関西を代表する公立美術館「京都市京セラ美術館」

2017年からスタートした改修、増築工事を経て、この春「京都市京セラ美術館」がリニューアルオープンします。

「京都市美術館」は、昭和8年(1933年)に「大礼記念京都美術館」として開館。和と洋の意匠が絶妙に融合した建物は、京都随一の文化・交流ゾーン、京都・岡崎エリアのシンボル的存在であり、地元・京都人にとっても首を長くして待っていた、うれしいニュースです。

※新型コロナウィルス感染拡大防止のため、2020年5月6日(水)までを目処に当面の間、開館は延期されます。最新情報は「新型コロナウイルス感染症対策に伴う京都市京セラ美術館の開館延期について」をご確認ください。

■創建当時のデザインを活かしながら現代的な要素を加えて、高機能化。「故」と「新」が重なる新しい美術館

京都市京セラ美術館
京都市京セラ美術館

同館は昭和8年(1933年)、「大礼記念京都美術館」として開館し、第二次世界大戦後には「京都市美術館」と改称し愛されてきましたが、2017年に京セラ株式会社からネーミングライツによる支援を受けて再整備を進め、一時閉館。2020年春、「京都市京セラ美術館」としてリニューアルオープン予定です。

開館以来、85年余りの長きにわたり親しまれてきた建物は、今や現存する日本で最も古い公立美術館建築に。 

建築家・青木淳、西澤徹夫の基本設計による新たな美術館は、帝冠様式と呼ばれる和と洋の意匠が絶妙に融合する本館の風格を保存しながら、現代的な優れたデザインと機能を併せ持っています。

歴史的建築の意匠は残しつつ、生まれ変わったファサード

神宮道側のメインエントランスや前の広場はそのまま残され、以前と変わらず荘厳な雰囲気を漂わせています。しかし、よく見ると、美術館前に緩い傾斜がつき、中央に向かって下がるスロープ状の広場に変わっています。

そして、それによって誕生した本館地下1階部分には、今回のリニューアルの一番のシンボルと言えるファサード「ガラス・リボン」が誕生。透明で軽やかな流線型の意匠は、歴史的建築物との美しい融合を見せます。

広場から地下のメインエントランスに向かってのびる緩やかなスロープ。ファサードには「ガラスリボン」と呼ばれる流線型のガラスが配されている。
広場から地下のメインエントランスに向かってのびる緩やかなスロープ。ファサードには「ガラス・リボン」と呼ばれる流線型のガラスが配されている。

メインエントランスは1階から地下に移され、元々あった地下から中に入れるようになりました。地下のエントランスを直進すると、かつては「下足室」として使用されていた空間がクロークやチケット売場に生まれ変わっていて、さらに進むと新たに設置された大階段へ続いています。

地下のメインエントランスから大階段によってつながる中央ホール。
地下のメインエントランスから大階段によってつながる中央ホール。

階段を上がると1階の中央ホールにつながっています。こちらは本館の中心に位置し、かつては大陳列室だった場所であり、現在はエントランスや各展示室、日本庭園などを往来できるハブになっています。

そのほか、本館内は、歴史的建築の意匠を可能な限り保存しつつ、設備をアップデートされ、ノスタルジックなフォトスポットに心惹かれます。

天井のステンドグラスやノスタルジックな照明、豪華な装飾など、歴史的建築の意匠が残る館内。
天井のステンドグラスやノスタルジックな照明、豪華な装飾など、歴史的建築の意匠が残る館内。
歴史ある意匠は残しつつ、設備はアップグレード。ロッカーは館内5箇所に設置されている。
歴史ある意匠は残しつつ、設備はアップグレード。ロッカーは館内5箇所に設置されている。

現代アートに対応する高機能設備を備えた新館「東山キューブ」が誕生

敷地の北東には新たな建物「東山キューブ」が誕生。様々な表現に対応する高機能な最新設備を備え、現代アートのほか、ファッション、建築、デザインなど、さまざまな文化芸術シーンを紹介します。

左が昭和8年に建てられた本館、右が今回のリニューアルで登場した「東山キューブ」。
左が昭和8年に建てられた本館、右が今回のリニューアルで登場した「東山キューブ」。

■屋上テラスや日本庭園、カフェ、ショップなど、無料エリアが充実

外からは見えないが、本館の裏には立派な日本庭園がある。6月14日までは、杉本博司の日本初上陸作品「硝子の茶室 聞鳥庵(モンドリアン)」が設置されている。
外からは見えないが、本館の裏には立派な日本庭園がある。2021年1月31日までは、杉本博司の日本初上陸作品「硝子の茶室 聞鳥庵(モンドリアン)」が設置されている。
©Hiroshi Sugimoto
Architects: New Material Research Laboratory / Hiroshi Sugimoto + Tomoyuki Sakakida. Originally commissioned for LE STANZE DEL VETRO, Venice / Courtesy of Pentagram Stiftung & LE STANZE DEL VETRO.

