ダークブラウンのツイードジャケットにネイビーのタートルネックを合わせ、足元はブラウンスエードのチャッカブーツ。映画『ブリット』で見せるスティーブ・マックイーンのトラディショナルな着こなしは、いつ見ても格好いい。『ブリット』には、有名なカーチェイス以外にも見どころは多い。
映画の主役はいつだってオープンカーだった
幌を開けても閉めてもドラマティックな舞台に
たとえば、恋人のオープンカー、ポルシェ『356』の助手席で風を受けながら、目的地に着くなり颯爽とドアを開けて駆けていくシーン。着用する衣装の身幅や着丈を徹底的に研究していたマックイーンの、計算された動きもさることながら、色もデザインもやわらかなオープンカーの存在が、まねしようにもできない洒脱さを生み出している。
思えば、映画にはオープンカーが見せ場をつくるシーンが多い。『男と女』では幌に雨音が響くフォード『マスタング』の車内で、大人の恋がゆっくりと育まれる。オードリー・ヘプバーンの着こなしをお立ち台的に見せる、『おしゃれ泥棒』でのジャガー『Eタイプ』も鮮烈だ。そして『レス・ザン・ゼロ』や『溝の中の月』では、いずれも真っ赤なオープンカーが男と女を結び付ける重要な役割を担う。
屋根のないむき出しの空間で、乗り手は移ろう景色やにおい、音に刺激され、おのずと内に秘めた思いがあらわになっていく。自由で、エレガントで、ドラマティック。だからこそ、オープンカーは古くから物語を紡ぐ主役となってきた。最新モデルは一部を除いて走行中に幌を開閉できるうえ、遮音性・耐候性も昔に比べて格段に向上している。それでも密室化著しい屋根付きのクルマと比べれば、違いは明らかだ。
空気が澄んで木々の葉が色づくこれからの季節は、オープンカーのメリットを体感する絶好の機会。厳しい社会状況のなかで自室にこもりがちだった身としては、旅を楽しむ移動手段として、また装いにこだわれるのも大きな魅力だ。
そこで今回、本誌エディターや自動車の専門家が、個性豊かな4台を徹底的に試乗。その魅力に加え、スタイリングのヒントとなるファッションアイテムにも思いを巡らせた。
風がウインドシールドを乗り越えて、髪をぐしゃぐしゃにしたり、旅程のすべてが雨だった、なんていうこともあるだろう。でも、大変な目に遭うほど、思い出は鮮やかに刻まれるもの。新しい一歩へのきっかけになれば幸いだ。憧れのマックイーンを目ざして、映画のようにドラマティックなオープンカー生活を楽しもう!
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2020年秋号より
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