近年のマツダ車人気を支えるSUVの中核モデル、CX-5は、販売台数の実に7割がディーゼルエンジン車だ。その静かでパワフルな走りの魅力は前々回の当連載で書いたが、今回はもうひとつのパワーユニットであるガソリンエンジン車をクローズアップ。重さを感じさせない軽快な乗り味は、即興のオーダーメイドの旅を後押ししてくれる。

軽快なガソリンエンジン車で能登を走る

国道249号線を北上。間近で見る七尾北湾はおだやかで、気持ちがほぐれる。
国道249号線を北上。間近で見る七尾北湾はおだやかで、気持ちがほぐれる。

 優れた経済性、そして低速からみなぎるようなトルクを生み出すディーゼルエンジン車が人気の中心であるCX-5において、あえてガソリンエンジン車を選ぶ理由のひとつに、軽快感がある。過給器なしの直4エンジンは2リッターと2.5種類があり、前者は前輪駆動のエントリーグレード用。だから、おすすめは断然2.5リッターだ。最高出力190馬力を発生する6000回転まで回さずとも十分なパワーで、アクセルペダルを踏んだときのエンジンの反応、すなわち吹け上がりもいい。ディーゼルエンジン車はさすがの出来栄えとはいえ、乗り較べてみると、やはり振動と音の静かさではガソリンエンジン車に軍配が上がるし、加えてロングノーズボディのCX-5を、よりスポーツカー的なキャラクターへと印象付ける効果も、ガソリンエンジン車にはある。どちらを選ぶかは好みの問題だが、2タイプのキャラクターの違いを体感してから購入を決めるのをおすすめする。

 今回はそんなCX-5の軽快な走りに触発されて、和倉温泉で有名な石川県七尾市を起点に、能登地方を北上するドライブを楽しんだ。内浦と呼ばれる能登半島の東側は、比較的穏やかな気候で景勝地も多い。その割に交通量が少なめで、ストレスのないロングドライブが満喫できるのだ。

かつて、のと鉄道の駅があった場所を発見。ホームの名残を見ることができた。
かつて、のと鉄道の駅があった場所を発見。ホームの名残を見ることができた。
シフトレバー横のスイッチをスポーツモードに切り替えると、アクセル操作に応じて、より力強い加速が味わえる。
シフトレバー横のスイッチをスポーツモードに切り替えると、アクセル操作に応じて、より力強い加速が味わえる。

クルマでしか行けない宿を目指して

知る人知る宿、「ふらっと」に到着。自動車専用道路の最寄りは、能登有料道路の穴水出口。国道249号線に近い高台にある。
知る人知る宿、「ふらっと」に到着。自動車専用道路の最寄りは、能登有料道路の穴水出口。国道249号線に近い高台にある。

 能登半島を一周する国道249号線の内浦側に並行して走る、のと鉄道七尾線は、かつては北部の輪島まで伸びていたものの、現在は途中の穴水から先が廃線となっている。過疎化や道路網の発達で、クルマでしか行けない場所は年々増えているのだ。だが、本当に静かな休日を過ごすなら、あえてそうした場所にクルマを走らせるのもいい。七尾北湾を過ぎ、しばらく走った高台にある小さな宿「ふらっと」は、大人のクルマ旅におすすめだ。女将のご両親が営んでいた民宿を引き継ぎ、オーストラリア人のご主人が振るう能登イタリアンが自慢のこの宿では、豊かで奥深い能登の文化を心ゆくまで堪能できる。穏やかな海の景色を見渡せる高台からは、運が良ければ立山連峰も目にすることができるという。忘れ得ぬ旅の記憶を求めてハンドルを握るのに、これほどふさわしい場所はない。

ダイニングルームから富山の内湾が一望できる。かつてはこの下に鉄道が走っていた。
ダイニングルームから富山の内湾が一望できる。かつてはこの下に鉄道が走っていた。
客室は4室につき、1日4組限定。能登の郷土食を継承する独創的なイタリアンを食しながら、静かな休日が過ごせる。
客室は4室につき、1日4組限定。能登の郷土食を継承する独創的なイタリアンを食しながら、静かな休日が過ごせる。

砂浜にはやはりSUVがベスト!

