ハイエンドカーブランドの頂点に位置する、ロールス・ロイス。好みに応じて様々な仕様の選択肢があり、オプションも膨大。自分だけの一台をつくることだってできる。それだけに、価格も相当なもの。社会人になったばかりの若い世代が手に入れることは不可能に近いが、それでも近年はユーザーの平均年齢が下がっているという。新しい時代に対応する、デジタル世代に向けた施策をライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏が解説する。

すでにユーザーの若返りに成功

パープルスピリットなる紫色が新しいシグネチャーカラーになる。
パープルスピリットなる紫色が新しいシグネチャーカラーになる。
右の新しいワードマークではすべて大文字で、Motor Carsの扱いが小さい。
右の新しいワードマークではすべて大文字で、Motor Carsの扱いが小さい。

英国人(や欧州人)はアルファベットの書体にこだわる。ロールス・ロイス・モーターカーズが、2020年8月25日に新しいワードマーク(ロゴ)を発表。そこにも、伝統と新しさをミックスした考えかたがあり、注目に値する。

ロールス・ロイスのワードマークの特徴は、従来より「Motor Cars」の文字の扱いが小さくなったこと。それについて、トルステン・ミュラー=エトヴェシュ最高経営責任者は、「ロールス・ロイスはたんなる自動車メーカーでなくなる」と衝撃の発言をしているのだ。

現在ロールス・ロイスは、ユーザーの平均年齢を43歳にまで引き下げるという”悲願”を達成した。これはどこのラグジュリーブランドも同様で、そのためさまざまな施策を打っている。ロールス・ロイスの場合は、2006年発表の、ちょっと悪いかんじの「ブラックバッジ」シリーズの成功が背景にあるという。

新しく獲得したユーザー層を定義して「デジタルネイティブ」とするロールス・ロイスでは、そのため、今回のように新しい方向へと思い切って踏み出した。

新世代のロールス・ロイスを定義して、さきのミュラー=エトベシュ氏は「ハウス・オブ・ラグジュリー」とする。このハウスとはファッション界でよく言うメゾンに相当するものだろう。つまりぜいたくを専門とするブランド。これが新しい時代のロールス・ロイスなのだそうだ。

デジタル世代に順応するプロダクト

右の新しいフライングレディは、前傾姿勢を強調したという。
右の新しいフライングレディは、前傾姿勢を強調したという。
カリナンにも設定された「ブラックバッジ」。
カリナンにも設定された「ブラックバッジ」。

デジタル世代にウケるラグジュリアスなプロダクトはなにか。それについてロールス・ロイスの担当者は、ジャーナリスト向けのオンライン記者会見でも多くを語らなかった。ただしスマート端末を使いオーナー向けのアプリケーション「Whispers」の新しいトップ画面を見せてくれた。

たとえば、ロールス・ロイスが手がけた旅行鞄にはじまり、部屋の内装、ヨットや自家用機の内外装、あるいは旅の計画などのコンシェルジェ機能……さまざまなものが考えられる。

なにはともあれ、第一歩が、ワードマークと、スピリットオブエクスタシーのデザイン変更、そしてシグネチャーカラーの新たな設定なのだ。

ロールス・ロイス車といえば、パルテノンと呼ばれるラジエターグリルと、その上に置かれたラジエターマスコットであるスピリットオブエクスタシーで知られる。

今回、新しいワードマークを手がけたロンドンのデザイン会社「ペンタグラム」では、フライングレディとも呼ばれるマスコットの平面デザインも大きく変更した。

シャドーが省略され、線は簡略化。なにより大きな変更点は、従来のフライングレディは左向きだったものが、新世代は右向きとなったことだ。これはアプリケーションなどの画面に配されることを考えての変更である。

「フライングレディは、ハウス・オブ・ラグジュリーのシンボルとして、さまざまな場面で使っていくことになるでしょう」。記者発表会の場で、今回のブランドイメージ担当者がそう教えてくれた。

ただし車両においては従来のフライングレディはひきつづき採用されるし、RRを重ねたモノグラムも、ほぼ変わらない。

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。
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