「京都市京セラ美術館」は、作品を鑑賞する以外の楽しみもお待ちかね。メインエントランスに入って、右はカフェ、左はショップになっていて、さらにショップ奥の展示スペース「ザ・トライアングル」は入館料なしで作品を鑑賞できます。

さらに、日本庭園や「ザ・トライアングル」、2階の屋上庭園「東山キューブテラス」も自由に出入りでき、一日存分に楽しめます。

東山キューブ2階、屋上庭園「東山キューブテラス」。
東山キューブ2階、屋上庭園「東山キューブテラス」。
日本庭園を見下ろす屋上テラス。遠くには雄大な東山が広がっている。美術館の隣には動物園があり、キリンが見えることも。
日本庭園を見下ろす屋上テラス。遠くには雄大な東山が広がっている。美術館の隣には動物園があり、キリンが見えることも。

アートと地域をつなぐミュージアムカフェ「ENFUSE」(エンフューズ)

 ガラスの向こうは広場。「平安神宮」の大鳥居や道を挟んで向かいの「京都近代美術館」も見える。
 ガラスの向こうは広場。「平安神宮」の大鳥居や道を挟んで向かいの「京都国立近代美術館」も見える。

リニューアルを機に登場したカフェ「ENFUSE」(エンフューズ)は、ユニークな感性で地域に寄り添うカフェの運営やコラボレーションプロジェクトを展開してきた企業「WAT」が企画・運営を行っています。

美術館の北側には岡崎公園が広がっていて、「ENFUSE」は公園の一部としてアートと地域をつなぐカフェになることを目指しているそう。

レジャーシートやグラスをかごに詰めたピクニックセットの貸し出しもあり。コーヒーやワイン、スイーツやサンドイッチを自由に組み合わせできる。
レジャーシートやグラスをかごに詰めたピクニックセットの貸し出しもあり。コーヒーやワイン、スイーツやサンドイッチを自由に組み合わせできる。

メニューには、京都の食材や手法を取り入れたものもあれば、京都醸造のクラフトビールや吉田パン工房のパン、金谷正廣の和菓子など、地元の人気企業や店の商品もラインアップ。

近くに公園や疏水、動物園があることからピクニックセットの貸し出しもしていて、朝、昼、夜と、趣向を変えて楽しむことができます。

京都土産探しにもぴったりなミュージアムショップ「ART LAB KYOTO」

オリジナルグッズもいろいろ。美術館のミニマルでクリーンなイメージを落とし込んだ「トートバッグ」¥3,500(税別)
オリジナルグッズもいろいろ。美術館のミニマルでクリーンなイメージを落とし込んだ「トートバッグ」¥3,500(税別)

エントランスの北側にはミュージアムショップ「ART LAB KYOTO」がお目見え。展示会グッズや美術書籍、京都の伝統文化を楽しめる限定商品、「BEAMS創造研究所」とコラボしたファッションアイテム、オリジナルグッズ、スイーツなど、商品ラインアップも多彩に。

伝統と革新を繰り返し、常に進化してきた”京都”のスピリッツを体現させる新業態のミュージアムショップになっています。

京都・三条の御菓子司「亀屋則克」に「京」のロゴをあしらった干菓子を別注。¥1,500(税別)
京都・三条の御菓子司「亀屋則克」に「京」のロゴをあしらった干菓子を別注。¥1,500(税別)
多彩なラインアップで京都の新・土産が見つかる。
多彩なラインアップで京都の新・土産が見つかる。

■杉本博司の個展をはじめ、見逃せない4つの展示

春のリニューアルオープン時は、「杉本博司 瑠璃の浄土」、「コレクションルーム(春期)」、「京都の美術 250年の夢」、「ザ・トライアングル 鬼頭健吾 Full Lightness」の4展示が行われています。

国際的に活躍する現代美術家、杉本博司の個展「杉本博司 瑠璃の浄土」

世界初公開となる大判カラー作品「OPTICKS」シリーズ。
世界初公開となる大判カラー作品「OPTICKS」シリーズ。「杉本博司 瑠璃の浄土」展示風景 ©Hiroshi Sugimoto

