直線ではパワーで負けても、地を這うようなコーナリングで挽回する…。かつて、スーパーカー小僧を熱狂させた漫画の主人公よろしく、峠で痛快な走りを堪能できるハッチバックが登場した。実用性にも長け、ふたつの顔を使い分けられるの、器用な「マシン」だ。

スーパーカーブームを体験した紳士へ

従来モデルに比べて精悍さを増した、ルノー「メガーヌGT」。前後のライトはLED製だ。
従来モデルに比べて精悍さを増した、ルノー「メガーヌGT」。前後のライトはLED製だ。
発表イベントでは、ルノーのF1カーも展示されていた。「メガーヌGT」にはレースの技術が惜しみなく投入されている。
発表イベントでは、ルノーのF1カーも展示されていた。「メガーヌGT」にはレースの技術が惜しみなく投入されている。

 1970年代に巻き起こった空前のスーパーカーブームを覚えているだろうか。代表されるイタリアの高性能スポーツカー(エキゾチックカーとも呼ばれた)を中心に、その希少性とスピードを体現したスタイリングは、当時の少年たちをおおいに刺激した。ブームの火付け役となったのは、漫画。少年ジャンプで連載されていた「サーキットの狼」(作・池沢さとし/現・早人師)である。個性的なキャラクターがそれぞれスーパーカーを駆り、公道やクローズコースでしのぎを削る同作の初期において、主人公はロータスのミッドシップスポーツカー「ヨーロッパ」を操り、大排気量のV12エンジンを積んだフェラーリやランボルギーニと互角か、それ以上の速さを見せる。

ルノーのモータースポーツ部門が手がけた「コーナリングの狼」

インフォテイメントシステムも最新のものを装備。コクピット回りは丁寧な仕上げが光る。
インフォテイメントシステムも最新のものを装備。コクピット回りは丁寧な仕上げが光る。

 ロータス「ヨーロッパ」に搭載されるエンジンは、⒈6リッターの直4で、最高出力は120馬力少々。直線でライバルに抜かれても、低重心・軽量設計を生かした抜群のコーナリング性能、そしてドライバーの超絶テクニックを駆使してコーナリングで挽回するのが、痛快だった。ロータスは今も小型スポーツカーをつくっているが、硬派な伝統を頑なに守り、2座、もしくは2+2のモデルしか選べない。ストイックなスポーツカー好きにはたまらないとはいえ、1台で生活のすべてをまかなうのは難しい。だが、悲観することはない。ロータスは無理でも、ルノーがある。モータースポーツ部門のルノー・スポールが手がけた最新モデル「メガーヌGT」は、普段乗りしやすい実用性を持ちながら、ハイテクを駆使して峠を自在に駆け抜ける、「コーナリングの狼」である。

1秒間に100回の演算処理で後輪の向きを制御!

ヘッドレスト一体型のスポーツシートを装備。表皮はアルカンターラだ。
ヘッドレスト一体型のスポーツシートを装備。表皮はアルカンターラだ。

 フランスのクルマは、伝統的に小排気量できびきびと走るのを持ち味とするが、「メガーヌGT」も排気量は⒈6リッターと小さめ。それでも直噴技術とターボの過給で最高出力は205馬力に達し、7速のデュアルクラッチトランスミッションで最適なパワーレンジを選べる。そして最大の特徴が、4輪操舵システムの搭載だ。前輪だけでなく、後輪も向きを変えることでコーナリング性能を高める技術は以前からあったが、「メガーヌGT」のそれは、1秒間に100回の演算処理を行って後輪の向きを変えることで、滑らかで安定感のあるコーナリングを可能にしている。それも、低速では前輪と逆方向に向きを変えて駐車やUターンをしやすくし、60km/h以上では前輪と同じ方向に向きを変える器用ぶりだ。

 アクセルの反応や変速、ステアリングの手応えをセットで変えられる走行モードも付き、俊敏さは現行のフランス車のなかでも随一。街中ではマイルドに、そして峠ではレーシングカーさながらの俊敏さが楽しめる「メガーヌGT」は、往年の漫画の主人公に憧れた紳士なら、思わずニヤリとしたくなる、変幻自在の「マシン」である。

〈ルノー・メガーヌGT〉
全長×全幅×全高:4395×1815×1435㎜
車両重量:1430kg
排気量:1618cc
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
最高出力:205PS/6000rpm
最大トルク:280Nm/2400rpm
駆動方式:2WD
トランスミッション:7AT
価格:334万円(税込)
■問い合わせ先
ルノー・コール
TEL:0120-676-365
http://www.renault.jp

この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。