ジープといえば、ゴツい見かけのラングラーが定番だ。いっぽう都市生活者のあいだでは、ラングラーの要素をうまく採り入れたコンパクトジープ「レネゲード」の人気が高い。さきごろ、プラグインハイブリッド「4xe」が追加されたことで、レネゲードの魅力が増した。
モーターで最大48km走る
そもそも、レネゲードは、アウトドア用品や定番家具に通じるいいかんじの”道具感”をもった、全長4255ミリのコンパクトサイズのSUVだ。ミラノなどでは、得意げな顔をして運転する男たちの姿をよく見かけたものだ。
そこに加わったのが、「レネゲード4xe」である。FCA(フィアット・クライスラー・アルファロメオ)の日本法人であるFCAジャパンにより、2つのグレードが、2020年11月に発売された。
フル充電ならモーターだけで48キロの航続距離を持つ。トータルの燃費は、「LIMITED」でリッターあたり17.1キロ、よりパワフル(96kWに対して132kW)な「TRAILHAWK」は16キロ。車重が2.5トンの4WD車としては良好な数値だ。
メカニズム的な特徴がしっかりある。4×e(フォーバイイー)というシステムは前輪と後輪を別べつの動力で駆動する。前輪は、1.3リッターエンジンと電気モーターを組み合わせたユニットで、後輪は専用の電気モーターで。前後は物理的につながっていない。
フロントは1.3リッターターボエンジンにモーターの組み合わせ。270Nm@1850rpmのエンジントルクに加え、モーターが50Nmのトルクを積み増す。リアは250Nmのモーターが駆動する。
「エレクトリック」と「ハイブリッド」という走行モードでは基本的に電動。つまり後輪駆動で走る。バッテリー容量が減ってきたばあい、エンジンがかかって充電が開始される。それでももっと積極的に充電したい場合は、3つめの走行モード「Eセーブ」が選べる。
モーターによるエレクトリックモードでの走行感覚は静か、そして力強い。250Nmもトルクがあるうえ、モーターの特性として、アクセラレーターを踏んだとたん、この最大トルクを発生するのだから、たとえ従来のガソリンエンジン車より300キロちかく重くなっても、充分すぎるほどパワフルなのだ。
操舵感覚はナチュラルで、レーンチェンジにしてもコーナリングにしても、きびきびとした身のこなしをみせてくれる。バッテリーを床下に積んだことは、重心高が低くなって操縦性に寄与するというメリットを生んだ、とジープでは説明する。
電動化はオフロードで有利に働く
個人的には、装備が豊富な「LIMITED」もいいけれど、パワーがあるぶんよりスムーズな走行感覚を備えた「TRAILHAWK」に好感を持てた。後者は、ジープ製品の知識があるひとならご存知のとおり、よりオフロードテイストを強めた仕様である。
「電動化すると、オフロードではとくに、緻密なトルク制御が可能になり、走破性が高くなります」。ジープブランドのグローバル社長を務めるクリスチャン・ムニエ氏は、オンラインでの記者会見で誇らしげに語った。
EV化でオフロードの操作性を高めているというのが、ジープらしい。「はやくオフロードで乗ってほしいですね」とムニエ氏が、オンラインで視聴している日本のジャーナリストたちに語りかける場面もあって、ほほえましかった。
じっさいに、レネゲード4×eには、「4WDロック」「4WDロー」「ヒルデセントコントロール」が設定されている。同時に、「オート」「スノー」「マッド&サンド」「ロック」とドライブモードが切り替えられる。つまり万能選手である。
今回は「スポーツ」が新設された。エンジンが始動して、モーターとの相乗効果できびきび走る。燃費を別にすれば、もっとも楽しめるモードであるのはたしかだ。ジープはファントゥドライブを忘れていない。
燃費規制をクリアしつつ、走行性能を高めるのだから、意外なことに、電動化はジープにとっての福音のようだ。「これからの3年間で、すべてのジープモデルを電動化する」とムニエ氏。電動化とはマイルドハイブリッドを含めた概念であるが、なかには、純粋なバッテリー駆動EVモデルの計画もあるそうだ。
価格は、「LIMITED 4xe」が498万円、「TRAILHAWK 4×e」が503万円である。前者にはアダプティブクルーズコントロール、さらにレザーシートやヒーテッドステアリングホイールといった快適装備が備わる。キャラクターのちがいにより、選ぶ楽しみがあるということだ。
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- TEXT :
- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト