり7歩には、6つの世界から離れた、真の幸福があることを意味しているとされています。
さらに、お釈迦様の像は、必ず右手で天を、左手で地を指していますが、このポーズもお釈迦様が誕生したときの形をそのまま表したものなのです。
なぜ「花祭り」と呼ばれるのか
お釈迦様が誕生したのは、4月8日。この頃はちょうど桜などの花が咲き始める季節です。そのため、たくさんの花々にちなんで、お釈迦様の誕生を祝う日を「花まつり」という名前にして広まったと言われています。
浄土真宗以外の宗派でも、花祭りのお祝いをする
仏教にはさまざまな宗派がありますが、花まつりは浄土真宗はもちろん、宗派を問わずお祝いします。ただし例外は、日蓮正宗。日蓮正宗では花まつりは行いません。
■「花祭り(灌仏会:かんぶつえ)」に甘茶が使われるのはなぜ?
花まつりに欠かせないのが「甘茶」。花まつりでは、甘茶が無料でふるまわれることも多いです。ではなぜ、花まつりに甘茶が使われるのでしょうか?
誕生仏に甘茶をかける理由
花まつりでは「誕生仏」に椿や桜、レンギョウなどの花を飾ります。誕生仏とは、お釈迦様が生まれたときの姿をかたどった立像のこと。そしてこの誕生仏に、ひしゃくを使って甘茶を優しくかけ、拝みます。
これは、かつて天に9頭の龍が現れ、甘い水を吐き、それを産まれたばかりのお釈迦様の産湯に使ったという伝説があるから。そのため、花まつりではお釈迦様が生まれたときの姿をした誕生仏に、甘茶をかけるようになったのです。
甘茶を飲む理由
また花まつりには、赤ちゃんの健康を願う行事としての一面もあり、甘茶で赤ちゃんの頭をなでると、元気で丈夫な子供に育つと言い伝えられています。そんな由来があって、花まつりでは甘茶がふるまわれて、参加した人々はそれをいただく習慣があるのです。
甘茶を用いない花祭りの行事
花まつりには甘茶を使わずに行われるものもあります。
お釈迦様の生母である摩耶夫人がお釈迦様を妊娠したときに、六本の牙を持つ白い像が体内に入る夢を見た、という逸話から、花まつりでは白い像が登場することもあります。
また、伝統衣装を身につけた子供たちが列を作って行進する「稚児行列」を行う花まつりもあります。
■甘茶(あまちゃ)と甜茶(てんちゃ)の違い
では、花まつりで使われる甘茶(あまちゃ)とはどんなものでしょうか? 他にも、甘味のあるお茶に「甜茶(てんちゃ)」がありますが、甘茶と甜茶の違いは何なのでしょうか?
甘茶とは
甘茶とは、「アマチャ」という木の葉を煎じて作った飲み物のこと。黄褐色の色合いで、名前のとおり強い甘味があるのが特徴です。その甘みは砂糖の何倍もある、などとも言われているほど。しかし、甘いのにカロリーがゼロで、アンチエイジング作用や、花粉症やアレルギーなどの軽減が期待できるとされています。
甜茶とは
甘茶と同じように甘いお茶に甜茶がありますが、こちらは木の葉から作られる、甘いお茶の総称です。つまり甘茶は甜茶の一種ということ。本場中国では地域によって使われる茶葉の種類が異なり、バラ科、ブナ科などさまざまな木の葉が使われています。
甜茶は、花粉症などへの抗アレルギー作用が期待できる、と人気になりました。甜茶に含まれる甜茶ポリフェノールには、かゆみやくしゃみなどの原因物質を抑える作用がある、といわれています。
■おいしいもおいしくないも、淹れ方次第⁉ 甘茶の作り方と飲み方

