意のままに操れるクルマに対してよく使われる、「人馬一体感」とか「スニーカー感覚」という表現。それにふさわしいクルマといえば、多くの場合、パワフルなエンジンを載せたコンパクトなクルマが思い浮かぶ。その筆頭がフィアット「500」(チンクエチェント)をベースに、名門チューナーであるアバルト(現在はフィアットのサブブランドとなっている)が手掛けたスポーツモデルの「595」だ。5月16日から、さらなるパワーアップを施し、装備充実をトッピングした特別仕様車「ピスタ」(Pista)」を「595」とオープンモデルの「595C」に設定。両モデル合わせて240台の台数限定で発売されたのでご紹介しよう。

さらに20馬力アップ!

イエローのアクセントが鮮烈な、専用のボディカラーをまとう。
イエローのアクセントが鮮烈な、専用のボディカラーをまとう。
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レース車両の制作と参戦を行なっていた往年のアバルトは、特にエキゾーストシステムの開発に力を入れていた。このモデルに装着される「レコードモンツァ」は、1958年にデビューしたレーシングカーの名にちなむ。
レース車両の制作と参戦を行なっていた往年のアバルトは、特にエキゾーストシステムの開発に力を入れていた。このモデルに装着される「レコードモンツァ」は、1958年にデビューしたレーシングカーの名にちなむ。

この限定車の走りの素性は、「ピスタ」という言葉に表れている。ピスタはイタリア語で“レーストラック”を意味する。つまり、これまででも十分に刺激的だった「595」のパフォーマンスを、さらに磨き上げることによって、サーキットでも通用するほどの実力を与えたことを意味している。

エンジンはベース車両と比べて20PS向上し、最高出力は165馬力。1.4Lの直列4気筒エンジンにして、一気に20馬力も向上させたのだから、走りの刺激度の高さは容易に想像できる。この出力アップには、刺激的なサウンドを奏でるハイパフォーマンスエキゾーストシステム「レコードモンツァ」も大きく寄与しているのは確実だ。

さらに、エンジンパフォーマンスの向上に合わせてシャシーも強化。足まわりはリアサスペンションにKONI(オランダで操業した老舗のパーツメーカー)製FSDショックアブソーバー(機械式の減衰力自動調整機能が付くモデル)を装着している。なお、トランスミッションはボディタイプに関わらず、5速MT とATモード付き5速シーケンシャルを選択できるようになっている。

アイコニックなスタイリングを味わい尽くす最良の選択肢

サソリのマークを視界に入れながら駆け抜ける快感!写真は欧州仕様で、日本仕様は右ハンドルとなる。
サソリのマークを視界に入れながら駆け抜ける快感!写真は欧州仕様で、日本仕様は右ハンドルとなる。
シートデザインが写真のものを含め2種類あり、ユーザーが任意に選ぶことはできないというが、どちらも格好いいのでご心配なく。
シートデザインが写真のものを含め2種類あり、ユーザーが任意に選ぶことはできないというが、どちらも格好いいのでご心配なく。
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もちろん特別仕様車ならではの見栄えもやる気満々。だが、その仕上げはさすがにイタリアンらしく、子供っぽさや下品さはない。例えばボディカラーには、標準色に設定がない「ブルーポディオ」を用意。それに加えてマットブラック仕上げの専用17インチ10本スポークアルミホイールのセンターキャップとブレーキキャリパーだけでなく、ドアミラーカバー、リップスポイラーなどにイエローを配することで、洒脱にスポーティ感を表現している。

大元となるフィアット「500」は、2007年に登場し、長らく人気を博してきた。往年の2代目「500」の雰囲気を醸すスタイリングの妙が、クルマ好きの紳士のみならず、女性にも大きな魅力として捉えられてきたのだろう。

今年3月には満を持して新型の概要が披露され、やはりアイコニックなスタイリングを継承しつつ、こんどは電気自動車として発売されるという(日本での正式発表・発売時期は未定)。次も楽しめることは確実だが、熟成された現行型をとことん味わい尽くすなら、レースのDNAを感じさせてくれる小さな限定ホットモデル、「595 ピスタ」をおすすめする。

【アバルト「595ピスタ」】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:3,660×1,625×1,505mm
車両重量:1,120kg
駆動方式:2WD
トランスミッション:5速MT/MTA
エンジン:直列4気筒DOHCターボ/1,368cc
最高出力:121kw(165PS/5,500rpm)
最大トルク:210Nm/2,000rpm
価格:¥2,981,818~(税抜)

問い合わせ先

アバルト

TEL:0120-130-595

この記事の執筆者
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで「いかに乗り物のある生活を楽しむか」をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。