メンズファッションが高級路線に向かいはじめた1990年代半ば、これを機に高級ブラシづくりに転じた、ブラシ職人の石川和男さん。カシミヤやベビーカシミヤなど、高品質な服が出回りはじめ、それまでの豚毛を素材にしたブラシの限界を感じた。

豚毛に代わって選別した素材は、習字用の毛筆に使われる「尾脇毛(おわきげ)」。馬の尻尾の脇に生える希少な「尾脇毛」は、毛の当たりがやわらかく、コシもしっかりとしている。その毛を使い、上質なコートやスーツの生地を傷めずに強くかけられる、新しいブラシを完成させた。その上質なブラシがファッション業界に広まり、ブラシ職人の石川さんの名が知られることになった。

ビキューナもカシミヤもこれ一本で

羊毛100%のビキューナ用ブラシから発展した、羊毛と「尾脇毛」をブレンドした究極のブラシ。性質の異なる2種類の毛を混ぜ合わせ、なじませる巧みな技術で誕生した。¥200,000
羊毛100%のビキューナ用ブラシから発展した、羊毛と「尾脇毛」をブレンドした究極のブラシ。性質の異なる2種類の毛を混ぜ合わせ、なじませる巧みな技術で誕生した。¥200,000 ※税抜、参考価格

そこから進化したブラシが、神の繊維と呼ばれる獣毛繊維の最高峰、ビキューナ服地用の一本だ。羊のお腹部分のごく限られたまっすぐな毛を100%使用したブラシをつくった。さらに「カシミヤにも満足できるブラシを」という顧客からの要望で、羊毛と「尾脇毛」をブレンドした究極のブラシをつくり上げた。まさに、ブラシ職人のプライドをかけた極上ものだ。 

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池田 敦(パイルドライバー)