モノづくりを支える作り手の技術や表現は、世界共通の無形の文化であり、フランスでは1994年から伝統工芸の最高技能者に対して「メートル・ダール」(フランス人間国宝)を授与している。そんな彼らの作品の特徴は、芸術にまで高められた超絶的なテクニック。現在、東京・上野の国立博物館で展示中だ。日本の芸術首都・上野で俗世からひととき離れ、天にも昇るような芸術性豊かな体験をするイベントに足を運ぶことは、自分の装いだけでなく、生き方までも見つめ直すきっかけにもなる。

フランス版・人間国宝「メートル・ダール」

陶芸作家のジャン・ジレルは、南宋時代の中国で生み出された曜変天目茶碗に魅せられ、独自の研究を40年以上続けてきた。角度によって様々な模様を浮かび上がらせる101点の茶碗群を眺めていると、宇宙にいるような不思議な感覚に浸れる。

 メンズプレシャスは創刊以来、世の名品を紹介し、それを支えるつくり手の技や歴史を掘り下げてきた。素材の特性を理解したうえで、時には超絶的な技巧を用いて、無二の機能と美しさを兼ね備えた服飾や生活の道具を創造する一流の手しごとは、決して失われてはならない無形の文化であり、芸術全般においては、人間国宝の通称で呼ばれる「重要無形文化財保持者」として国が支援していることは、多くの方がご存知だろう。

 この、日本の人間国宝にちなんだ制度がフランスにもある。それが「メートル・ダール」(フランス人間国宝)で、フランス文化・通信省によって伝統工芸の最高技能者に授与されている。その数は2016年時点で124名にのぼる。

芸術イベントは男のセンスを磨く!

最年少(38歳)で「メートル・ダール」の認定を受けた扇作家、シルヴァン・ル・グエンの作品。アンティークの扇を修復して身につけた技術と、優雅で官能的なセンスによって生み出される作品は世界中の美術愛好家や王族に支持されているほか、いくつかの映画にも作品を提供している。

 そして現在、欧州の伝統文化を咀嚼し、未来を表現する彼らの技と美をこの目で確かめられるイベントが、東京・上野の東京国立博物館で開催されているのをご存知だろうか。展示されているのは、「メートル・ダール」に認定された13名の作家と、まだ認定はされていないものの、すでに高い評価を受けている作家2名の作品およそ200点。ここに紹介する一部の作品の写真を見ていただければ、その素晴らしい芸術性を感じ取っていただけるだろう。とはいえ、立体芸術は現物を間近で捉えて、初めてその全体像を理解できるもの。名品をこよなく愛する紳士なら、作家ごとにテーマ性をもたせたブースを回るごとに、新たな発見と人がつくりし美の可能性に魅了されるに違いない。薄着の季節が去り、服の組み合わせが楽しくなる今こそ、豊かな感性を育む芸術イベントは足を運ぶ価値ありである。

羽根細工作家、ネリー・ソニエの作品。繊細な素材を巧みにアレンジしてつくりだした生命感あふれる羽根細工は、ジャン=ポール・ゴルチエをはじめ、ファッションブランドとのコラボレーションでも知られている。記事トップに据えた龍の作品も、彼女の手による。
1枚の布でつくられた、折り布作家、ピエトロ・セミネリの作品は、生々しく妖しい雰囲気を醸し出している。それは緻密な計算に基づいて折られた複雑な造形が、肌というもっとも身近な体の部分の核心に迫っているよう思えるからか……。

(問い合わせ先)
■フランス人間国宝展
開催期間:9月12日(火)〜11月26日(金)
会場:東京国立博物館・表慶館
住所:東京都台東区上野公園13-9
観覧料:一般当日券1400円(一般前売り券1200円)
TEL:03-5777-8600
http://www.tnm.jp

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