2014年開業の「ザ・リッツ・カールトン京都」を皮切りに、空前のホテルラッシュに沸く京都。なかでも、2019年開業の「パークハイアット京都」や「アマン京都」と、全体の客室数を抑え、よりプライベート感を強めたラグジュアリーホテルの進出が相次いでいます。

そして、2020年3月、京都市街を一望する緑豊かな東山の高台に、新たなラグジュアリーホテル「ザ・ホテル青龍 京都清水(The Hotel Seiryu Kyoto Kiyomizu)」が誕生しました。元小学校という希少価値を個性豊かに活かした、歴史と文化をたっぷり感じることができるホテルです。

80年以上にわたり、学び舎として地域に愛されてきた場所は、いったい、どのような形で上質なヘリテージ(遺産・伝統)ホテルへと生まれ変わったのでしょうか。当ホテルを運営するプリンスホテルのセールス&マーケティング部・清野了平さんに、「ザ・ホテル青龍 京都清水」を隅から隅までじっくり案内していただきました。

コンセプトは「記憶を刻み、未来へつなぐ」。元小学校に泊まるという、ほかでは味わえない特別なホテルステイ

清水寺から新撰組ゆかりの史跡が数多く残る壬生を結ぶ松原通。産寧坂(三年坂)入り口よりその松原通を少し下ると、右手にグレーの壁に金字でホテル名が記された看板がみえます。ホテルの敷地に足を踏み入れ、そのまま道なりに進むと、優しいアイボリーのレンガ調の建物があらわれました。

ホテル_1,国内旅行_1,旅行,レストラン_1,京都_1
圧倒される雄大なランドスケープ。新×旧、和×洋が見事に融合した、京都ならではの光景が出迎えてくれます
ホテル_2,国内旅行_2,旅行,レストラン_2,京都_2
小学校だった洋風建築をそのまま活用したホテルの南棟。入口扉の上をよく見ると、丸い時計の跡がうっすら残っています

「当ホテルは、明治2年(1872年)に下京第二十七番組小学校として開校し、昭和8年(1933年)に移転新築された元清水小学校の校舎を保存・活用しながらつくられています。

例えばこちらの南棟。アーチ状の連窓、スパニッシュ瓦葺きの屋上パラペット、それを受ける木製の腕木など、当時の西洋建築の技術が結集した外観をできる限り再現しており、元清水小学校の装飾・デザインの素晴らしさを肌で感じていただけるかと思います」(清野さん)

単に宿泊するだけにとどまらず、歴史的建築の要素も楽しめるのが、ヘリテージホテルの最大の魅力。定番の寺社仏閣に加え、西洋建築の宝庫としても知られる京都の別の顔を、レトロな建物が改めて気づかせてくれます。

ホテル_3,国内旅行_3,旅行,レストラン_3,京都_3
芝生の中庭からの眺め。もとの建物と新しい建物が、対照的な色・デザインでひと目でわかるようになっています

「元清水小学校がこの場所に移転新築されたのは、モダンで画期的な鉄筋コンクリートの小学校が次々と建てられ、伝統的な和風の木造校舎から脱却した時代でした。そのため、新しく増築した部分も、黒を基調にモダンさを出しつつ、主張しすぎないデザインを採用することで、既存の校舎がもつレトロな魅力を際立たせながら、東山の借景にも自然と溶け込むように建てられています」(清野さん)

伝統とモダンが見事に調和するホテルを「街の一部」と語る清野さん。かつて、子どもたちが自由に駆け回ったであろう校庭だった中庭をパブリックスペースと位置づけ、地域の人たちに開放することで、番組小学校(当時の住民自治組織「番組(町組)」を単位として京都に創設された小学校)という地域コミュニティの場として元清水小学校が果たしてきた役割を、建物と一緒に引き継いでいます。

小学校時代の面影を追いかけて。ホテルの中を散策するだけで、ノスタルジックな気分に浸れる

教室、会議室や作法教室、体育館を兼ねた講堂など、小学校時代の特徴を保存・継承しながらデザインされたホテルでは、いたるところで小学校の面影を見つけることができます。

ホテル_4,国内旅行_4,旅行,レストラン_4,京都_4
通るたびにノスタルジックな感情が沸き起こる階段。初めて来た場所のはずなのに、どこか懐かしい感じがします

特に、階段や廊下といった共用部では、梁や腰板張りなど、当時をしのばせる装飾も多く、ホテルの中を散策するだけで、タイムスリップ気分を味わえます。

「宿泊されるお客さまには、館内のあちこちを散策していただくことをおすすめしています。ホテル内の各所には、京都にゆかりのある作家の作品や、幼少期の記憶を呼び起こし、想いを馳せることができるアート作品を約280点展示しています。美術館を巡る感覚で、あわせてお楽しみいただければ幸いです」(清野さん)

ホテル_5,国内旅行_5,旅行,レストラン_5,京都_5
ホテルの歴史にもっと触れたい方は、北棟1Fの「アーカイブコーナー」へどうぞ。小学校として使われていた当時の写真を展示し、建物に刻まれた歴史について知見を深めることができます

