日本では、いまだに帽子を被るのを恥ずかしがる風潮がある。だが、ちょっと待ってほしい。紳士の国では、だれもが名店で帽子をいくつもオーダーし、コーディネートを楽しんでいる。ジェントルマンたる者、被るものが野球帽しかない!などという失態は許されないのである。選ぶべきは歴史ある名品。世界の洒落者が愛してやまないボルサリーノなら、クラシコイタリアのスーツやジャケットとの相性も抜群だ。

 2017年に創業160周年を迎えたボルサリーノ歴史を振り返ると、帽子が、いかに世界の男たちのスタイルに欠くことのできないアイテムに変わっていったかがわかる。創業時には、男の社会的な地位を定義したハードハットを生産。ソフトハットに人気が移行してから、ボルサリーノはソフトハットの生産量で世界を席巻し、1920年代には、年間200万個もの帽子を製造した。軽やかな中折れ帽(フェドーラ)は、ボルサリーノそのものを象徴するようになった。

帽子の地位を拡大し伊達男必須のアイテムへと昇華させた歴史的ブランド

 ハリウッドを中心に映画界でボルサリーノが愛用されるようになると、帽子は、配役のキャラクターを決める小道具として、十分に機能を果たしていくようにもなった。 このような事実を明らかにした、ボルサリーノの歴史をひもとくフィルムが、日本での160周年プロモーションを開催する前に、先行試写された。ボルサリーノの帽子がファッションや映画に与えた多大な影響だけではなく、装い方の変化によってブランド存続の危機に瀕した’60年代の話など、これまで語られなかったイタリアを象徴するブランドの凋落と復活までもが活写された。 記念すべき今年はまた、従来からあった帽子のパターンオーダーサービスを、さらに充実させている。既製品でも多様なボルサリーノの帽子だが、自分だけの帽子をつくる楽しみ方が、より広がるのである。

かつて、パナマ帽の生産に使われていた年季の入った木型。この木型にパナマ帽の原料となるトキヤ草で編んだ帽体をかぶせ、熱した砂袋を上から覆い圧力を加えて形づくった。

本誌エグゼクティブファッションエディター
矢部克已がオーダーに挑んだ!

ネイビーの帽子に対して、カーキのリボンが絶妙なコントラストを生むオリジナル。サルトリア仕立てのスーツに間違いなく似合う、エレガントな帽子が完成した! ¥95,000~(ボルサリーノ ジャパン)

 いつの間にか、手元にあるボルサリーノの帽子の数が増えてきた。パナマやビーバーの帽子もそろえて、コーディネートを楽しんでいる。自分にとってボルサリーノの帽子は、スーツを着たときの、スタイルの仕上げとして「伊達」にかぶるのが最もしっくりと来る。帽子に極端なクセをつけて、カジュアルにかぶるのはどうも落ち着かないのだ。

 今回、初めてボルサリーノの帽子を誂える機会を得て、肝に銘じたのは、「既製品にありそうだけど、オーダーでしか存在しない、シンプルでほんの少し個性的な帽子」。面白がって、ピンクや赤い帽子を注文したところで、自分には似合わない。

 でき上がった帽子は、ほぼ予想どおりのスタイル。手に取ったとき、格別な充実感があった。今も毎シーズン、サルトリアでスーツを仕立てているが、そこに帽子の誂えも加わるだろう。

※価格は2017年夏号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
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矢部克已 エグゼクティブファッションエディター
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MEN'S Precious2017年夏号 ボルサリーノで 帽子を誂えよより
ヴィットリオ矢部こと本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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撮影/小池紀行(パイルドライバー/静物)、篠原宏明(取材) スタイリスト/四方章敬 構成・文/矢部克已(UFFIZI MEDIA)
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