身長156cmのインテリアエディターが、実際に見て・触れて・使ってレポートする連載企画。今回は、インテリアデザイン界の巨匠ピエール・ポランが1950年代に手掛けたデスクをよみがえらせた『F031デスク』をご紹介します。

時を超えて愛される普遍的なデザインプロダクトを取り扱う日本のインテリアショップ「METROCS(メトロクス)」が、ピエール・ポラン本人から認められた正統な復刻定番品です。

異素材ミックスのデスクは、同じ空間にあるほかのさまざまなインテリアアイテムをつなげる役割を担ってくれます。また背面も丁寧に仕上げられているので、空間の真ん中に仕切りのように配置することも可能です。デザインと作りに対して値頃感もあるその魅力を、詳しくご紹介します。

■ピックアップアイテム:「メトロクス」が名作を復刻した『F031 デスク』

『F031デスク』は、無駄を排除し細かなディテールにこだわり抜いた、どこから見ても美しい逸品です。軽やかながらも落ち着いた佇まいは、さまざまなインテリアに調和し上質な空間を演出します。

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【ブランド】メトロクス 【商品名】F031デスク 【写真仕様の価格】¥209,000 【サイズ】幅1300×奥行き610×高さ725(mm) 【材質】天板:メラミン化粧板 取手、脚部:スチール 引き出し:オーク

元となった『CM141』は、2009年に逝去したピエール・ポランが1950年代にデザインしたもので、トーネット社から1956年に発表後約10年間だけ製造されていました。

ピエール・ポランは、1970年代にポンピドゥー大統領からフランス大統領官邸であるエリゼ宮の内装の改修を依頼されるなど、フランスを代表する偉大なデザイナーで、スペースエイジを代表する『リボンチェア』のように、1960年代以降は彫刻的なデザインで知られています。

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代表作『リボンチェア』に座るピエール・ポラン。

彼の初期作品に見られる直線を基調としたミニマルなデザインの『CM141』も、彼の審美眼で遊び心とエレガントが両立した傑作です。

1996年頃、「メトロクス」の代表がヨーロッパ出張の際に立ち寄ったパリのアンティーク街・クリニャンクールのショップで、偶然にこのデスクのオリジナルモデルを発見し購入。その後、販売中止となった名作の再生産事業を手掛けていくなかで、当然のように候補の一つとなりました。

オリジナルモデル『CM141』を忠実に再現しつつも、日本の職人の優れた技術による現代的な改良も採用し、エレガントかつ手の込んだ美しい『F031デスク』が完成したのは2003年。サンプルを確認したピエール・ポラン本人も「パーフェクト!」とそのクオリティを認め、以後約20年にわたり、ロングセラーとなっています。

■魅力その1:同じ空間の中にあるインテリアアイテムをつなげてくれる

『F031デスク』は、傷がつきにくいマットな質感の天板、空間に温かみをプラスする木材の引き出しにスチールの取手、強度とデザインを両立させた安定感のあるスチール製の脚など、機能に合った素材を組み合わせて仕立てられています。

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引き出しは左右選択可能で、オークとチークの2種。天板はブラックとホワイトの2色展開。

このデスクが一つあることで、同じ空間にある木製キャビネットや床材、スチールのデスクランプやスチール脚の椅子などに関連性が生まれて、インテリアをまとめ上げてくれます。

■魅力その2:設置場所を選ばない背面仕上げだからリビングにも!

壁面に向かって設置される前提で裏面が仕上がっていないものも多いデスクですが、こちらは背面も美しく仕上がっています。そのため、リビングダイニングの1コーナーに窓の外を見られるようデスクを設置しても、絵になるのです。

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ほっそりしたスチール脚なので床面を塞がず、広さを感じさせてくれるのもポイント。

定番の幅1300mmは、横に広めで資料が広げやすいサイズ感。深さの異なる2段の引出しは、A3サイズが入る大きさで十分な収納力があります。仕事終わりにはノートPCや資料をそのまましまえて、デスク上をすっきりと保つことができます。特にリビングにワークデスクを置く方には、うれしいですよね!

こうしたちょっとした気遣い一つでインテリアの自由度がぐっと高まるだけでなく、そこで働くときの気分も変化します。ワークライフバランスの質を向上させたいといった気持ちを優しくエスコートしてくれるデザインも、大きな魅力のひとつではないでしょうか。

■魅力その3:日本のものづくりの技でこだわり抜いたディテール

単純に見えるデザインこそ、ディテールの一つ一つの仕上がりに名作の風格が宿っています。復刻版が誕生するにあたって、オリジナルを手掛けたデザイナー本人がOKを出しているというのは、実はとても大切なこと。こだわっているポイントを一番把握しているのは、デザイナー自身ですから。

例えば45度にとめてある引き出しの箱の木目の美しさ。引き出しの収まりや堅牢な作り、閉めた感じの手の感覚。異素材のものが組み合わさっているのにもかかわらず、天板はまるで1枚の素材のように滑らかにつながっています。

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左/ぴったりと45度で合った木目が美しい角の仕上がり。右/軽やかに引けてしっかりとしまる引き出し。強度のいるところは:堅牢な作りをしているのも重要。

家具の名産地、北海道・旭川近郊の家具工場で作られる最高峰の技術が叶える天然木の美しい木目を生かした仕上がりは、メイド・イン・ジャパンだからこそ実現できる品質。デザイン性の高さもあいまって、非常に値頃感があります。

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引き出しの内側にある真鍮のプレートには、デザイナー手書きのサインと「メトロクス」のロゴが。

今回は、海外から仕入れたヴィンテージアイテムをはじめ、国境や時代を超えて愛されるデザインプロダクトを取り扱う「メトロクス」が名作を復刻した、『F031デスク』をご紹介しました。

オリジナルを生み出したデザイナーの意図をしっかりと汲みながら、現代の暮らしに合うメイド・イン・ジャパンクオリティの逸品を、あなたの暮らしの空間にも取り入れてみませんか?

※掲載商品の価格は、税込みです。

問い合わせ先

  • メトロクス東京 
    営業時間/平日12:00~18:00、土曜11:00~19:00
    定休日/水曜・日曜・祝日
    TEL:03-5777-5866
    住所/東京都港区新橋6-18-2

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)