年明け以降、感染拡大は徐々におさまり、イタリアの大部分が最も行動制限が緩い「黄」だったのもわずか1か月あまり。感染拡大の兆候が見えると、またしても一部の州は「オレンジ」に突入した。

その間の都市生活では基本的に外食は一切できないのだが、逆にレストランやバーのテイクアウェイ・シーンは大いに盛り上がっている。「Floreal(フロレアル)」はアントニオとダニエレという2人のバーテンダーが中心になり、昨年10月フィレンツェにOPENしたカクテル・バー。

カクテルはテイクアウェイで楽しむのがイタリア式 

 「フロレアル」のイメージはメスカルの故郷メキシコ。ストレリチア(極楽鳥花)が壁全面に描かれてる。
 「フロレアル」のイメージはメスカルの故郷メキシコ。ストレリチア(極楽鳥花)が壁全面に描かれてる。

イタリアではまだまだ少ないメスカル・ベースのカクテルが飲めるバーということでいち早く話題となったが、いまはそうしたメスカル・カクテル含む全てのメニューがテイクアウェイできる新しいスタイルが人気を集めている。カウンターで注文すればカウンターでアントニオとダニエレが見事な手さばきでカクテルを作り、オリジナル・デザインのポップな缶に詰めてくれる。

さらに嬉しいのは業務用のバーアイスも一緒につけてくれること。家庭の冷蔵庫で作った氷とは違い、なかなか溶けないバーアイスは見た目も美しく、自宅で持ち帰ってアペリティーヴォとして楽しむのはなんともいえない至福の時間だ。

テイクアウトできるメイド・イン・イタリーのカクテル

 ショーン・コネリー風?のイラストが描かれた「ドライ・アンド・ストロンガー」はかなり辛口のドライ・マティーニ。
ショーン・コネリー風?のイラストが描かれた「ドライ・アンド・ストロンガー」はかなり辛口のドライ・マティーニ。

例えばジェームス・ボンド(風)のイラストが描かれた缶に入ったカクテルは「ドライ・アンド・ストロンガー(₡13)」はタンカレー・ナンバーテン、ベルサザール・ローズ・ベルモット、キンカンとロングペッパーの自家製ビターを使ったオリジナルのドライ・マティーニ。しかしこれがまたジェームズ・ボンドも思わずたじたじとなるようなドライでストロングなマティーニ。ほのかに香るバラや胡椒、柑橘の香りを楽しみつつロックでちびちびやるのがたまらない。

ラム・ベースの「リトル・モンキー」こちらは「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジョニー・デップ似?
ラム・ベースの「リトル・モンキー」こちらは「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジョニー・デップ似?

「リトル・モンキー(₡12)」はバンブー・スパイスド・ラム、チンザノ・ベルモット、カンパリ・ビター、ピメント・ドラム、カカオ・ビターを使った、ほろ苦さの中にも甘さが隠れている大人の一杯。チンザノやカンパリを使ったイタリアらしい味と香りはなかなかパンチがあり、こちらは食後酒向き。イタリアでは最近食後酒はDa meditazione(瞑想用)と表現されることが多いが、これには目を閉じてゆっくりと楽しむというニュアンスが含まれているのだ。

メスカルにアプリコット・ブランデーなどを加えたスイート&ドライな「メスカル・ドラム」
メスカルにアプリコット・ブランデーなどを加えたスイート&ドライな「メスカル・ドラム」

一連のテイクアウェイのカクテルもいいけれど、実際に店に足を運んでできたてのカクテルを味わいたいという人にはメスカルを使った「メスカル・ドラム(₡13)」がいいだろう。これはMezcal del Maguey Vida、Lillet Rouge、Luxardoアプリコット・ブランデー,Mediterraneoビターを使った中南米らしい、しかしローズマリーやセージなど地中海らしい香りも加えた一杯。これはまさに食欲増進、胃を開くという本来のアペリティーヴォに最適だ。

「ほろほろ鳥のホット・ドッグ」(手前)と「フロレアル・サンドイッチ 」(後ろ)
「ほろほろ鳥のホット・ドッグ(₡15)」(手前)と「フロレアル・サンドイッチ(₡9)」(後ろ)

また、「フロレアル」ではランチタイムのみバーフードを提供しているが、これがなかなかどうして、バーフードというレベルではない凝り用。トスカーナでよく食べるほろほろ鳥を使った「ほろほろ鳥のホット・ドッグ」はスモーキーなほろほろ鳥ソーセージ、ザワークラウト風の発酵キャベツを柔らかいパニーノで挟み込み、付け合わせにはローズマリー風味のトスカーナ風ロースト・ポテト。

「フロレアル・サンドイッチ」は見た目はオースドックスなサンドイッチだが中身はプロシュット・アロスト、ポモドリーニとタマネギのカラメッラート、そしてアボカドを使ったグアカモレ・ソースとオリジナリティあふれるテイスト。しかもボリューム満点なのだから、おつまみ的感覚のバーフードではなく、ちゃんと食事も楽しめるように配慮されている。

アイディアマンのダニエレ(左)とアントニオ(右)これからもユニークなアイディアでフィレンツェのカクテルシーンを盛り上げてくれるはずだ。

夜の営業が可能になったら、アントニオとダニエレは新しいフードメニューを提供する準備もすでにできている。新メニューは、フィレンツェ近郊ポンタッシエーヴェの「Podere Belvedere(ポデーレ・ベルヴェデーレ)」とコラボ。同店はアグリツーリズモだが、自家菜園や地元食材をシェフ、Edoardo Tilli(エドアルド・ティッリ)が最新の調理技術でクリエイティブに食べさせてくれるのだ。

コンセプトは、2000年代初頭「El Bulli(エル・ブジ)」のFeran Adria(フェラン・アドリア)の新スペイン料理が世界を席巻した頃のスタイルをイタリア風に表現。

ミクソロジー・カクテルと最先端のバーフード、というスタイルはいままでのイタリアには存在しなかった新しい形。過去にも何度か書いているが、これまでカクテル後進国だったイタリアでは現在爆発的なカクテル・ブームが起きており、特にメイド・イン・イタリーのクラフトジンやベルモットをベースに、イタリア製の柑橘類などを使用した100%イタリア製カクテルが人気でぞくぞおくと新しいバーや製品が登場している。コロナ禍でも進化をやめないメイド・イン・イタリーのカクテルに今年も注目したい。

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この記事の執筆者
1998年よりフィレンツェ在住、イタリア国立ジャーナリスト協会会員。旅、料理、ワインの取材、撮影を多く手がけ「シチリア美食の王国へ」「ローマ美食散歩」「フィレンツェ美食散歩」など著書多数。イタリアで行われた「ジロトンノ」「クスクスフェスタ」などの国際イタリア料理コンテストで日本人として初めて審査員を務める。2017年5月、日本におけるイタリア食文化発展に貢献した「レポーター・デル・グスト賞」受賞。イタリアを味わうWEBマガジン「サポリタ」主宰。2017年11月には「世界一のレストラン、オステリア・フランチェスカーナ」を刊行。