発信・加速が多い都市部では、モーターのアシストがあるハイブリッド車が効果的だ。経済性にとどまらず、静かで力強い出足の良さは、都市生活者に大きなメリットとなる。ボルボのミドルサイズSUV「XC60」に加わったマイルドハイブリッド車は、扱いやすいボディサイズや上品な内外装のデザインも含め、気分良く走れる魅力が詰まっている。

ボルボ肝煎りの環境対策車

全長4690ミリ、全幅1900ミリ、全高1660ミリ。
全長4690ミリ、全幅1900ミリ、全高1660ミリ。
48ボルトのシステムで動くモーターは40Nmのトルクを積み増し。
48ボルトのシステムで動くモーターは40Nmのトルクを積み増し。

新型コロナウイルスによるCOVID-19によって、環境対策が足踏みしてしまったと懸念する声がある。でもボルボの新型XC60 B5などは着実に前進している証明だ。

2020年5月に日本でも試乗の機会が提供されたボルボXC60 B5は、ボルボ肝煎りの環境対策車だ。いま欧州では従来のガソリンやディーゼルといった内燃機関搭載車を廃絶しようという動きが強い。

たとえば紳士のお膝元、英国ではボリス・ジョンソン首相が、2035年までのエンジン車廃止を宣言、といったぐあいだ。ボルボが本社を置くスウェーデンでも環境大臣が2030年までにエンジン車を廃止すべきと発言しているという。

「ボルボ・カーは、全モデルを電動化させる最初のプレミアムブランドとなります」と同社のサミュエルソン社長兼CEOの言葉どおり、XC60 B5の注目点は、マイルドハイブリッドシステムにあるのだ。

このB5は、マイルドというだけあって、たとえばトヨタ・プリウスやボルボならばT8ツインエンジンなどとは異なる。小さな電気モーターと小さなバッテリーを備え、モーターの出力が足りないところを補うシステムだ。

たとえば、発進直後のごく低回転域、あるいは、高速での巡航からの急加速。内燃機関だと出力軸が高速で回りはじめるのに時間がかかる。そのときモーターが、出力軸が回る手助けをすることで、従来の内燃機関よりはるかにパワフルで効率的な走りを実現するのだ。

ボルボカーズジャパンによると、これだけでも燃費の面でかなり有利のようだ。同社発表の一般道の燃費をみると、ボルボのガソリンエンジン「T5」はリッター9.4キロ、ディーゼル「D4」はリッター11.2キロであるのに対して、「B5」は11.3キロとなっている。

オプションのエアサスが乗り味をさらに際立たせる

AWDシステムは、低負荷時は前輪駆動で燃費を節約。
AWDシステムは、低負荷時は前輪駆動で燃費を節約。
写真のパーフォレーテッド(孔開き)ナッパレザーシートは「インスクリプション」モデルに標準装備。
写真のパーフォレーテッド(孔開き)ナッパレザーシートは「インスクリプション」モデルに標準装備。

実際の走りは、たしかにごく低回転域から力がたっぷりあるかんじだ。アクセルペダルを多めに踏み込まないでも気持よく車両が進んでいくので、燃費がディーゼルよりよいというのがわかる。

そのあとの中間加速はほとんどターボ付きの2リッターエンジンにまかされる。1500rpmあたりからレッドゾーンの手前までは、ボルボのガソリンエンジンを経験したひとにはおなじみのとおりで、トルクがたっぷりでて、力強い加速性が味わえる。

ドライブモードセレクターが装備されていて、スポーティな走りが好みのひとのために、エンジン回転を高めに保つなどする「ダイナミック」モードが設定されているものの、「コンフォート」でいいと感じた。

1800rpmから4800rpmのあいだで350Nmの最大トルクという設定は、車重1.9トンのこのクルマにも充分。アクセルペダルにそこまで過敏でなくても、8段オートマチックはドライバーの意思をすぐ汲み取って適切なギアを選んでくれるし、コンフォートがドライバーにとってコンフォタブルなのだ。

試乗したモデル、XC60 B5 AWDインスクリプションには、オプションの電子制御エアサスペンション「FOUR-C」が装着されていた。XC60はそもそも足まわりの設定が適切で、快適さとスポーティさをバランスさせていると感じていたものの、このエアサスペンションがさらに乗り味を際立たせてくれている。

高速巡航では車体の姿勢がフラットに保たれ、路面のうねりや凹凸に影響されることはない。乗員は終始快適。いっぽうコーナリングは意外なほど鋭い。ステアリングホイールの切れ角にきちんと反応して、ドライバーが思ったとおりのラインがとれる。

ボルボカーズジャパンでは、今後、「B5」と「T8」という電動車がXC60のメインになっていくとしている(もうすこし電動バージョンが増えるかもしれない)。既存のディーゼル「D4」は在庫がなくなれば販売終了になりそうだ。

価格は「B5モメンタム」が634万円、「B5インスクリプション」が734万円。従来の「D4」では「モメンタム」が659万円、「インスクリプション」が759万円なので価格競争力も高い。

【ボルボ「XC60 B5 AWD インスクリプション」】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,690×1,900×1,660mm
車両重量:1,890kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:8速AT
エンジン:直列4気筒DOHCターボ1,968cc
最高出力:184kw(250PS/5,400~5,700rpm)
最大トルク:350Nm/1,800~4,800rpm
モーター最高出力:10kw(13.6PS/3,000rpm)
モーター最大トルク:40Nm/2,250rpm
価格:¥7,340,000(税込)

問い合わせ先

ボルボ

TEL:0120-922-662

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。
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