「乙(おつ)な味」ってどんな味?語源も味わい深~い!
本日9月8日は、「聖母マリア」のお誕生日だと言われています。
天使のお告げにより、神の子・キリストを胎内に授かったことを知る彼女は、「乙女(おとめ)マリア」とも呼ばれていますよね?
本日は「乙」という字の入った、興味深い日本語をクイズにして参ります。
…というところで、本日1問目のクイズです。
【問題1】「乙(おつ)な味」の「乙」ってなに?
「乙(おつ)な味」「乙(おつ)だね」などの慣用表現に使用される「乙(おつ)」の語源として正しいものを、以下の選択肢の中から選んでください。
1:邦楽の音階
2:和歌の技巧
3:美術品の鑑定用語
…さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 1:邦楽の音階 です。
「乙(おつ)な味」の「乙(おつ)」は、邦楽の音階の呼び名で、高い音を「甲(かん)」、これよりも一段低い音を「乙(おつ)」と呼びます。「乙(おつ)」の音は渋みがあり低めであることから、「趣を感じる深い味わい」を「乙(おつ)」と呼ぶようになったのです。
ですので、わかりやすく華やかな対象よりも、控えめながら奥行きがあったり、さりげない技巧を感じるような対象をほめる表現が「乙(おつ)」です。いかにも日本的な視点の、味わい深い言葉ですよね?
さて、2問目は「乙」の難読クイズです。
【問題2】「乙張り」ってなんと読む?
「乙張り」という日本語の読み方をお答えください。
ヒント:「物事の強弱などをはっきりさせること。」「ゆるむことと張ること。特に、音声の肯定や抑揚。」などの意味を持つ言葉です。
<使用例>
「秋冬のファッションはアイテム数が多いから、乙張りのあるコーディネートを意識してるの。」
…さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 乙張(めりは)り です。
「減(め)り張(は)り」とも表記します。
こちらも邦楽用語「めりかり」から来ているようです。
平安時代の雅楽で、低い音や音階を下げることを「めり」、高い音や音階を上げることを「かり」と呼び、二つを合わせた言葉は、もとは「めりかり」でした。
しかし「めり」が「めり込む=沈むようにへこむ」などの口語にも使用されるようになったのに対し、「かり」という表現は邦楽の中でしか使用されなかったため、
近世ごろから一般的には「めり張(は)り」という言葉が定着した、と言われています。漢字表記としては現代でも「減(め)り張(は)り」「乙(めり)張(は)り」が、多くの辞書に掲載されています。
さて、「乙女(おとめ)マリア」の話題から始まって意外な展開になりましたが、「乙」という字には「若い/幼い/愛らしい」などの意味もあります。「乙女」という言葉の「乙」はこの意味ですね。
本日は「乙」という漢字から成る面白い日本語にスポットをあて、
・(「乙な味」などに使用される慣用表現としての)乙(おつ)
・乙張(めりは)り
という日本語を深掘りしました。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- ILLUSTRATION :
- 小出 真朱