フォルクスワーゲン(VW)の電動車といえば、「ゴルフ」のガソリンエンジンをモーターとバッテリーに置き換えた「e-GOLF」などがある。デザイン上の違いはわずかで、すれ違ってもそうとは気づかないほどだ。だが、今秋発表されるという電気自動車「ID.3」は違う。これまでの技術の蓄積を新しい車台を使って表現しただけに、インパクトも十分だ。

ゴルフ並みのボディにパサート級の広さを実現

いわゆるグリルレスであるものの、一目でVWとわかるフロントマスク。
いわゆるグリルレスであるものの、一目でVWとわかるフロントマスク。
今回のモデルはリアにモーターを搭載した後輪駆動。
今回のモデルはリアにモーターを搭載した後輪駆動。

フォルクスワーゲンが手がける「ID.3」が2020年秋にいよいよ発表される。最大の特徴は、専用シャシーを持ったBEV(バッテリー駆動の電動車)であることだ。

「ID.3は、かつてのビートルやゴルフがそうだったように、フォルクスワーゲンのまったく新しい試みになる、と言われています。しかし、技術の点からしても、ここまで新しいプロダクトはこれまで存在しませんでした」

スカイプを使ったデジタルプレゼンテーションで、フォルクスワーゲングループのヘッドオブデザインを務めるクラウス・ビショフ氏はそう語った。

なにしろエンジンがない。最大のコンポーネンツはバッテリーとインバーターと駆動用モーター。VWはこれまでにe-GOLFのような電動車を発表してきたが、ID.3はBEV専用シャシーを持つところが決定的な違いである。

「エクステリアはほぼゴルフサイズなのですが、インテリアはパサートなみの広さを実現しています。ID.3のサイズ(全長4261ミリ、全幅1809ミリ、全高1552ミリ)は、検討を重ねた結果決めたものです」

ビショフ氏はサイズに言及。いっぽう、スタイルも、従来のハッチバック車との近似性を感じさせる。

「このクルマではVWフィーリング、つまり各所に、現在のVW車と通じるデザイン要素を採り入れています。たとえば、フロントグリルやリアのコンビネーションランプを水平基調でまとめている点などです」

新たなID.ファミリーにも期待!

未来感が強調されたインテリア。
未来感が強調されたインテリア。
ID.BUZZ(右)やID.4(中央)もデザインスタディでとどまってほしくない。
ID.BUZZ(右)やID.4(中央)もデザインスタディでとどまってほしくない。

フォルクスワーゲンは、より市場に受け入れられやすいことを念頭に、コンセプトを煮詰めていったのだろう。BMWのi3やアウディのe-tronは、初物好きのファーストアドプターを喜ばせるデザインだったが、対照的だといえる。

ただ、ID.ファミリー全体を見渡すと、このあとは、なかなか楽しそうなモデルが出てきそうだ。

ひとつは、「タイプ2」なるマイクロバスを連想させる「ID. BUZZ(バズ)」。もうひとつは「ID. BUGGY(バギー)」。後者は、60年代に米国のブルース・メイヤーズがビートルのシャシーにFRPのオープンボディを載せた「メイヤーズ・マンクス」を思わせるモデルだ。

「BEVは(内燃機関のドライブトレインがないので)デザインの自由度がうんと上がります。その証明のようなものです」。かつて、ビショフ氏はそう語っていた。

ID.ファミリーが今後すべてレトロなモデルになるのではないだろうが、上記のモデルが実現するとしたら、と考えるとクルマ好きとしてはおおいに楽しみだ。

ちなみにID.3のラインナップは、バッテリー出力の異なる3つのモデルで構成されるようで、航続距離も異なる。最長で550キロだという。欧州での価格は300万円台から。比較的買いやすい価格もID.3の大事な武器という。

日本への導入は「ID.ファミリーとして2022年以降」と、フォルクスワーゲン・グループジャパンはしている。

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。
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