八坂の塔を眼前に臨む客室も。品格のあるシンプルモダンなお部屋で、非日常を優雅に過ごす

フロントでチェックインを済ませたら、さっそく宿泊するお部屋へ。フロントのある南棟からお部屋のある北棟へは、中庭を見渡せる渡り廊下を通って移動します。

ホテル_6,国内旅行_6,旅行,レストラン_6,京都_6
渡り廊下から東棟(ホテル本棟)方向の眺め。階段の先には、朝食を食べることもできる開放的なテラス席があります

客室は、スイート、ジュニアスイート、テラスツイン(トリプルユース可)、テラスツイン、プレミアムツイン、デラックスツイン、スーペリアツイン、スーペリアキング、スタンダードキングの9種類。好みや予算に応じて、とっておきの一室を選ぶことができます。

旅行_7,国内旅行_7,ホテル_7,京都_7,レストラン_7
一番広い部屋は、136.3平米のスイート。八坂の塔や京都の街並みを間近に満喫できる特別な一室です

「お部屋は多少のグレードの差はございますが、インテリアの設えや窓から見える景色など、それぞれの部屋に個性を持たせておりますので、どのお部屋に泊まっても特別なひとときをお過ごしいただけるかと思います。

部屋数は全48室と多い方ではありませんが、むしろそこが当ホテルの強みでもあります。お部屋の稼働率も5~7割程度をキープし、なるべく混みあわないように調整することで、ひとりひとりのお客様にゆったりとおくつろぎいただけるよう工夫をしています」(清野さん)

ホテル_8,国内旅行_8,旅行,レストラン_8,京都_8
一番部屋数の多い、45.2平米のスーペリアキング。窓からは階段のある中庭がみえるガーデンビューや、八坂の塔が見えるお部屋もあります

今回、試泊させていただいたお部屋は、元教室を活用した既存棟・客室のスーペリアキング。キングサイズのベッドを備えた、クラシカルなお部屋です。シンプルモダンにまとめられたインテリアながら、天井の梁や格子状の窓枠に校舎の面影を感じます。

ホテル_9,国内旅行_9,旅行,レストラン_9,京都_9
過ごしやすい導線がきちんと計算されており、ベッドで寝転がりながらテレビを見ることもできます

グレーやモノトーンの落ち着いた色調でまとめられたインテリア効果で、入室数秒でリラックスモードへ。

ホテル_10,国内旅行_10,旅行,レストラン_10,京都_10
清潔感のあるバスルーム。ふたりで泊まってもケンカせず使えるペアの洗面ボウルがうれしいポイント
ホテル_11,国内旅行_11,旅行,レストラン_11,京都_11
ホテル宿泊のお楽しみのひとつでもあるアメニティは、国内ホテルでの取り扱いは珍しい「ナチュラ ビセ」のもの

シャワー・バスタブのある浴室の広いこと! 何度でもお湯につかりたくなります。

ホテル_12,国内旅行_12,旅行,レストラン_12,京都_12
浴室からお部屋が見える大胆な仕掛けも。もちろん、スイッチひとつでスモークガラスに切り替えられるのでご安心を

部屋の設備もさることながら、インルーム ダイニング(ルームサービス)も24時間対応OKという充実したおもてなしっぷり。都会の喧噪から離れ、必要なモノがすべてそろったお部屋で、心休まるひとときを優雅に過ごすことができます。

ライブラリーからプライベートバスまで、お部屋以外の施設も充実。自分だけのお気に入りの場所がきっと見つかる

ゆったりまったり過ごせる場所はお部屋以外にもたくさんあります。さっそくのぞいてみましょう。

「ちょっとひと息つきたいな」と思ったら、北棟1Fのゲストラウンジへ。全面ガラス張りの静謐な空間で、窓の外に広がる四季折々の自然を眺めながら、軽食やドリンクを楽しめます。

ホテル_13,国内旅行_13,旅行,レストラン_13,京都_13
宿泊者専用のゲストラウンジ。ひと口サイズのスイーツも、マカロンから八ッ橋まで豊富なラインナップです

本好きの方なら、東棟2Fのレストラン ライブラリー ザ ホテル青龍へ。小説からエッセイ、美術書からコミックまで千冊以上の幅広い本をとりそろえているので、手ぶらで行っても楽しめます。

ホテル_14,国内旅行_14,旅行,レストラン_14,京都_14
朝食会場としても使われる「レストラン ライブラリー ザ ホテル青龍」。かつて講堂として使われていた場所です

ほかにも、プライベートバスやフィットネスジムなど、ホテルの外に出ずとも気分転換できる場所が盛りだくさん。静寂を愛する大人のおこもりステイにピッタリです。

ホテル_15,国内旅行_15,旅行,レストラン_15,京都_15
日没後に表情を変え、さらに魅力が増すのも注目ポイント。夜のお散歩で幻想的な風景をお楽しみください

京都の街を一望できる抜群のロケーションにあり、名だたる名所や史跡に恵まれた「ザ・ホテル青龍 京都清水」。ホテル内にいながらも、京都の季節、文化、美しさを感じることができる仕掛けが散りばめられており、「最近は女性のひとり旅のお客様も増えています」という清野さんの言葉もうなずけます。

ひとつひとつの時間が夢のように濃く、最高の贅沢を味わうことのできる唯一無二のホテルステイ。ここでしか味わえない非日常を、ぜひ体験してみください。

問い合わせ先

ザ・ホテル青龍 京都清水

TEL:075-532-1111

  •  
  • 住所/京都府京都市東山区清水二丁目204-2

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石川聡子
EDIT :
小林麻美