機動性に優れ、なおかつ十分な広さの実用性を備えたVW「ゴルフ」。中でも高性能モデルの「ゴルフGTI」は、それ自体がひとつのブランドとして捉えられるほどの人気を誇る。8世代目へと進化した「ゴルフ」にも、もちろん「ゴルフGTI」が加わる。ドイツ製小型車のアイコンが、日本に上陸する日が待ち望まれる。

初代からのレガシーは守られている

ヘッドランプ上に赤い水平のラインが入っているのがGTIのアイコン
ヘッドランプ上に赤い水平のラインが入っているのがGTIのアイコン。
ドライバーを認識するとLEDを光らせたりデジタル技術も新しい手法が採用されている
ドライバーを認識するとLEDを光らせたりデジタル技術も新しい手法が採用されている。

アイコンという言葉は、靴や腕時計をふくめた男の服飾や装身具の世界ではけっこうよく使われる。クルマの世界で似たような例がある。それはフォルクスワーゲンのゴルフGTIだ。

1976年に初代が発表され、アウトバーンでのメルセデス・ベンツ・キラーとも、BMWキラーとも呼ばれた。外観はゴルフなのに中身はスポーツカー。アイコニックな存在感は、2020年に発表されたばかりの第8世代にまで受け継がれている。

本来は3月にジュネーブで開かれる予定だった自動車ショーで発表されるはずだったゴルフGTI Mk8(と、フォルクスワーゲンは表記したりする)。5月14日に、ここでも採り上げたことのある、スカイプを使ったジャーナリスト向けプレゼンテーションを通じて詳細が発表された。

「日常での使い勝手と、真のスポーツカーとしての運動性能が合体したもの」。これは、VWのヘッドオブデザインであるクラウス・ビショフ氏が、私が送った「GTIの未来形は?」という質問への回答だ。

ビショフ氏はGTIを「アイコン」と表現。むやみやたらといじくりまわさないものだという。「フロントグリルの赤い水平ラインと、太いリアクォーターピラーという、初代からのレガシーを守りました」。そうつけ加えたのだ。

ハッチバックボディに、180kW(245ps)の最高出力と370Nmの最大トルクを持つ2リッター4気筒ガソリンターボエンジンを搭載した前輪駆動。標準は6段マニュアル変速機が用意され、オプションで7段のツインクラッチ式変速機DSGが選べるという。

理想の操縦性を実現するための技術が満載

10インチのモニターを2つ並べて使う
10インチのモニターを2つ並べて使う。
左右1対のエグゾーストパイプが特徴的
左右1対のエグゾーストパイプが特徴的。

現在ID.シリーズというBEV(バッテリー駆動電気自動車)に力を入れているフォルクスワーゲンだが、ゴルフの伝統は当面守りぬく覚悟のようだ。

スカイプを通じて新型GTIの解説をしてくれた、車両ダイナミクス&シャシー制御システム責任者のカルステン・シェーブスダト氏によると「スポーツカーとして通用する操縦性の追求」も大きな課題だったという。

そのために搭載されたのが「ビークルダイナミクスマネージャー」。ESCを使ったトルクベクタリング機能の「XDS+(エレクトロニックディファレンシャルロック)」と、ダンパーの減衰力や電動パワーステアリングの特性をコントロールする「DCC(アダプティブシャシーコントロール)」を統合制御する。

電子制御油圧多板クラッチを用いた「VAQ(フロントディファレンシャルロック)」も標準装備。前輪駆動車につきもののアンダーステアを打ち消し、「完璧なニュートラルステアの実現」にあるという。

「とても正確で、反応のするどいハンドリングを実現する」。フォルクスワーゲンはプレスリリースでそう謳う。ゴルフGTI Mk8は、速いスピードでのコーナリングをこなし、どれだけトルクをかけてもタイヤがグリップを失うことはない、という。

いっぽうで、「高速では快適」とシェーブスダト氏。街中の買い物からサーキットまで楽しめるのがゴルフGTIの”伝統”だったことを思い出させてくれる言葉だ。

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。