名品を生むのはほかのだれでもなく、そのつくり手たちである。つまり、その美観や着心地にはすべて彼らの意味や理由がある。そのこだわりや想いは哲学となって名品に顕現するのだ。
男たちを惹きつける名品
着る人の個性を立ち上がらせる、特別な色を味わう
ジョルジオ アルマーニのグレージュコート
ピークドラペルを備えた8つボタンのワイドブレステッドコート。素材にはポリエステルを混紡したカシミアをダブルフェイスで使う贅沢な逸品だ。とろみのある生地はワイドシルエット&ロング丈と相まって、動きとともに美しいドレープを生む。背面にはバンドを備え、後ろ姿も様になる至極の一枚だ。
女性のために生まれたバッグは男性をも洗練させる特別な存在へ
エルメスの『ケリー・デペッシュ』
2019年によりモダンでエレガントなディテールを採用してリデザインされた『ケリー・デペッシュ』。中央のコンパートメントには13インチのPCを、内側のジップポケットにはスマートフォンやiPadを収納可能だ。ビジネスにおける必需品も変化した現代のライフスタイルに寄り添うバッグである。
歴史とともに生きるローマの精神を軽やかに味わう
ブリオーニのレザージャケット
イタリアは決して一枚岩ではない。北と南では、気候風土はもちろん、文化の影響もまったく異なる。国家の形態にしても19世紀にようやくイタリア帝国が生まれ、現在の共和国になったのも大戦後だ。だがその多様性が豊饒を生む。ファッションも然りである。
2020年に創立75周年を迎えたブリオーニのデザインディレクター、ノルベルト・スタンフルは言う。「ブランド哲学はイタリアではなく、ローマにある」と。それはこのレザージャケットからも伝わってくる。
これまでのブラックレザーの印象は、そでを通した瞬間に一転するだろう。やわらかく軽快な着心地とともに、自然に馴染み、動きを妨げることはない。上質な素材を厳選し、最高峰のテーラリング技術を注ぐことで生まれる、このエレガントなエフォートレスこそローマ流なのだ。
歴史的建造物を日常生活の一部とするばかりでなく、地中には今も古代遺跡が堆積する。そんな奥深きローマを実感するようだ。
モードに薫り立つ現代のニューロマンティック
ダンヒルのハーフラップコート
入場資格はただひとつ、個性的でクリエイティブ、意表をつくようなファッションをしていること。それが1980年代にロンドンのコヴェント・ガーデンで一世を風靡した伝説のクラブ、「ブリッツ」だ。
ポストパンクの新しいポップカルチャーは、ニューロマンティックと名づけられ、エレクトロなダンスミュージックとともにクラブシーンを席巻した。その発祥である「ブリッツ」には多くの若者が詰めかけ、彼らはブリッツキッズと呼ばれた。
ダンヒルのテーマは、その精神を反映し、新たな男性像を提案する。ロングコートは、ゆったりとしたオーバーサイズを体に巻き付けるように打ち合わせ、ボタンではなく共地のストラップで留める。人気の「ラップコート」の進化形である。シックなキャメルカラーは、モードなスタイルにも落ち着いたダンディズムを醸し出す。 個性が百花繚乱となった時代を彷彿させるとともに、現代を生きる男たちにふさわしいコートだ。
タフな現代を生きる男のニューローファー
ジョンロブの『ロペス ニュースタンダード』
いったいだれがローファー(怠け者)なんていう失礼な名前をつけたのだろう。一説によると、起源は英国王室や貴族階級のルームシューズにあり、それが外履きとして広がった。やがてアメリカに渡り、履きやすく合理的なスタイルはアイビーリーガーの足下の象徴になったという。
だがその位置づけはいまだフォーマルにあらず。それでもジョンロブの手にかかればこの上なく美しい気品と洗練をまとうのだ。
こちらは1981年に既製靴ラインをスタートすると同時に加わり、現在に至る定番モデルだ。最新作では、ボリューム感あるラウンドトウとより厚い独自の2・5ダブルソールを採用し、力強い存在感が漂う。
軽快さから重厚感へと印象を変えつつも、エレガントな佇まいに変わりはない。それは王室御用達の最高峰の靴であると同時に、そのルーツは堅牢なブーツづくりにあり、生涯履き続けられる機能とスタイルをそこに宿すからだ。まさに汚名返上にふさわしい価値ある名品だ
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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- PHOTO :
- 川田有二(人物)、唐澤光也(RED POINT/静物)
- STYLIST :
- 菊池陽之介
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- Daisuke