甘茶は甘味が強いため苦手な方もいるかもしれませんが、甘茶をおいしく飲むためには、淹れ方にもポイントがあります。
作り方
アマチャの生の葉は苦くて甘味はありません。しかし、これを発酵させることで甘味が出ます。アマチャの葉を発酵させ、手で揉み、さらに天日で乾燥させるといった工程を経て、時間をかけてじっくりと甘味が引き出されているのです。
飲み方
甘茶を自宅でおいしく飲むときは、茶葉の量を少なめにするのがポイント。緑茶よりも少なめにして、急須やカップに甘茶の茶葉を入れお湯を注ぎ、数十秒蒸らしたら完成です。お好みにあわせて、蒸らす時間を2~3分と伸ばしてみてもOKです。
■東京都内で行われる花祭りイベント
2020年4月にも、各地で花まつりのイベントが企画されていましたが、新型コロナウィルスの感染防止のため、延期や中止を発表しているものも少なくありません。
東本願寺真宗会館で4月4日に開催予定だった花まつりは延期が決定。築地本願寺で4月8日に予定されていた花まつりは中止となるなど、各地で影響が出ています。
■花祭りにいただく甘茶のおすすめ
花まつりの季節にピッタリの、おすすめの甘茶をご紹介します。
「ウチダ和漢薬 甘茶 全形 100g」

1947年創業の漢方薬メーカー「ウチダ和漢薬」の、花まつり(灌仏会)にいただきたい日本産の甘茶葉。甘茶を長く湯に入れすぎると甘味が強くなりすぎることもあるので、その際は湯や水を注ぎ足してお好みで調整してください。
「国産甘茶 1g×15袋入り ティーバッグタイプ 無添加 ノンカフェイン」

創業60年の日本茶専門店、浅草の「片山園」の甘茶。無添加国産100%で、日本でもごく一部でしか作られていない希少なお茶です。料理の隠し味としても最適、甘い物を摂りたくても摂れない方にもおすすめです。
「おいしい甘茶のティーパック」

仏具専門店「五彩堂」の気軽に飲めるティーパックタイプの甘茶です。茶葉は、お茶の名産地である、福岡県の八女産です。
「岩手県九戸村産無農薬栽培甘茶100%」

岩手県九戸村の「九戸村ふるさと振興公社」による甘茶。九戸村の自然豊かな環境の中、無添加、無農薬、さらに化学肥料を使用しない方法で栽培された甘茶は、ゼロカロリーでノンカフェインのハーブティーです。
「奈良産 甘茶」

奈良県産と国産のアマチャを使用。漢方薬や生薬を扱う「あおき漢方堂」の販売のため、安心して飲むことができます。
「甘茶」

創業91年の歴史と伝統を誇る漢方の「皇漢堂薬局」の甘茶。栃木県産アマチャの葉を蒸して乾燥させています。
「国産 あま茶 2g×30包」

自然栽培で国産中心の健康茶専門店「がばい農園」の甘茶は、栽培から収穫までしっかりと品質管理された国産の甘茶で、ほんのり甘い懐かしい味わいが特徴。有機JAS認定工場・HACCP認証取得、残留農薬検査・放射能検査済だから安心安全です。
花祭りの季節は甘茶を楽しもう
当記事では、2020年の「花まつり(灌仏会:かんぶつえ)」はいつなのか、なぜ「花まつり」と呼ばれるのか、また、お釈迦様の誕生日やお釈迦様の誕生秘話についてご紹介しました。
さらに、花まつりに甘茶を飲んだり、誕生仏に甘茶をかける理由や、甘茶を用いない花まつりの行事をチェックしています。
加えて、甘茶(あまちゃ)と甜茶(てんちゃ)の違いや、甘茶の作り方と飲み方を解説しながら、花まつりにいただく甘茶のおすすめをセレクトしてみました。
花まつりが行われるのは、色とりどりの花が咲き季節が変わっていくことを感じられる季節です。可憐で美しい花を愛でたり、おいしい甘茶を飲みながら、春の訪れを感じてみてはいかがでしょうか?
- TEXT :
- Precious.jp編集部