17世紀末、オーヴィレール大修道院のドン・ピエール・ペリニヨン修道士が生涯をかけて生み出したシャンパーニュ。艶やかな泡立ちと香かぐわしさの中に宿る神聖なる彩りが、進化を止めないドン ペリニヨンを導いた、後光のように映る。

ときに際立った個性は扱いにくさに繋がるものだが、ドン ペリニヨンからは、それらがすべて排除され、完璧なスタンダードに磨き上げられている。そして、だれもが頷かざるを得ないほどの完成度を誇る。

それこそがドン ペリニヨンの個性であり、最大の魅力でもある。

それはほかのプレステージ・シャンパーニュと飲み比べてみれば、よくわかる。

決して揺らぐことのない、明確なスタイルの継承

ドン ペリニヨンには揺るぎない姿勢がある。その基本のひとつが、単一年の、最高品質の葡萄のみが用いられていること。つまりドン ペリニヨンにはヴィンテージしか存在しないのである。『ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2004ギフトボックス』 ※参考商品

とあるブラインドテストでは、過半数の人がドン ペリニヨンを最も美味なシャンパーニュに選んだという。だからこそ、プレステージ・シャンパーニュのなかで最も信頼のできるブランドであり続けられる。そこに少数を相手にする個性的なビジネスと、幅広い顧客を納得させるビジネスとの違いを見ることもできる。

そもそもドン ペリニヨンとは、シャンパーニュ最大手の「モエ・エ・シャンドン社」が掲げる最高級ブランドであるが、あまりに有名なために、高級シャンパーニュの代名詞だと思い込まれているほどだ。

その名前は、17世紀にシャンパーニュの製造方法を確立した修道士ドン・ピエール・ペリニヨンの尊称ドン・ペリニヨンに因む。1935年に同社で初出荷(1921年産ヴィンテージ)。常に最良年のみつくるヴィンテージ・シャンパーニュであり、短くても瓶熟成8年の時を経て、最高のバランスが生まれたときに出荷される。

ここで紹介したヴィンテージは2004年。最高のバランスとはいえ、まだ若々しさがみなぎっている。たぶん、これを飲んで10年という歳月を感じることはないだろう。しかしそれは決して未熟ということではなく、きちんとした大人なのに若さを失っていない、ということだ。

ドン ペリニヨンの歴史の始まりとなった、伝説の地を巡る

ドン ペリニヨンの発祥の地であるオーヴィレール大修道院。ドン・ピエール・ペリニヨンはここで、醸造責任者を務めていた。
大修道院の中の祭壇の前に、ドン・ピエール・ペリニヨン修道士が眠る墓がある。
オーヴィレール大修道院内に位置するドン ペリニヨンの葡萄畑。

背景には、ドン ペリニヨンが描き、現代のクリエイターたちに継承されている、最高のシャンパーニュというヴィジョンがある。最高級品種のシャルドネとピノ・ノワールしか用いないのも、ヴィジョンを実現するため。独特の格調や調和が表現され、ワインの寿命が長くなるという利点も生まれる。

そのブレンドだが8つのグランクリュ(特級葡萄畑)の葡萄をベースに、ドン・ピエール・ペリニヨンが所属していた修道院があったオーヴィレール村のプルミエクリュ(1級葡萄畑)の葡萄をわずかに加える。そこにはドン・ピエール・ペリニヨンへのオマージュが表現されているのだ。

ドン ペリニヨンと聞くと、有名なあまり、却って手を出すのをためらってしまう向きもあるかもしれない。名前に釣られて飲みたくない、と。しかし、品質の確かさは揺るぎない。

シャンパーニュのすべての始まりであったという歴史をしっかりと受けとめることで、ドン ペリニヨンの本当のおいしさが堪能できるはずだ。

今も昔も、女性受けは断然、ビールよりシャンパン。その最高峰であるドンペリを語れれば、こまかなシャンパンの知識など些細なこと。今宵の乾杯はビールよりシャンパンで、といきたいものだ。

この記事の執筆者
TEXT :
斉藤研一 ワインジャーナリスト
BY :
2014年 MEN'S Precious冬号男たちを魅了する、進化の秘密をさぐる揺るぎなき王者、ドン ペリニヨンという奇跡より
新聞社勤務の後、日本初となる一般向けワインスクール立ち上げに携わる。著書に『これであなたもワイン通世界のワインガイド』『シャンパーニュから始まるスパークリングワインの世界』(小社)。『ワインの基礎力80のステップ』(美術出版社)など多数。
クレジット :
撮影/小寺浩之(ノーチラス/P248)、小西康夫(P250~251) 文・斉藤研一 スタイリスト/石川英治(tablerock studio) 構成/堀 けいこ
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