ドライブ好きなら一度は訪れたい、千里浜なぎさドライブウェイ。晴天時の気持ちよさは格別だ。
ドライブ好きなら一度は訪れたい、千里浜なぎさドライブウェイ。晴天時の気持ちよさは格別だ。
CX-5の最低地上高は210㎜。オフロードを安心して走れるクリアランスを誇る。
CX-5の最低地上高は210㎜。オフロードを安心して走れるクリアランスを誇る。

 CX-5の軽快なフィーリングは、予定していたドライブに、即興で新たなルートを加えたいという気持ちを抱かせた。真っ先に脳裏に浮かんだのは、以前人づてに聞いたことがある、砂浜を走れるという特別な場所だった。スマートフォンで情報を調べ、クルマを一路南西へ向ける。行き先は、能登半島の西の付け根に位置する羽咋。日本海を望む千里浜には、日本で唯一の、砂浜での走行が可能な千里浜なぎさドライブウェイがあるのだ。きめ細かい砂粒が海水を吸ってぎゅっと締まったこの場所は、端の部分を走ったり、重量級のクルマでないかぎりスタックの心配がない。その点、4WDのCX-5なら不安はないし、重量も約1.6トンと、ミドルクラスSUVにしてはそれほど重くはない。即興で訪れたとはいえ、CX-5の優れた走破性能を実感できたのは大きな収穫だった。

CX-5なら即興の旅も楽しい!

UFOの町・羽咋の名物施設、コスモアイル羽咋に到着。千里浜なぎさドライブウェイから10分ほどで着く。
UFOの町・羽咋の名物施設、コスモアイル羽咋に到着。千里浜なぎさドライブウェイから10分ほどで着く。

 羽咋を訪れたからには、宇宙科学博物館のコスモアイル羽咋を通り過ぎるわけにはいかない。古くからUFOの目撃例が多いとされる土地にちなんだ個性的な円盤型建造物が、男の知的好奇心をくすぐるのだ。果たして、館内には米ソ冷戦時代の宇宙開発競争で使われた探査船のレプリカをはじめ、一部現物も展示されていて、決して荒唐無稽な展示内容ではないことがわかった。といいつつ展示フロアの最後には、ロズウェル事件〜1947年にアメリカのニューメキシコ州でUFOが墜落したとされる事件〜をオカルトチックに再現した宇宙人の模型が横たわっていたりするのだが、虚実ないまぜの展示の面白さは、足を運んだ者にしかわからない。

 綿密な計画を練って出掛けるのが旅の原則とはいえ、ふと思いついた場所に直行できるのは、クルマ旅ならでは。そんなとき、軽快で路面状況を選ばないCX-5なら不足はないし、SUVならではの大容量ラゲッジは、予想外に土産が増えてもしっかり積んでいける。この、オーダーメイド感覚の贅沢なクルマ旅を支えてくれるCX-5は、自由と刺激を求める紳士に、今最もおすすめしたい国産車である。

〈マツダ・CX-5  25S Lパッケージ 〉 
全長×全幅×全高:4545×1840×1690㎜ 
車両重量:1590~1610kg 
排気量:2488cc 
エンジン:直列4気筒DOHC 
最高出力:184PS/6000rpm 
最大トルク:245Nm/4000rpm 
駆動方式:4WD 
トランスミッション:6AT 
価格:321万3000円(4WD・税込) 
■問い合わせ先 マツダコールセンター 
TEL:0120・386・919 
http://www.mazda.co.jp/

〈民宿 ふらっと〉
住所:石川県鳳珠郡能登町矢波27字26番地3 
TEL:0768・62・1900 
http://flatt.jp/

この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。