「パルミジャーニ・フルリエ」は、時計修復師であった創業者のミシェル・パルミジャーニが、1976年、スイスのヌーシャテル州ヴァル・ド・トラヴェール地区にあるクヴェの地に伝統的な時計工房を開いたことで、その歴史は始まる。スイスの時計産業がクォーツショックによって危機に瀕していた時代であっただけに、船出は順風満帆とはいかなかったが、昼間は古い時計の修復を主に行い、空いた時間を使い自由に創造力をはばたかせ、複雑時計の製作に打ち込んでいた。
最先端と伝統が生み出す、パルミジャーニの時計づくり
類まれな才能と技術力が高く評価され、1996年には、同じヴァル・ド・トラヴェールのフルリエで、自身の名と創業の街の名を冠したブランド「パルミジャーニ・フルリエ」が設立された。パルミジャーニは精緻な職人技と先端的な時計のノウハウが詰まったブランドを目指し、ムーブメントから外装組立まで自社一貫生産体制で行うマニュファクチュールメーカーとしての道を選択。その上質な仕上がりは広く認知され、創業数年でスイスを代表する独立系ブランドへ発展を遂げた。
1999年に、ベゼルがゴドロン装飾とモルタージュ装飾が交互に施された、初の腕時計「トリック QP レトログラード」を発表。同時期に黄金比に基づいたプロポーションのトノー型コンプリケーション「イオニカ」(現在のカルパ エブドマデール)が誕生。2004年に発表した「ブガッティタイプ370」によって、突出した個性と頂に立つ技術が世界の時計シーンで認知されることとなった。
オートオルロジュリー「トンダグラフ」の新たな最高峰
パルミジャー二・フルリエのラグジュアリーウォッチコレクションとして、2009年に発表されたのが「トンダグラフ」だ。トンダとはイタリア語で“円”の意味し、ひとつのキャリバーの中にクロノグラフとトゥールビヨンを併置した複雑な構造を実現している。製作工程が極めて複雑であり、計時機能には欠かせない部品が、トンダグラフの精緻な動きと機能的で美しいスタイルを築き上げている。
2020年に登場した新しい「トンダグラフ」は、直径43mmのエレガントなローズゴールドのケースとスレートグレーのライスグレイン模様をあしらったギョーシェ彫りダイヤルが特徴で、ダイヤルの6時位置にトゥールビヨン、3時位置にクロノグラフを配置することで2つの複雑な機能を強調。9時位置にスモールセコンド、12時位置にはパワーリザーブが美しく配置され、ローズゴールドのアプライドインデックスやデルタ型スケルトンの時針と分針は、デザインとしても見事な調和を見せる。
トンダコレクションのコンセプトである丸みを帯びた輪郭と、パルミジャーニ・フルリエ特有のドロップ型のラグをデザインの基幹コンセプトとしながら、最先端の技術、修復の仕事から得た伝統的な時計づくりの知識と経験を積み上げ、パルミジャー二・フルリエならではのオートオルロジュリーに仕上げている。
ダイヤルとケースバックからムーブメントを楽しめる
完全自社製のムーブメントPF354は、298個の部品で構成され、パワーリザーブ65時間。ケースバックのみならず、ダイヤルからもトゥールビヨンブリッジの面取り加工や、香箱のペルラージュ仕上げを見ることができる。
バックルは18Kローズゴールドのアルディヨンバックル。ストラップはエルメス社製で、ハバナカラーのアリゲーターストラップを採用。その隅々までパルミジャーニ・フルリエの哲学が宿っている。
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- TEXT :
- 安藤政弘 ライター