南米・ペルーにある、手づくりパスタの店「Bernuccci fatti a mano」。「尊敬していた祖母の味を届けたい」と語る、オーナーシェフのフィオレーラ・ニコリーニさんに、仕事に対する熱い想いについて、お話をうかがいました。
■尊敬する祖母のイタリア料理を、ペルーの人たちに届けたい
19世紀後半、多くのイタリア移民がペルーへ渡り、イタリアの食文化を持ち込みました。フィオレーラさんの曾祖父もそのひとり。自らの苗字を冠したパンやパスタの製粉・製麺会社「ニコリーニ」を起業し、今や100年以上の歴史をもつ、ペルーを代表する食品ブランドのひとつとなっています。
ニコリーニ家は、家族の食卓をなによりも大切にしており、なかでもフィオレーラさんが「ノンナ(イタリア語でおばあちゃんの意)」と慕った祖母は、一族きっての料理上手。そのすべてを手づくりした人だったのだそうです。そのため、フィオレーラさんにとってパスタといえば、ノンナの生パスタ。2012年にフィオレーラさんが飲食店を始めることになったとき、「一般的な乾麺ではなく生パスタを使うこと」、そして、「店名は『ニコリーニ』ではなく、ノンナの名である『ベルヌッチ』にすること」のふたつは、譲れないポイントだったのだといいます。
■苦労も多い。それでも、大好きだったあの味を多くの人へ
「ベルヌッチ」には、レストランとテイクアウト、そしてデリバリーがあります。パスタはカネロニ、ラビオリ、ニョッキ、ラザニアなど、すべてフィオレーラさんの手づくりで、8種類の自家製ソースとともに提供。ピザやキッシュ、スイーツも充実しています。良心的な料金を保つため、夜中まで料理を仕込んだり、土日もなく朝から晩までパスタをつくったりすることも。苦労も多いけれど、「大好きだったノンナの味をみんなに知ってほしい」という想いが、フィオレーラさんを輝かせています。
実は、ペルーのパスタ料理は、食材の違いもあり、イタリアのそれとは似て非なるもの。「ベルヌッチ」の本格イタリアンに、戸惑うペルー人客も多いけれど、シンプルながら完成度の高さでファンを増やしてきました。今では、世界的に注目が集まるペルーの食産業界で、注目の女性シェフとして、存在感を発揮しているフィオレーラさん。
「将来は、娘が後を継いでくれたら」 と夢を口にして、彼女は笑いました。
■世界各国キャリアへ 、5つの質問
Q1:仕事の成功のためにしている習慣は?
常に品質を第一にして、お客様の信頼を裏切らないこと。
Q2:バッグに必ず入っているもの3つは?
携帯電話、キャンディー、外出時にパスタの香りを消すオーデコロン。
Q3:あなたの街のストレス解消スポットは?
自然豊かな田園。乗馬を楽しむ。
Q4:理想の週末の過ごし方は?
郊外の別荘で家族とともにバーベキューを楽しむ。
Q5:人に言われてうれしいほめ言葉は?
あるお客様からの「ここ(レストラン)に来ると僕はいつも幸せだよ」
46歳。曾祖父の時代にペルーにやってきた移民の4世。大学卒業後、現・コルドンブルーの前身である料理専門学校で料理を学ぶ。卒業後に結婚、ふたりの娘が生まれる。2010年、義姉とスイーツの店を開く。商売をしながら場所を探し、2012年に「ベルヌッチ・ファティ・ア・マーノ」をオープン。
- PHOTO :
- Oscar Chambi Echegaray
- EDIT&WRITING :
- Keiko Harada
- RECONSTRUCT :
- 難波寛彦