年々増え続けるプレミアムSUVに興味を抱く御仁は、何を基準に比べているだろうか。スポーカーもかくやの身のこなし、スタイリング、インテリアの選択肢、静粛性、サウンドシステムの音響特性……どれも大事に違いないが、「行動範囲を広げる」というSUV本来の意義を重視するなら、ランドローバーこそが本物だ。世界でも希少な4WD専業ブランドがつくるクルマは、ひときわ冒険的でリッチな世界観に満ちている。
背の高いプレミアム・サルーン、ヴェラール新登場!
ドライバーのみならず、同乗者にも圧倒的な人気を誇るのが、大型で広い室内にラグジュアリーな装備をもつプレミアムSUVだ。人気に火がついたのは2000年代初頭だが、開祖と呼べるのはランドローバーの、初代レンジローバーで、その誕生は1970年と古い。もともと軍用のランドローバー(のちにディフェンダーと改名)をつくっていた会社が、悪路走破性に秀でた実用重視のクロスカントリー4WDに快適性をミックスすることを思い立ち、あらゆる路面状況で楽しめる万能車という新しい価値をつくりだしたのだ。日本への正規輸入が始まったのは1990年からと遅かったが、英国の貴族文化を知り、ラグジュアリーな仕立てを好む通な大人の間では、ずっと前から静かな人気を誇っていた。
どのジャンルでもそうなのだが、市場が確立されると商品は細分化していく。現在、レンジローバーシリーズは、デザインや装備面をスポーティにしたレンジローバースポーツがあり、コンパクトサイズのレンジローバーイヴォークがあり、この夏からは第4のモデル、レンジローバーヴェラール(以下、ヴェラール)が加わった。最新モデルだけに、デザインは特に洗練されていて、ボディパネルの出っ張りや継ぎ目の少ないシームレスなスタイリングが実に美しい。乗り味はレンジローバーの伝統でもある、鷹揚としたフィーリング。物理スイッチを減らしたコンソールパネルの操作感といい、まるで背の高いプレミアム・サルーンに乗っている気分だ。
トラディショナルなディスカバリーも進化!
一方、ランドローバーにはカジュアルラインともいうべきディスカバリーシリーズがあり、こちらも今年、5代目にモデルチェンジしている。カジュアルラインとはいえ、その堂々たる存在感や細部のつくりは豪勢で、クルマに詳しくない人が見たら、きっとレンジローバーといわれてもそう信じてしまうに違いないし、4WD性能や乗り味も、誰もが体感できるほどの差はない。強いていえば、3列目シートまでの天井の高さをしっかり確保した実用重視の空間設計と、オフロードでもハンドル操作だけで進むクルーズコントロールといった、旅やアウトドアで役立つ機能を重視したのがディスカバリーの特徴。その点、ヴェラールは、SUVにしては低めの車高をもつデザイン重視の設計であり、レンジローバーシリーズの未来を提示した、攻めのクルマであることを顕著に感じさせる。
ともあれ、リッチで居心地のいい室内やオンロードでの乗り味も、4WD専業ブランドならではの卓越したクロスカントリー性能があって、初めて光るというもの。それは、水に浸かっても走れる深さを示す渡河水深がディスカバリーで実に90センチ、ヴェラールでも65センチ(エアサス仕様)ということからも明らかだ。冒険心を忘れない紳士なら、数あるプレミアムSUVのなかから、まずは本物の条件を備えたランドローバーを乗り比べて欲しいと思う。モデル選びはそれからだ。
〈ランドローバー・レンジローバー ヴェラール R-ダイナミック SE>
全長×全幅×全高:4820×1930×1685㎜
車両重量:2060〜2080kg
排気量:2994cc
エンジン:V型6気筒DOHCスーパーチャージド
最高出力:380PS/6500rpm
最大トルク:450Nm/3500rpm
駆動方式:4WD
トランスミッション:8AT
価格:1129万円(税込み)
■問い合わせ先 ランドローバーコール
TEL:0120・18・5568
https://www.landrover.co.jp/
〈ランドローバー・ディスカバリー HSE ラグジュアリー ディーゼル〉
全長×全幅×全高:4970×2000×1890㎜
車両重量:2380kg
排気量:2992cc
エンジン:V型6気筒DOHCターボ
最高出力:258PS/3750rpm
最大トルク:600Nm/1750rpm
駆動方式:4WD
トランスミッション:8AT
価格:901万円(税込み)
■問い合わせ先
ランドローバーコール
TEL:0120・18・5568
https://www.landrover.co.jp/
- TEXT :
- 櫻井 香 記者