美術館の再生を記念し、登場した新館「東山キューブ」では、国際的に活躍する現代美術家で京都ともの縁の深い杉本博司の個展「杉本博司 瑠璃の浄土」を開催。杉本博司は、1970年代より大型カメラを用いた高度な技術と独自のコンセプトによる写真作品を制作。世界的に高い評価を受けてきました。

杉本氏の京都の美術館における初の本格的な企画となるこの個展では、新たに制作された京都蓮華王院本堂(通称、三十三間堂)中尊の大判写真を含む「仏の海」や、世界初公開となる大判カラー作品「OPTICKS」シリーズといった写真作品の大規模な展示を堪能できます。

のぞき込むと、それぞれに違った国・場所の海景が広がる光学硝子五重塔。
のぞき込むと、それぞれに違った国・場所の海景が広がる光学硝子五重塔。「杉本博司 瑠璃の浄土」展示風景 ©Hiroshi Sugimoto

さらにこの個展では、写真作品にととまらず、立体作品や映像作品、自身が蒐集した古美術の展示もあり、内容は多岐に渡っています。

古美術商の経験も持ち、日本美術や歴史に造詣が深い杉本博司ですが、所蔵品には、平安時代の法勝寺の瓦や古墳時代の瑠璃色の硝子玉があったり、個人所蔵とは思えない貴重な美術品にも出会えます。

写真を基点に、宗教的、科学的、芸術的探究心が交差しつつ発展する杉本氏の創造活動の現在について改めて考えるとともに、長きにわたり浄土を希求してきた日本人の心の在り様を見つめ直せます。

京都市京セラ美術館開館記念展「杉本博司 瑠璃の浄土」は、「新館 東山キューブ」にて6月14日(日)まで開催予定です。(観覧料:一般1,500円(税込))

「コレクションルーム」では「京都市京セラ美術館」所蔵の作品を季節替わりで展示

リニューアルオープンを機に新設された「コレクションルーム」では、年4回の展示替えで、日本画の名品を中心に、季節感に溢れた作品を展示。京都の美の世界を堪能できます。

現在の春期の展示は、2020年6月21日(日)までの予定です。(観覧料:京都市内在住520円(税込)、京都市外在住730円(税込))

気軽に現代美術に触れられる「ザ・トライアングル」

「ザ・トライアングル」で開催中の鬼頭健吾の「Full Lightness」。
「ザ・トライアングル」で開催中の鬼頭健吾の「Full Lightness」。

美術館のリニューアルオープンに際して新設された「ザ・トライアングル」は入場無料の展示スペースに。京都ゆかりの作家を中心に新進作家の企画展を開催。訪れた人が気軽に現代美術に触れる場となっています。

2020年5月31日(日)までは国内外で活躍するアーティスト、鬼頭健吾の「Full Lightness」を開催中。スケールの大きな空間構成を得意とする鬼頭の新作を含むインスタレーション作品が展示されています。

展示は階段をのぼり、北西エントランスまで続いている。
北西エントランスでも、鬼頭氏のインスタレーション≪ghost flowers≫を見ることができる。

透過性のある着彩ガラス越しにモビール、蛍光灯、メッキ塗装をした石などによるインスタレーションを設置し、色と光に満ちた究極の軽さ(Full Lightness)をたたえる鬼頭の世界を楽しめます。

北西エントランスも鬼頭健吾のインスタレーションのひとつになっている。
北西エントランスでも、鬼頭氏のインスタレーション≪ghost flowers≫を見ることができる。
地面に映し出されるカラフルな影も美しい。
地面に映し出されるカラフルな影も美しい。

■周辺に美術館や神社仏閣が点在。岡崎エリアで京都の文化・歴史を堪能

美術館の目の前にそびえる「平安神宮」の大鳥居。
美術館の目の前にそびえる「平安神宮」の大鳥居。

向かいには「京都国立近代美術館」、さらに徒歩5分の場所には「細見美術館」もあり、アートスポットが点在。平安神宮や南禅寺も徒歩圏内で、1日ゆっくり時間をかけて散策する価値があります。

※新型コロナウィルス感染拡大防止のため、5月6日(水)までを目処に当面の間、開館を延期します。最新情報は「新型コロナウイルス感染症対策に伴う京都市京セラ美術館の開館延期について」をご確認ください。

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この記事の執筆者
女性情報誌の編集を経てフリーランスに。エディター・ライター歴15年以上。生まれ育った京都を拠点に、女性情報誌やファッション誌、グルメ誌に寄稿。京都特集や京都でのファンションロケのコーディネートも行う。
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